苔が今、ひそかなブームを生んでいます。日本の至るところに生えている苔ですが、苔寺や苔庭、森などで改めて向き合ってみて。どこか神秘的で、心を和ませてくれる不思議な魅力に気が付きます。特に、梅雨時は雨にぬれて緑に輝く苔のベストシーズン。この時期に胞子をまく苔も多いので、普段とは異なる姿が観察できるかも!
苔寺
神奈川県鎌倉市
妙法寺
青々とした苔の階段が
「苔寺」の由来
建長5(1253)年、日蓮が安房より来て建てた日蓮宗最古の寺。延文2(1357)年に護良親王の遺児、日叡が再興しました。本堂裏に苔で覆われた美しい石段があることから「鎌倉の苔寺」と言われ親しまれています。苔の石段は境内奥の金剛力士が祀られた仁王門の先にありますが、苔の保護のために立ち入りは禁止されています。
苔むした階段に木漏れ日が降り注ぐ
神奈川県鎌倉市
杉本寺
歴史を物語る苔に覆われた階段
奈良時代に名僧行基が開いたと伝わる鎌倉最古の寺。白いのぼりと無数の石仏が、独特の雰囲気を醸し出しています。そして、杉本寺といえば本堂に続く苔の階段。苔の保護のために階段への立ち入りは禁止されていますが、その神秘的な光景は一見の価値あり。そのほか、境内にある苔むした五輪塔群や、茅葺き屋根も見ごたえがあります。
歴史を感じる五輪塔群
茅葺屋根の本堂
京都府京都市
三千院
苔庭に溶け込んだわらべ地蔵に和む
天台宗五箇室門跡の一つで、一度は行きたい大原の名所。有清園と聚碧園の二つの京都市指定名勝庭園をはじめ、見どころ多数。特に、三千院の宸殿前から往生極楽院へと続く有清園の苔は息をのむほど美しく、清らかな空気を感じます。有清園の苔と一体となってきれいに苔むしている可愛らしいわらべ地蔵にも癒されますよ。
苔の絨毯が広がる庭
わらべ地蔵。庭のあちこちで出会う
京都府京都市
西芳寺
「苔寺」として世界的な知名度を誇る
臨済宗の寺院で世界遺産に認定。絨毯を敷きつめたように見える苔の庭にちなみ、「苔寺」の名で世界的に知られています。西芳寺の庭園は後醍醐天皇や足利尊氏の帰依を受けた臨済宗の僧侶・夢窓疎石によるもので、南北朝時代の日本庭園を代表する存在です。上段は枯山水、下段は池泉回遊式庭園と2段構造に分かれています。
庭には120種以上の苔が生える
苔MEMO
参拝は事前申し込みが必須。原則中学生以上です(年に数回、子ども参拝可能日もあり)。
自然苔
栃木県塩谷町
尚仁沢湧水
清らかな水と深緑の苔が織りなす自然美
全国名水百選に認定されている全国屈指の名水。日量65000トンと豊かな水量を湧出しており、動植物に豊かな恩恵を与えています。場所は町のシンボルである高原山の中腹。付近一帯は樹齢数百年にも及ぶ原生林に覆われています。十数か所から湧き出る清水と深い緑色の苔、不思議な形の木々が生み出す景観は、日々の喧騒を忘れさせてくれます。
みずみずしい苔が生える
遊歩道が整備されています。
運動靴がおすすめ
群馬県中之条町
チャツボミゴケ公園
濃い緑が映える幻想的なマーブル模様
中之条の最奥部、草津温泉の北に隣接する旧群馬鉄山の跡地にある公園。園内の穴地獄には国内最大規模といわれるチャツボミゴケが群生しています。穴地獄では随所から酸性泉が湧出しており、強酸性の水を好むチャツボミゴケにとっては絶好の生育環境。平成29年に「六合チャツボミゴケ生物群集の鉄鉱生成地」として国の天然記念物に指定されています。
茶色い部分は鉄分を含む鉱泉の影響。絶妙な差し色に
苔MEMO
日差しが強い真夏はややコンディションが落ちてしまうそうなので、見るなら初夏の今!
福井県若狭町
瓜割の滝
神聖な空気に包まれた
「水の森」へ
養老年間(717~724年)に泰澄大師が開いた天徳寺の奥林にある湧水で、日本名水百選の一つ。水温が11.7度と冷たく、瓜が自然に割れた故事から瓜割水、瓜割の滝と呼ばれています。古くから人々が神聖な「水の森」として敬ってきた場所でもあり、岩には苔が群生。周囲は清らかな空気に満ちています。天徳寺の境内の苔も美しいのでぜひ立ち寄ってみて。
瓜割の滝の入口にある天徳寺
天徳寺の境内にある大木。
根が苔で覆われています
東京都青梅市
御岳山ハイキングコース
東京の秘境! 神秘的な森
関東一の霊山・御岳山を巡る全長約8kmのハイキングコース。御岳山ハイクのハイライト且つ苔の聖地として有名なのが、「ロックガーデン」と呼ばれる一帯。岩の間を渓流が流れ、苔むした岩がつくり出す見事な渓谷美が堪能できます。御岳ビジターセンターのHPからは御岳山の苔のパンフレットがダウンロードできます。
ロックガーデンとは七代の滝~綾広の滝一帯を指す
苔庭
神奈川県箱根町
箱根美術館
約130種もの苔が生える庭園
縄文土器から江戸時代までの古陶磁器を中心に展示する箱根最古の美術館。なかでも、約130種もの苔が育つ苔庭は一見の価値あり。梅雨の時期になると緑に深みが増し、より一層幻想的な雰囲気に包まれます。苔庭にある茶室「真和亭」は、苔庭の風景を眺めながら季節のお菓子と抹茶がいただけるので休憩にぜひ。
絵になる苔の風景と出会える
非日常を感じる空間
街道苔
神奈川県箱根町
箱根旧街道石畳
風情が薫る苔むした古道
江戸時代の箱根越えの道で、天下の難所といわれた箱根旧街道。雨が降ればすねまで泥に潜ってしまうような足場の悪い土地を歩きやすくするため、江戸幕府によって整備されたのが現在も残る石畳の道。往時の旅人に想いを馳せながら散策してみましょう。石畳は苔むしていて滑りやすいため、靴選びには注意が必要です。
天下の険(けん)とうたわれた箱根の山
当時の面影が随所に見られる
街なか苔
大阪府大阪市
水掛不動(法善寺)
緑の苔に包まれた水掛不動さん
法善寺の境内にある不動明王像は、「水掛不動さん」と呼び親しまれています。商売繁盛、恋愛成就などを祈願して参拝客が水をかけることから全身が苔むしているのが特徴です。戦後間もないある日、法善寺へお参りにやってきた一人の女性がお供えされていた水を手ですくい、お不動さんにかけたのが水掛けの作法の発祥なのだそう。
大阪・ミナミで人気のパワースポット
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