更新日: 2024年6月10日
入浴をもっと楽しく!温泉の効能や泉質って?意外と知らない温泉トリビア
温泉に入るときに脱衣所でよく見かける看板。
「単純温泉」や「適応症」などと書かれていますが、あれって何のこと?
この記事では、知っているようで知らない温泉の知識をまとめて紹介します。温泉に関する知識を増やして、温泉めぐりや日頃の入浴をさらに楽しいものにしましょう。
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目次
トリビア① あたたかくなくても温泉!
温泉というと、「ぬるめ、または、熱いお湯が自然に湧き出しているところ」「健康に良い成分が溶け込んだお湯」といったイメージですが、温泉の定義はあるのでしょうか?
温泉は1948年に制定された「温泉法」によって、法的には以下のように定義がされています。
地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、
・源泉から採取される時の温度が25℃以上あるもの
または
・特定の物質を一定以上有するもの
源泉の温度が25℃以上、というとプールの水と同じくらいですよね。
温泉としては冷たすぎる気もしますが、法的には立派な温泉です。
また、水蒸気やガスでも温泉と定義されることがあります。
なぜこのような定義となっているのか、その理由は温泉法の成り立ちにあります。
温泉法ができる前の大正~昭和初期はひとつの温泉ブームで、温泉を利用する権利をめぐっての争議が全国の温泉地で起こりました。
そこで、貴重な資源である温泉を保護し、採取時の災害を防止すること、そして温泉を適正に利用することを目的として温泉法が整備されたのです。
条件に幅を持たせて様々な源泉を温泉と定義し、国が適切に管理しようとしたために、温泉の法的な定義が一般のイメージと異なることになったのですね。
なお、温泉の条件とされる物質にはラジウム塩やラドン、重炭酸ソーダや数々のイオン類などで合計19種類があり、それぞれ条件となる含有量が定められています。
トリビア② 古来の名泉は温泉法に該当しない?
一般的な温泉のイメージと、法律で定義される温泉には実際にギャップがあります。
温泉法制定よりもはるか昔から利用されてきた名泉の中には、温泉法の条件を満たさないものもあるのです。
たとえば、“温泉の王様”と言われる秋田県の玉川温泉は塩酸・硫酸が温泉法基準値の5倍!
さらに、環境基準値の500倍という多量のヒ素化合物を含む、とても強烈な温泉です。
このような温泉は、今の基準で判断されれば利用不許可になるかもしれません。
また、温泉法の温泉にはあてはまらなくても、ph値が高く、ヌルヌルの「温泉らしい温泉」が、その地域では昔から名湯と呼ばれ、愛されていることも多いです。
温泉法が定める定義に合致するかどうかは、入浴を楽しむうえではそこまで重要ではないのかもしれません。
トリビア③ 「療養泉」は温泉のさらに小分類
温泉を利用した時に「打ち身、切り傷、婦人病」といった効能書きを目にしたことがある方も多います。
一般的にこのような効能を持つ温泉を「療養泉」と呼ぶことが多いですが、温泉と療養泉は別物なのでしょうか?
実は、療養泉についても、温泉法のなかで定義されており、温泉法で定義される温泉のうち、薬理効果や療養効果が認められるものが「療養泉」となるのです。
温泉(水蒸気その他のガスを除く)のうち、特に治療の目的に供しうるもので
・源泉から採取される時の温度が25℃以上あるもの
または
・特定の物質を一定量以上含むもの
温泉の定義と似ているので、違いがよくわからないですね。
注目すべきは、療養泉も温泉の定義同様に、2つの条件が「または」とされている点です。
療養泉の温度条件は温泉の定義と同じ、25℃以上です。
よって、25℃以上という温度条件のみを満たして定義される温泉は、そのまま無条件で療養泉としても定義されます。(この場合、後述の泉質としては「単純温泉」に分類されます)
含有物質の条件の方ですが、療養泉に定義される薬理物質の種類は、遊離炭酸(二酸化炭素)や総硫黄、ラドンなど、温泉の条件となる物質と共通のものも多いです。
ですが、温泉よりも療養泉のほうがそれぞれの条件となる含有量が多く設定されています。
よって、含有物質の条件を満たして定義される温泉のうち、物質の含有量の多いものが療養泉と定義されます。
ちなみに、特定物質として、「1kgあたりの溶存物質(ガス性のものを除く)総量が1000mg以上」という条件がありますが、これは温泉の定義と同じです。
よって、この条件を満たすものも、温泉であると同時に無条件で療養泉としても定義されることになります。
トリビア④ 「単純温泉」や「硫黄泉」は療養泉をさらに分類したもの
温泉と療養泉の違いがなんとなくわかったところで、温泉施設でよく目にする「単純温泉」や「硫黄泉」といった言葉について考えてみましょう。
これらは何を意味するのでしょうか?
実は、上述の療養泉はさらに、以下の10種類の掲示用泉質に分類されます。
・単純温泉
・塩化物泉
・炭酸水素塩泉
・硫酸塩泉
・二酸化炭素泉
・含鉄泉
・硫黄泉
・酸性泉
・含よう素線
・放射能泉
「単純温泉」や「硫黄泉」もここに書かれていることがわかりますね。
上記の泉質は、温泉施設が、その温泉がどのようなものなのかを利用者に説明・掲示する際に用いられる名称で、いわば、温泉のジャンルのようなものです。
10種類の掲示用泉質は、含有する物質の比率によって、さらに細かく分類されています。
そして、これらの泉質ごとに効能が定められているのです。
効能とは「体にどのような健康上の効果があるか」ということで、適応症とも呼ばれます。
トリビア⑤ 泉質によって効能は違う
泉質の効能は入浴した場合と飲用した場合のそれぞれで定められています。
それぞれの泉質の定義と効能、代表的な温泉地を見ていきましょう。
効能として「一般的適応症」と書かれている場合は、冷え症や疲労回復、健康増進など、入浴時に一般的に認められる効能であり、家庭用のお風呂の入浴でも同じ効果が得られるはずです。
湧出時に25℃以上で、薬理物質の含有量が少ないもの
効能(浴用):一般的適応症のみ
代表的な温泉地:下呂温泉(岐阜県)、道後温泉(愛媛県)、由布院温泉(大分県)、別府温泉郷(大分県)など
塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩のうち、いずれかの溶存物質の総量が1000mg/1kg以上の温泉
効能(浴用):切り傷と皮膚乾燥症
効能(引用):主成分によって3つの泉質に分類され、それぞれ効能が異なる
塩化物泉:萎縮性胃炎・便秘
炭酸水素塩泉:胃十二指腸潰瘍・逆流性食道炎・糖尿病・通風
硫酸塩泉:胆道系機能障害・高コレステロール血症・便秘
代表的な温泉地:定山渓温泉(北海道)、湯河原温泉(神奈川県)、あわら温泉(福井県)、指宿温泉(鹿児島県)など
二酸化炭素が1000mg/1kg以上含まれる温泉
効能(浴用):切り傷
効能(飲用):胃腸機能低下によい
代表的な温泉地:湯屋温泉(岐阜県)、下島温泉(岐阜県)など
総鉄イオンを20mg/1kg以上含む温泉
効能(浴用):一般的適応症
効能(飲用):鉄欠乏性貧血に効果
代表駅な温泉地:長浜太閤温泉(滋賀県)、九十九島温泉(長崎県)など
水素イオンを1mg/1kg以上含む温泉
効能(浴用):アトピー性皮膚炎・尋常性乾癬・糖尿病・表皮化膿症に効く
代表駅な温泉地:新玉川温泉(秋田県)、中ノ沢温泉(福島県)
よう化物イオンを10mg/1kg以上含む温泉です。
効能(飲用):高コレステロール血症に効く
総硫黄を2mg/1kg以上を含む温泉
効能(浴用):アトピー性皮膚炎・尋常性乾癬・慢性湿疹・表皮化膿症
効能(飲用):糖尿病・高コレステロール血症
代表駅な温泉地:川湯温泉(北海道)、酸ヶ湯温泉(青森県)、草津温泉(群馬県)、野沢温泉(長野県)、地獄温泉(熊本県)
1kgあたりラドンが100億分の30キュリー単位以上含まれる温泉
効能(浴用):痛風・関節リウマチ・強直性脊椎炎
代表的な温泉地:恵那ラヂウム温泉(岐阜県)、三段峡温泉(広島県)、松葉温泉(大阪府)
ちなみに、複数の泉質を有する温泉もあります。
たとえば、兵庫県の有馬温泉。ここは療養泉の泉質のうち、硫黄泉と酸性泉を除く成分が含まれており、世界的にも珍しい多くの成分が混合した温泉です。
トリビア⑥ 単純泉は普通のお風呂とあまり違わないことも
療養泉の泉質のひとつ、「単純泉」とは湧出時の温度が25℃あるものの、含まれる薬理物質量が条件を満たさないため泉質名が付かない温泉です。
ですから、薬理物質がほとんど含まれていない可能性があります。
つまり、単純泉と一般家庭のお風呂では、成分がそれほど変わらないという場合も珍しくないのです。
単純泉は効能も一般的適応症としか定められていないため、実際には単純泉と一般家庭のお風呂であまり違いはないケースも多いと言えるでしょう。
トリビア⑦ 温泉の効能は源泉に対して認められたもの
上で紹介した効能は湧き出してすぐの新鮮な源泉に対して定義されたものです。
温泉施設の温泉には源泉水に加温・加水をしたものや循環式も多く、温泉水の成分は次々に変化していきます。
また、源泉かけ流しにしても、浴槽まで温泉水が流れてくる間に空気に触れて薬理成分が酸化するなど、入浴する時点で源泉そのものとは成分が異なる場合もあるのです。
よって、各泉質の効能は、効果が絶対に認められるものとしてではなく、参考程度と考えておくのがよいでしょう。
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