目次
感動よりも深いところへ——。社会問題に向き合った韓国映画
社会派の作品にヒット作が多いのも韓国映画の特徴です。背景に社会問題が見えるヒューマンドラマ、鋭いメッセージが練り込まれたエンタメ系作品、隠すまでもなく非常に重たい作品まで、いくつか集めてみました。
感動できる韓国映画21. ベイビー・ブローカー
母親、ブローカー、警察。それぞれの善悪が絡まり合う
「赤ちゃんポスト」に新生児を預けた母親が、ひょんなことから人身売買ブローカーと共に我が子の「新たな親探し」に同行するロードムービー。『万引き家族』の是枝裕和監督が、超のつく豪華キャストで製作した韓国映画です。
出演は『パラサイト』のソン・ガンホ、『新感染半島』のカン・ドンウォン、是枝監督との交友も厚いぺ・ドゥナ、『マイ・ディア・ミスター』のイ・ジウン(IU)、『梨泰院クラス』のイ・ジュヨンなど。豪華すぎて、感動している暇がないかも。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2022年 |
製作国 | 韓国 |
監督 | 是枝裕和 |
出演者 | ソン・ガンホ/カン・ドンウォン/ぺ・ドゥナ/イ・ジウン/イ・ジュヨン ほか |
時間 | 129分 |
感動できる韓国映画22. 声もなく
『ベイビー・ブローカー』とも見比べてみたい
裏稼業に関わっている口のきけない青年が、身代金目的で誘拐されてきた11歳の少女をしばらく預かる羽目になる物語。「擬似家族もの」として心温まる感動展開を期待してしまうのですが、最終的に行き着くのはとても不条理なエンディング。でも何も間違ってはいなくて、頭がぐるぐるして。感想を話し合いたくなります。
出演は『バーニング 劇場版』のユ・アイン、『梨泰院クラス』のユ・ジェミョンなど。韓国の社会問題に切り込んだヒューマンドラマです。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2020年 |
製作国 | 韓国 |
監督 | ホン・ウィジョン |
出演者 | ユ・アイン/ユ・ジェミョン/ムン・スンア ほか |
時間 | 99分 |
感動できる韓国映画23. 無垢なる証人
主演は『私の頭の中の消しゴム』のチョン・ウソン
殺人容疑のかかった家政婦を担当することになった弁護士スノ。家政婦は犯行を否認しており、かつ目撃者は信憑性に乏しい「自閉症の少女」ただ一人。勝てそうな案件と思われたが、スノはこの「検察側の証人」と誠実に向き合おうとする。
脚本は、本作の「その先の世界」とも言える「自閉スペクトラム症の弁護士」を主人公とした大ヒットドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』のムン・ジウォン。『ウ・ヨンウ』ファンでもそうでなくとも、必見の感動作です。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2019年 |
製作国 | 韓国 |
監督 | イ・ハン |
出演者 | チョン・ウソン/キム・ヒャンギ ほか |
時間 | 129分 |
感動できる韓国映画24. テロ、ライブ
低予算映画と思わせての予想外な展開に注目
不祥事でラジオ局に左遷された人気キャスター・ヨンファは、ある朝の生放送中、リスナーから「橋を爆破する」と脅迫電話を受ける。彼は適当にあしらって電話を切るが、まもなく地響きとともに「1回目の爆破」が起きるのだった——。
ほぼラジオ局のスタジオのみで展開していくシチュエーション・スリラーなのですが、その緊張感と面白さは感動してしまうほど。加えて、社会派韓国映画としてのビターさも見応えあり。ラストシーン、背後に見える建物は国会議事堂です。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2013年 |
製作国 | 韓国 |
監督 | キム・ビョンウ |
出演者 | ハ・ジョンウ ほか |
時間 | 98分 |
感動できる韓国映画25. トガニ 幼き瞳の告発
『82年生まれ、キム・ジヨン』のコン・ユ×チョン・ユミ初共演作
この映画を「感動」の括りに入れるな、とお叱りが来そうですが、そう、本作自体は感動とは程遠い作品。聾学校で実際に起きた性的暴行事件を題材としており、被害者は幼い生徒たち、加害者は職員及び校長、というきわめて「胸糞の悪い」内容になっています。加えて、バッドエンドなのです。そんな救われないことがあってよいでしょうか。
ただ一点、この映画は韓国の「現実世界」を動かしました。当初軽すぎる量刑だった加害者たちの再逮捕・再起訴、ひいては通称「トガニ法」と呼ばれる法改正にまで繋がったのです。その意味では、映画の力を感じられる感動的な一件とも言えます。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2011年 |
製作国 | 韓国 |
監督 | ファン・ドンヒョク |
出演者 | コン・ユ/チョン・ユミ ほか |
時間 | 125分 |
まだまだあります、感動できる韓国映画!
何をもって「感動」とするかは人それぞれですが、王道からSF、時代劇まで、いろいろなタイプの「心動かされる作品」を最後にご紹介します。
感動できる韓国映画26. サニー 永遠の仲間たち
タイトルはボニーMの楽曲「Sunny」に由来する
『SUNNY 強い気持ち・強い愛』として日本でリメイクされた作品のオリジナル。おばちゃんたちがひょんなことから高校生時代の仲間と思い出を取り戻していくストーリーは全く同じですが、日本版がコギャル全盛の1995年だったのに対し、本作で「戻る」のは1986年。数々の韓国映画で描かれてきた民主化運動のさなかに、女子高生たちが生きています。
日本版で感動した!という方は、文化の違いに注目しながらこちらも観てみると面白いですよ!
映画の詳細データ | |
公開年 | 2011年 |
製作国 | 韓国 |
監督 | カン・ヒョンチョル |
出演者 | シム・ウンギョン/カン・ソラ ほか |
時間 | 124分 |
感動できる韓国映画27. アジョシ
主演は『母なる証明』のウォンビン
2010年の韓国でNo.1ヒットを叩き出した名作。タイトルの「アジョシ」とは「おじさん」を意味する言葉で、元特殊工作員の男=アジョシと、隣家に住む貧しい少女の交流を感動的に描きます。
と言っても、ほのぼの系の映画では「全く」ありません。むしろ、かなり過激なバイオレンスアクションで、『ジョン・ウィック』のスタッフによるハリウッドリメイクが企画されているというのも納得です。多少の血飛沫どんと来い、な方はぜひご覧ください。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2010年 |
製作国 | 韓国 |
監督 | イ・ジョンボム |
出演者 | ウォンビン/キム・セロン ほか |
時間 | 119分 |
感動できる韓国映画28. SEOBOK/ソボク
主演パク・ボゴムの入隊中に劇場公開された
死なないクローンと、死期迫る人間のロードムービー。国家機密のクローン人間「ソボク」を『雲が描いた月明り』のパク・ボゴムが、余命わずかな元情報局員の男を『新感染 ファイナル・エクスプレス』のコン・ユが演じます。
はじめは子犬のようにピュアな目で観客の母性本能的なるものをくすぐってくる「ソボク」ですが、怒りの目と共にその秘めたる超能力が覚醒していく終盤は、単なる感動作に留まらないサイキックアクション映画としても秀逸です。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2021年 |
製作国 | 韓国 |
監督 | イ・ヨンジュ |
出演者 | コン・ユ/パク・ボゴム ほか |
時間 | 114分 |
感動できる韓国映画29. 野球少女
脇を固めるキャストも、韓国ドラマファンには嬉しい
『梨泰院クラス』でブレイクしたイ・ジュヨンの主演作。高校で野球部に入っている主人公スインの夢は、プロ野球選手になること。しかしスインには性別という大きな壁がありました。女子がプロ野球を目指すなんて無理だ、そう言って周囲は諦めさせようとしますが、止められるほどに彼女の意志は固くなり——。
本作、アツく感動させられる「スポ根」ではありません。「自分の長所をちゃんと見つけて、正しく育てる」という話。野球に興味がなくても、「少女」を見守る立場であっても、得るものの大きい映画です。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2020年 |
製作国 | 韓国 |
監督 | チェ・ユンテ |
出演者 | イ・ジュヨン/イ・ジュニョク ほか |
時間 | 105分 |
感動できる韓国映画30. 王になった男
2019年にはヨ・ジング主演でドラマ化もされている
暗殺の危険が絶えない暴君と、その影武者として15日間だけ「王」になった道化師の物語。朝鮮王朝の史実に存在する「空白の15日間」を膨らませたフィクションです。本作で時代劇初挑戦のイ・ビョンホンが、一人二役を演じています。
時代劇というとハードルが高く感じるかもしれませんが、ドタバタコメディあり、これでもかと胸の熱くなる展開もあり、韓国映画で感動したい方には間違いなくおすすめの一本です。ハン・ヒョジュやシム・ウンギョンの出演も見どころ。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2012年 |
製作国 | 韓国 |
監督 | チュ・チャンミン |
出演者 | イ・ビョンホン/リュ・スンリョン/ハン・ヒョジュ ほか |
時間 | 131分 |
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【筆者】353
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ただの雑食な映画好き。——だったはずが、気付けば映画館スタッフに。
映画を観る時間がめっきり減ってしまうというジレンマと戦いながら、映画ブログ『353log』を時々更新中。
不勉強なことばかりですが、皆様に「観たい!」と思っていただけるようなご紹介ができるよう努めます。
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