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しんしんと降る雪のよう——静かな韓国恋愛映画
メロドラマともラブコメとも違う、抑制の効いた作品たち。濃味のラブストーリーに疲れたあなたへおすすめしたい、少しビターな〈韓国恋愛映画〉。
おすすめの韓国恋愛映画9. ユンヒへ
「雪はいつやむのかしら」
北海道・小樽が主な舞台となる、静かで繊細なラブストーリーです。韓国で娘と暮らすシングルマザーのユンヒ(キム・ヒエ)と、小樽で叔母と暮らすジュン(中村優子)。かつて何かがあったらしい二人の失われた時間は、それぞれの近しい人たちによる少し(いや、だいぶ?)のおせっかいで巻き戻されていきます。
アジアで人気の高い岩井俊二監督の名作恋愛映画『Love Letter』に着想を得たという、「手紙」から始まる物語。どこかヨーロッパのようでもある小樽の雪景色がロマンティックです。元I.O.Iメンバーのキム・ソヘが好演するユンヒの娘セボムも、映画を気持ちよく転がしてくれます。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2019年 |
製作国 | 韓国 |
監督 | イム・デヒョン |
出演者 | キム・ヒエ/中村優子/キム・ソヘ/木野花 ほか |
時間 | 105分 |
おすすめの韓国恋愛映画10. 男と女
「不倫」のつらさ、苦しさがこれでもかと描かれる
『シークレット・サンシャイン』などのチョン・ドヨンと、『82年生まれ、キム・ジヨン』などのコン・ユ、大スターの共演が実現した大人向けの恋愛映画。家庭とそれにまつわる困難を抱えた男女が、いけないこととは分かりつつ逢瀬を重ねていく姿は、とても「不倫」の一言で片付けられない複雑な感情を抱かせます。
見どころは、映画の最初と最後に登場するフィンランドの雪景色。「冷」と「暖」のコントラストが、二人の心情をあらわしているかのようで印象に残ります。チョン・ドヨンの圧倒的佇まい、コン・ユの鍛え上げられた肉体にも注目です。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2016年 |
製作国 | 韓国 |
監督 | イ・ユンギ |
出演者 | チョン・ドヨン/コン・ユ ほか |
時間 | 115分 |
おすすめの韓国恋愛映画11. ジョゼと虎と魚たち
それぞれの映像化作品に全く違った魅力がある
道で倒れている車椅子の女性を助けたヨンソク(ナム・ジュヒョク)は、「ジョゼ」と名乗る彼女(ハン・ジミン)からお礼に手料理をふるまわれる。古い家で老婆と暮らすジョゼの持つ独特な世界観に、いつしかヨンソクは惹かれていく。
原作は1984年に発表された田辺聖子のベストセラー小説。2003年には妻夫木聡×池脇千鶴で実写映画化、2020年にはアニメ化もされた恋愛映画の金字塔が、ついに韓国でも実写化されました。日本の映像化作品ではジョゼの辛辣な関西弁キャラが大きな特徴となっていますが、今回の韓国版はキャラ付けが控えめとなり、非常に静かな作品となっています。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2020年 |
製作国 | 韓国 |
監督 | キム・ジョングァン |
出演者 | ハン・ジミン/ナム・ジュヒョク ほか |
時間 | 117分 |
おすすめの韓国恋愛映画12. ワン・デイ 悲しみが消えるまで
日本でも『いつか〜one fine day』として舞台化されている
保険会社に勤めるガンス(キム・ナムギル)は、被害者の搬送された病院を調査のため訪れる。交通事故で昏睡状態にある被害者女性・ミソ(チョン・ウヒ)を前に、ガンスは亡き妻のことを重ねていた。そんな彼の背後から、「もう一人のミソ」が声をかけてくる——。
ある種キャッチーな「幽体離脱」のファンタジーであり、「喪失と再生の物語」という枠組みで捉えたくなる作品ですが、その実は思いのほかビターな後味の作品となっています。監督は『男と女』のイ・ユンギ。一言では片付けられない恋愛映画の名匠といえるでしょう。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2017年 |
製作国 | 韓国 |
監督 | イ・ユンギ |
出演者 | キム・ナムギル/チョン・ウヒ ほか |
時間 | 113分 |
思い出して身悶えて——韓国青春恋愛映画
「初恋」ブームを巻き起こした大ヒット作から、最新の作品まで。そんなこともあったよねと、ほろ苦い記憶を美化してくれる〈韓国恋愛映画〉たち。
おすすめの韓国恋愛映画13. 建築学概論
タイトルからは予想のつかない初恋ラブストーリー
建築士スンミン(イ・ジェフン/オム・テウン)のもとに大学時代の同級生ソヨン(ぺ・スジ/ハン・ガイン)が15年ぶりに現れ、自宅の設計を依頼する。ソヨンはスンミンの初恋の人だった。忘れかけていた「あの頃」が蘇る——。
400万人超の動員で韓国映画史を塗り替えるほどのブームを巻き起こした大ヒット恋愛映画です。公開当時の韓国では観た人それぞれが自分の「初恋」を語り始めるという現象が起きたそう。甘く切なくほろ苦く、不器用な初恋の記憶に身悶えること必至です。「国民の初恋」の呼び名で親しまれた元miss A ペ・スジの可憐さにも注目。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2012年 |
製作国 | 韓国 |
監督 | イ・ヨンジュ |
出演者 | オム・テウン/ハン・ガイン/イ・ジェフン/ペ・スジ ほか |
時間 | 116分 |
おすすめの韓国恋愛映画14. ユ・ヨルの音楽アルバム
韓国には「出所したら豆腐を食べる」という習慣がある
少年院を出たばかりの高校生ヒョヌ(チョン・ヘイン)は、偶然立ち寄ったパン屋で同年代のミス(キム・ゴウン)と出会う。その日、ラジオではちょうど新番組「ユ・ヨルの音楽アルバム」が始まっていた。お互いにどこか陰のあるヒョヌとミスは、控えめに、しかし確実に惹かれあっていき、ラジオもまた二人の浮き沈みにいつも寄り添うのだった——。
タイトルになっているラジオ番組、じつはこれ1994年から2007年まで韓国で実際に放送されていた番組なのだそうです(DJのユ・ヨルさんも実在の人物!)。繊細な心理描写を味わい尽くせる、韓国恋愛映画の良作です。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2019年 |
製作国 | 韓国 |
監督 | チョン・ジウ |
出演者 | キム・ゴウン/チョン・ヘイン ほか |
時間 | 122分 |
おすすめの韓国恋愛映画15. 雨とあなたの物語
「12月31日、ソウルが雨だったら会いましょう」
浪人生のヨンホ(カン・ハヌル)は、現実逃避をするかのように「運命の人」ソヨンへ手紙を出した。しかし返事を書いたのは、進学せずに古書店で働くソヨンの妹・ソヒ(チョン・ウヒ)だった。「会わない」ことを条件とした文通は、ヨンホとソヒ、それぞれの日常に彩りを与えていく。
スマホやSNSのない2000年代初頭を主な舞台とした、若者たちの青春恋愛群像劇です。前後する時制と、少しずつ見えてくる人物相関図。丁寧に紡がれていく物語は観る者の心にも思い出を共有させてくれます。学歴社会の韓国で生きる息苦しさを描きつつ、純愛映画のもどかしさ切なさも兼ね備えた、とても上質な作品です。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2021年 |
製作国 | 韓国 |
監督 | チョ・ジンモ |
出演者 | カン・ハヌル/チョン・ウヒ/カン・ソラ ほか |
時間 | 117分 |
おすすめの韓国恋愛映画16. 君の結婚式
トッポギ屋台に釣り堀、韓国特有の文化が多数登場
高校3年の夏に出会った男女の、10年にわたるラブストーリー。『力の強い女 ト・ボンスン』のパク・ボヨンと『初対面だけど愛してます』のキム・ヨングァンが、高校時代から社会人時代までの主人公たちを無理なく魅力的に演じ切っています。「初恋ブーム」を巻き起こした名作恋愛映画『建築学概論』の興行記録を塗り替えたというヒット作です。
転校、進学、留学、兵役、就職——。くっついたり離れたりを繰り返しながら、物語はクライマックス「君の結婚式」へ向かっていきます。青春を捧げた恋に一区切りをつけたい人には、きっと刺さるはず。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2018年 |
製作国 | 韓国 |
監督 | イ・ソックン |
出演者 | パク・ボヨン/キム・ヨングァン ほか |
時間 | 110分 |
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【筆者】353
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ただの雑食な映画好き。——だったはずが、気付けば映画館スタッフに。
映画を観る時間がめっきり減ってしまうというジレンマと戦いながら、映画ブログ『353log』を時々更新中。
不勉強なことばかりですが、皆様に「観たい!」と思っていただけるようなご紹介ができるよう努めます。
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