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切なくて「泣ける」…ビターな恋愛映画
わかりやすくジャンル分けはできないけれど、ほろ苦くて切なくて、忘れられない映画体験となる作品ってありますよね。以前は泣けなかったけど、今回は泣けた、みたいなことがあるのも映画の愉しみです。
泣ける恋愛映画12. 糸
いつめぐり逢うのかを 私たちはいつも知らない
平成元年生まれの男女が、平成の終わりに再び出逢うまでを描いた物語。中島みゆきの名曲「糸」を原案とし、のちに実生活でもパートナーとなる菅田将暉さんと小松菜奈さんのW主演で製作されました。そのほか、成田凌、二階堂ふみ、榮倉奈々、山本美月、高杉真宙といった若手俳優たちが次々と登場し、豪華キャストの群像劇を繰り広げます。
ベタベタな泣ける恋愛映画かと思いきや、途中から舞台がシンガポールになるなど意外性も多い映画です。どちらかといえば「人生」の映画、ちょっとした大河ドラマと言ってもいいでしょう。小松菜奈さん演じる葵が泣きながらカツ丼を掻き込むシーンは、聞こえてくる「糸」とあわせて落涙必至です。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2020年 |
製作国 | 日本 |
監督 | 瀬々敬久 |
出演者 | 菅田将暉/小松菜奈/山本美月/高杉真央/二階堂ふみ/成田凌/榮倉奈々 ほか |
時間 | 130分 |
泣ける恋愛映画13. ラ・ラ・ランド
唯一無二の音楽が物語をいっそう輝かせる
女優を目指すミア(エマ・ストーン)と、自分の店を持ちたいジャズピアニストのセブ(ライアン・ゴズリング)。二人の夢追い人が、「la-la land=ロサンゼルス(LA)」で出逢い、恋に落ち、しかし……という物語。往年のミュージカル映画群に無数のオマージュが捧げられた、ビビッドでロマンチックな、新時代のミュージカル映画です。
お互いの夢を応援し合う気持ちから、皮肉にも遠ざかっていく二人の人生。終盤、走馬灯のように展開される「もしも」の世界が胸を打ちます。別々の道をゆく二人が映画の終わりでそれぞれに見せる表情は、ビターではありますが、極上のハッピーエンドと取ることもできる泣ける恋愛映画です。ミア曰く——「どうか乾杯を 厄介な私たちに」。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2016年 |
製作国 | アメリカ |
監督 | デイミアン・チャゼル |
出演者 | ライアン・ゴズリング/エマ・ストーン ほか |
時間 | 128分 |
泣ける恋愛映画14. キャロル
このうえなく「映画らしい」映画
クリスマスのニューヨーク。デパートで働くテレーズ(ルーニー・マーラ)は、気品に溢れた女性客キャロル(ケイト・ブランシェット)に目を奪われる。後日、売り場に置き忘れたキャロルの手袋をテレーズが届けたことから二人は頻繁に会うようになり——。カンヌ国際映画祭やアカデミー賞で高い評価を得た作品です。
一目見て釘付けになってしまうエレガンスと包容力に溢れたケイト・ブランシェット、衣装が変わるたびに溜め息が出てしまうほど可憐なルーニー・マーラ、そして1950年代の仄暗くも美しいニューヨーク。あちらこちらで目が喜ぶ映画ですが、離婚を目前にしたキャロルの親権問題や当時の社会の風当たりなど、胸がぎゅっとなる場面も。クリスマスの時期におすすめの泣ける恋愛映画です。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2015年 |
製作国 | アメリカ/イギリス |
監督 | トッド・ヘインズ |
出演者 | ケイト・ブランシェット/ルーニー・マーラ ほか |
時間 | 118分 |
泣ける恋愛映画15. ローマの休日
一度は観ておきたい名作中の名作
言わずと知れた、ロマンティック・コメディの金字塔。当時まだ新人女優だったオードリー・ヘプバーンと名優グレゴリー・ペックの共演で、身分を隠した王女と新聞記者の忘れられない一日を描く泣ける恋愛映画です。70年前の白黒映画でありながら2022年の「金曜ロードショー」では新たな吹き替え版が放映されるなど、映画史上最もエバーグリーンな作品の一つと言えるでしょう。
ベスパの二人乗りや「真実の口」など名場面だらけの本作ですが、「泣ける」のは何といってもラスト。数時間前まで男女だった二人が、「アン王女」と「新聞記者」として記者会見の場で再会するシーンです。過剰な演出をせず、無粋に語ることもせず、瞳の奥で無言の会話をする二人。なんと抑制の効いた物語なのかと、溜め息が出ます。
映画の詳細データ | |
公開年 | 1953年 |
製作国 | アメリカ |
監督 | ウィリアム・ワイラー |
出演者 | オードリー・ヘプバーン/グレゴリー・ペック ほか |
時間 | 118分 |
泣ける恋愛映画16. 窮鼠はチーズの夢を見る
ジャニーズだからと、油断は禁物
サラリーマンの恭一(大倉忠義)は、7年ぶりに会った大学時代の後輩・今ヶ瀬(成田凌)から脅迫されていた。探偵業に従事する今ヶ瀬は、恭一の妻に依頼され、恭一の不倫現場を掴んでいるという。報告しない代償として今ヶ瀬は「カラダ」を要求するのだが——。
『失恋ショコラティエ』『脳内ポイズンベリー』などの水城せとなによる人気同名小説を、大倉忠義(関ジャニ∞)×成田凌で実写化。罰ゲームのように始まった関係の、切ない行く末を描く泣ける恋愛映画です。BL作品と思われがちですが、男女の境なく矢印が飛び交うスリリングな人間ドラマでもあり、ときにはアート映画的な美しさを感じることも。大倉忠義さんの端正な顔立ちと成田凌さんの小悪魔的かわいらしさも必見です。
※R15+指定。直接的な描写を多く含みます。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2020年 |
製作国 | 日本 |
監督 | 行定勲 |
出演者 | 大倉忠義/成田凌/さとうほなみ/吉田志織 ほか |
時間 | 130分 |
泣ける恋愛映画17. ブルーバレンタイン
甘いタイトルに御用心
あるカップルの出会いから別れまでを描く映画——と言えば聞こえはいい(?)ですが、いかんせんこの映画の生々しさは尋常ならざるものがあります。ライアン・ゴズリングとミシェル・ウィリアムズ、同じ役者が演じているのに全く別人のように見える「熱愛期」と「倦怠期」。しかも、その「在りし日」と「現在」を交互に見せられるのだからたまりません。
出会った頃は魅力的に見えていた部分が、いざ結ばれてみるとマイナスに思えてしまったり。「あんなに素敵だったあなたはどこへ行ってしまったの?」と思うも、じつは自分や環境が変わってしまっただけのことだったり。結婚し、子供を持ち、歳を重ね……。ライフステージを横断していくごとに「刺さり」が増すのかもしれない、ビターな泣ける恋愛映画の傑作です。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2010年 |
製作国 | アメリカ |
監督 | デレク・シアンフランス |
出演者 | ライアン・ゴズリング/ミシェル・ウィリアムズ |
時間 | 114分 |
泣ける恋愛映画18. 殺さない彼と死なない彼女
映画の桜井日奈子さんをもっと見てみたい
Twitter発の四コマ漫画を実写映画化。主役は、「死ね」が口癖の「彼(間宮祥太朗)」と、「死にたい」が口癖の「彼女(桜井日奈子)」。じゃあ死ねよ殺してやるから。わかったよ死んでやるよ。ぶっきらぼうの中に温かみを含む二人の関係は、少しずつ育まれていきます。
文学的でもある青春恋愛模様を桜のような淡い映像で切り取る、シニカルかつ耽美な作品ですが、油断は禁物。儚げな美しさの先に待ち受けるものとは——。そして群像劇としても意外に複雑な作りとなっている点、要注目の泣ける恋愛映画です。アオハル系かなと食わず嫌いしている方にも観てもらいたい、侮れない良作!
映画の詳細データ | |
公開年 | 2019年 |
製作国 | 日本 |
監督 | 小林啓一 |
出演者 | 間宮祥太朗/桜井日奈子 ほか |
時間 | 122分 |
思い出して「泣ける」恋愛映画
恋愛映画の大きな魅力は、自分の経験と重ね合わせられるところ。叶った恋でも、叶わなかった恋でも、終わってしまった恋だとしても——。これは私の物語!と思える映画が、きっとあります。
泣ける恋愛映画19. ONCE ダブリンの街角で
街中で「掃除機」を転がすシーンが楽しい
『はじまりのうた』『シング・ストリート 未来へのうた』のジョン・カーニー監督が初期に手がけた作品。きわめて低予算ながら、異例の大ヒットを記録しました。アイルランドの首都ダブリンを舞台に、束の間「隙間」を埋め合うような、ラブストーリーと呼べるかも定かでないくらいの繊細な人間ドラマが展開します。素朴で心に響く楽曲の数々も魅力。
ドキュメンタリーと見まごう独特の作風ですが、飾りのない映像のなかに垣間見える劇的な瞬間は、自分の人生と重ねられる部分も多いかも。波長が合ってしまった瞬間の喜びがパッケージされた初セッションシーン、思わぬ青春が生まれる徹夜のレコーディングシーンなど、至高の時間がそこかしこにある泣ける恋愛映画です。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2007年 |
製作国 | アイルランド |
監督 | ジョン・カーニー |
出演者 | グレン・ハンサード/マルケタ・イルグロヴァ ほか |
時間 | 87分 |
泣ける恋愛映画20. (500)日のサマー
夏が終われば秋がくる!
ロマンチックな出会いを求める主人公・トムのもとに舞い降りた「運命の女性」ことサマー。しかしそんなトムと対照的に、サマーは「運命」を信じておらず——。『アメイジング・スパイダーマン』のマーク・ウェブ監督によるラブコメディです。小悪魔的女性に翻弄される男の悲喜こもごもな500日を、軽妙に描きます。
名作『アメリ』をも思わせるようなポップでシニカルな映像世界は、客観的に見れば滑稽な「恋愛」の浮き沈みをよくもここまで表現できたものだと、誰もが恐れ入ってしまうはず。いわゆる「泣ける映画」ではありませんが、ひとしきり泣いたあとの傷心なあなたにおすすめです。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2009年 |
製作国 | アメリカ |
監督 | マーク・ウェブ |
出演者 | ジョセフ・ゴードン=レヴィット/ズーイー・デシャネル ほか |
時間 | 96分 |
泣ける恋愛映画21. ちょっと思い出しただけ
クリープハイプの主題歌がとにかくエモい
2021年7月26日。タクシー運転手の葉(伊藤沙莉)は、客を降ろした先で見知った顔に気付く。葉の目の先にいたのは照生(池松壮亮)。今日が誕生日の男。そして、6年付き合った葉の元恋人である。二人はそれぞれに、時間にすればほんの数分間、6年分の「7月26日」を思い出していく。
ロックバンド・クリープハイプの尾崎世界観がジム・ジャームッシュ監督の映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』に感化されて書いた楽曲『ナイトオンザプラネット』を基にした作品——という複雑な経緯のある本作。恋愛や人間関係のディテール、キャストの魅力やアンサンブル、隅々まで楽しみ味わい尽くせる泣ける恋愛映画です。コロナ禍描写の細かさも、2022年の作品ならでは。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2022年 |
製作国 | 日本 |
監督 | 松居大悟 |
出演者 | 池松壮亮/伊藤沙莉/成田凌 ほか |
時間 | 115分 |
泣ける恋愛映画22. ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)
恋の行方を9年おきに見れちゃうシリーズ
ヨーロッパ周遊列車で偶然出会った男女が、途中下車したウィーンの街で語らい歩き回りながら「ビフォア・サンライズ=夜明けまで」思い出作りをする物語。刹那と未練で胸が張り裂けそうになる泣ける恋愛映画です。こんなロマンチックな経験、してみたい!(ような、してみたくないような)
なお本作は9年ごとに同じキャストで続編が作られています。「あの日」から9年を経て再会した二人が今度は夕暮れまでほんの数時間パリを歩いて語らう、2004年の『ビフォア・サンセット』。そしてさらに9年後、2013年の『ビフォア・ミッドナイト』では一転して「倦怠夫婦もの」に……。「きれいな思い出」の続きを観るかどうかは、あなた次第です。
映画の詳細データ | |
公開年 | 1995年 |
製作国 | アメリカ/オーストリア/スイス |
監督 | リチャード・リンクレイター |
出演者 | ジュリー・デルピー/イーサン・ホーク ほか |
時間 | 105分 |
泣ける恋愛映画23. 花束みたいな恋をした
観たら思わず自分語りをしたくなってしまう作品
『東京ラブストーリー』から『初恋の悪魔』まで長年にわたり数多くの名作を生み出し続ける脚本家・坂元裕二による泣ける恋愛映画。共通のサブカル趣味をきっかけに交際し始めた若い男女「麦(菅田将暉)」と「絹(有村架純)」の5年間を濃密に描きます。特筆すべきは生々しく映し出される「別れ話」。楽しかったあの頃を思い出しながら、二人はそれでも別れを決断するのです。
恋の始まりのときめきから、なんの感情もわかない倦怠期、そして別れ話。もしかしたらパンドラの箱を開けてしまうかもしれない映画で、「これって私の物語?!」と思う人はいっぱいいるはず。でも、映画として客観的に見ることで自分の人生を肯定してもらえたように感じる人もまた、いっぱいいるはず! ほろ苦い記憶を、きれいな記憶に昇華させてみませんか。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2021年 |
製作国 | 日本 |
監督 | 土井裕秦 |
出演者 | 菅田将暉/有村架純 ほか |
時間 | 124分 |
泣ける恋愛映画24. 秒速5センチメートル
タイトルだけでヒリッとくる、劇薬のような一本
新作『すずめの戸締まり』が公開された新海誠監督による初期の代表作です。やがて大人になっていく少年少女の、やさしく切なく胸が締め付けられるような恋物語を、3本の短編で綴ります。
約10年後に『君の名は。』で広く知れ渡ることとなる映像美はすでにひとつの完成形を見せており、駅や電車といった日常のありふれた景色をきわめて写実的に、かつ現実よりも美しく切り取る「新海マジック」は、今観ても唯一無二のインパクトです。
ただし、美しいビジュアルとは裏腹に、観た者にトラウマを植え付けかねないほどのビターな結末も本作の大きな特徴の泣ける恋愛映画。加えて、山崎まさよしによる主題歌『One more time, One more chance』がとどめを刺してきます。
映画の詳細データ | |
公開年 | 2007年 |
製作国 | 日本 |
監督 | 新海誠 |
出演者 | 水橋研二(声)/近藤好美(声)ほか |
時間 | 63分 |
※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。
【筆者】353
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ただの雑食な映画好き。——だったはずが、気付けば映画館スタッフに。
映画を観る時間がめっきり減ってしまうというジレンマと戦いながら、映画ブログ『353log』を時々更新中。
不勉強なことばかりですが、皆様に「観たい!」と思っていただけるようなご紹介ができるよう努めます。
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