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もっと語りたい!泣ける韓国映画4. 新感染 ファイナル・エクスプレス

もっと語りたい!泣ける韓国映画4. 新感染 ファイナル・エクスプレス
画像:Amazon

イロモノなゾンビ映画と侮るなかれ!

韓国の高速鉄道KTX車内を主な舞台とした密室系ゾンビ映画。謎のパンデミックにより感染=ゾンビ化した人々と、狭い車内を逃げ惑う乗客たちの、極限状態での醜さや温かさを描きます。コン・ユ、マ・ドンソク、チョン・ユミといった豪華キャストが共演し、ゾンビ映画は当たらないとされていた韓国で異例の大ヒットを記録しました。

さてこちら、今回この記事を書くにあたって久しぶりに観直したのですが、本当によくできた映画だなと。パンデミックの予兆が漂う不穏かつ「掴み抜群」な冒頭、高速鉄道KTXに乗り込んでから舞台と役者をセッティングしていく鮮やかな流れetc…何もかもが見事です。列車ものアクション&ドラマ映画としてこれ以上のものはなかなか生まれないのでは、とすら思います。

また、韓国映画が得意とする社会派エンタメ映画としても非常に優れたものとなっています。『新感染』というタイトルはいわゆるトンデモ邦題で(慣れてしまえば愛せるタイトルなのですが)、原題の直訳は『釜山行き』となります。これ実はソウル発釜山行きの高速鉄道を指すと同時に、朝鮮戦争における北朝鮮軍の侵攻と重なる意味合いもあったりするのです。

引いた目線ではそうしたメタファーであり、クローズアップされた際の「乗客の分断」は同じ民族同士が争うという悲しみを生々しく描く。韓国映画史に間違いなく残る名作、必見です。ちなみに 「泣ける映画」の視点だと、とある若いカップルの顛末が、今回はひときわ涙腺にきました。語弊はあるけれど、美しい……。

映画の詳細データ
公開年 2016年
製作国 韓国
監督 ヨン・サンホ
出演者 コン・ユ/チョン・ユミ/マ・ドンソクほか
時間 118分

もっと語りたい!泣ける韓国映画5. タクシー運転手 約束は海を越えて

もっと語りたい!泣ける韓国映画5. タクシー運転手 約束は海を越えて
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数多く存在する社会派韓国映画の入門にもおすすめ

1980年ソウル。大金と引き換えにドイツ人記者を「光州市」まで送迎することになったタクシー運転手マンソプ。しかし彼は知らなかった。向かおうとしている場所が、今まさしく一触即発の内戦状態にあることを――。韓国の血塗られた近代史「光州事件」を題材とした、実話に基づく物語です。

光州事件では、民主化を求める多くの一般市民が韓国軍の武力鎮圧により命を失いました。軍を指揮した当時の大統領・全斗煥(チョン・ドゥファン)は、2021年11月に死去。本件に対する謝罪や反省の言葉を、彼は最後まで口にしなかったといいます。

インターネットのない時代、情報統制のもと、同じ国内での非人道的な行為を何も知らないまま暮らしていた主人公マンソプ。でもこれって現代でもじつはそんなに変わらないかもしれなくて、ともすれば身近に起きている社会問題を私たちは知らないまま、知っていたとしても見て見ぬ振りをしたまま暮らしてしまいがちです。

本作でひときわ感情が動かされるのは、一度は問題から目を逸らしたマンソプがとても「他人事」ではいられなくなる場面。多くは語らずリアクションのみで心の動きを見せていくソン・ガンホの演技が光ります。知らないことは罪じゃない。でも、もしも知ったなら――。とても黙してはいられないことばかりが起こる昨今、私たちが取るべき行動をマンソプが教えてくれます。

映画の詳細データ
公開年 2017年
製作国 韓国
監督 チャン・フン
出演者 ソン・ガンホ/トーマス・クレッチマンほか
時間 137分
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※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

【筆者】353

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ただの雑食な映画好き。——だったはずが、気付けば映画館スタッフに。
映画を観る時間がめっきり減ってしまうというジレンマと戦いながら、映画ブログ『353log』を時々更新中。
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