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【広島県福山市・鞆の浦】スイーツにも合う甘い香りに誘われて。港町で「保命酒」ほろ酔いさんぽ旅

まっぷるトラベルガイド編集部

更新日: 2024年5月14日 [PR]

【広島県福山市・鞆の浦】スイーツにも合う甘い香りに誘われて。港町で「保命酒」ほろ酔いさんぽ旅

「保命酒(ほうめいしゅ)って知ってる?」
そう聞かれた時、私はもう鞆の浦(とものうら)に行くことを決めていました。
まだ知らないお酒を飲んでみたいという好奇心が、生きる大きな理由になっているからです。

さっきまで名前すら知らなかった保命酒の味も、保命酒の酒蔵があるという鞆の浦がどんなところなのかも、想像するだけで気持ちが浮つきました。鞆の浦は広島県の東の端、福山市にある港町です。

保命酒は江戸時代初期に漢方医の中村吉兵衛が造った歴史ある薬酒で、なんと、ペリー提督も飲んだことがあるそうです。ペリー提督が「大変立派なリキュールで感心した」と評したのが記録に残っています。

大変立派なリキュール、私も飲んでみたい。東京から新幹線に乗って、広島県の福山駅に向かいました。
(文:姫乃たま 写真:Yoshinori Okada)

常夜燈が見守る路地の町・鞆の浦

福山駅は静かな小雨。傘を畳んでバスに乗り込むと、窓の外を小雨の町が流れていきます。30分ほどで到着した終点が港町・鞆の浦です。

幕末には坂本龍馬の船も寄港した

バス停から海の方へ歩いて行くと、湾が広がっていて、穏やかな海の上に何艘か停まっている船がわずかに揺れています。ずっと向こうまで雨上がりの海と空が続いていて、島が浮いていて、視界と一緒に心までクリアになるようです。

鞆の浦は「潮待ちの港」と呼ばれていて、昔から潮の流れが変わるのを待つ人たちが交流する町として栄えてきました。

そんな港を見守るように建っているのが常夜燈です。160年ほど前に建てられた常夜燈には記念撮影をする人たちが集まっています。

高さ5m。てっぺんには宝珠

港から少し離れると、細い石畳の道が広がっていて、歴史ある建築物をリノベーションした住居や店舗が建ち並んでいました。趣きある町を歩いていると、遠いところに来たという旅の実感がじわじわと湧き上がってきます。

板塀と白壁の合間に伸びる石畳の路地

カメラを首に下げている観光客らしき人が前から歩いて来て、細い道の途中でぶつからないようにすれ違いました。手には保命酒が入った袋を提げています。初めて見る本物の保命酒です。あれがペリー提督も飲んだお酒なのかと思うと、レトロな町の雰囲気も相まって、タイムスリップしてきたような気分になりました。

保命酒はここ鞆の浦にある4つの酒造だけで造られているお酒なので、おみやげにもぴったりです。

瀬戸内名産のちりめんを販売する店も

常夜燈の近くに戻って、「鞆の浦 a cafe」で昼食にしました。築160年の店内は歴史ある木材の暖かみにあふれています。そして、バーカウンターには保命酒のボトルが並んでいました。鞆の浦では常飲されているのでしょう。どうやって飲むんだろう。熱い珈琲を飲み終わったら、保命酒屋へ行って話を聞くのがますます楽しみになりました。

常夜燈そばいろは丸展示館。建物は江戸時代の蔵

 

たぬきも買いに来たという保命酒の味は……?

保命酒の入江豊三郎本店にお邪魔すると、大正時代の商家をリノベーションした風情ある店内に、保命酒をはじめとする商品が広々と並んでいました。空が見える坪庭が設けられていて、訪れた人々は買い物だけでなく、縁側に腰かけて建物の雰囲気を味わいながら、のんびり過ごすことができます。

坪庭でゆっくり試飲を楽しむことも可能

笑顔で迎えてくれた入江里彩社長が、保命酒の試飲をすすめてくれました。

保命酒は焼酎をベースに薬草を漬け込んだお酒です。どんな味を想像しますか? 私はドイツのハーブ酒であるイエーガーマイスターを想像していました。ほんのり苦くて、独特な甘さがある、あの感じです。

お店の一角に、保命酒の原材料の薬味

じっくり近くで見る保命酒はうすい琥珀色をしていて、甘い匂いがします。飲んでみると、香りの通り、とっても甘い。実際にシロップの代わりとして、ホットケーキにかけて食べることもあるそうです。もっと癖の強いお酒だと思っていたのですが、想像よりずっと飲みやすいので驚きました。

入江社長のおすすめは珈琲割り。ほかにも、ソーダで割ると、すっきりとした甘さになっておいしいといいます。

私は紅茶のリキュールやピートの効いたウイスキーなど、アルコール同士でカクテルにしてもおいしそうだと思いました。たくさん飲んでも体に良さそうだし、薬味酒って素敵ですね!(たくさん飲んでも体にいいとは誰も言ってません)

保命酒の祖とされる神功皇后が描かれた歴代ラベル

入江豊三郎本店では「保命酒の花」という商品名の酒粕も販売されていました。牛乳で割ると甘酒みたいになるので人気なのですが、実はワサビと醤油で和えると酒のあてになるんです、と店員の方が教えてくれました。保命酒の話をしている時のお姉さんが本当に楽しそうで、保命酒が愛されているお酒であることが伝わってきました。

かつて、保命酒は豪華な彫刻の徳利に詰められて、幕府や朝廷にも贈答されていました。当時の豪華な徳利は「献上徳利」と呼ばれていて、入江豊三郎本店にコレクションが所蔵されています。献上徳利は現在の商品にも再現されていて、目を引くのがたぬきの形をした徳利。

たぬきの献上徳利は編笠付き!

入江豊三郎本店の蔵には、小さなたぬきの剥製も飾ってあります。入江社長にどうしてたぬきなのか尋ねたところ、保命酒を求めて山からやって来た子たぬきの話をしてくれました。

その昔、病気になってしまった親たぬきのために、人間の女の子に化けた子たぬきが、山から保命酒を買いにやって来た、というエピソードです。

心なしか、一杯の保命酒で胸のあたりがほかほかしてきて、体が辛い時、甘い保命酒を求めたたぬきの親子の気持ちがわかるようでした。

たぬきは数軒離れた仕込蔵の店頭に

 

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