更新日: 2024年3月5日 [PR]
【和歌山県】熊野古道・紀伊路の歩き方を徹底解説!
自然崇拝の聖地「熊野」へと続く巡礼道である「熊野古道」。熊野古道は、信仰の道として千年の時を超え歩き続けられてきた道ですが、そのなかでも「紀伊路(きいじ)」は、かつて熊野古道のメインルートとされた歴史ある道。現代でも、豊かで美しい自然に癒され、魅力溢れる沿道の町にも立ち寄りながら、「歩く旅」が楽しめる絶好のルートです。古道歩きの初心者でも気軽に挑戦できるセクションハイクから、中〜上級者向けのロングトレイルまで、紀伊路の歩き方を詳しくご紹介します!
目次
熊野古道・紀伊路ってどんな道?
神話の時代から、神々が鎮まる特別な場所と崇められた紀伊山地。その自然豊かな山岳地帯にある「熊野本宮大社(くまのほんぐうたいしゃ)」、「熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ)」、「熊野那智大社(くまのなちたいしゃ)」及び「那智山青岸渡寺(なちさんせいがんとじ)」の三社一寺は、熊野三山(くまのさんざん)とよばれ、古来より広く信仰を集めてきました。
平安時代に上皇・法皇が熊野御幸を行うようになると、次第に貴族、武士、庶民へと広まりました。身分や男女の別を問わず、あらゆる人々が熊野を目指した様子は「蟻の熊野詣(ありのくまのもうで)」と形容されるほどで、その参詣道となったのが「熊野古道」です。
紀伊路は熊野古道のメインルート
聖地「熊野」を目指すための巡礼道「熊野古道」には、複数のルートがあります。そのなかでも「紀伊路」は、かつて京都から上皇や貴族が歩いた熊野古道のメインルートであり、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に登録されている「中辺路(なかへち)」へと続く重要な道です。
その昔、京都から熊野三山に向かう人々は、鳥羽離宮(現在の城南宮)から舟に乗って淀川を下り、摂津国の窪津に上陸。河内国と和泉国を通って雄ノ山峠を越え、紀伊国に入りました。紀伊国からは紀伊半島の西岸を通り、幾重にも渡る険しい峠を越えながら、中辺路との分岐点である現在の田辺市を目指しました。
個性豊かな12の市町を繋ぐ紀伊路の魅力
紀伊路には、万葉集にも詠まれた景勝地や、由緒ある社寺など、見どころがたくさんあります。山と海、里山と田園が織りなす風景はのどかで美しく、果樹園や街中を通ることも多いため、変化に富んだ景色を楽しめるのが魅力です。
峠を越えて街へ、さらに峠を越えて次の街へと進むルートが多く、行く先々の街に立ち寄って観光できるのも大きな魅力。沿道にある12の市町には、それぞれに独自の文化があり、美味しいご当地グルメや特産品も楽しめます。また、舗装区間が多いので歩きやすいのもポイントです。
熊野古道・紀伊路の楽しみ方は?
紀伊路ウォークを気軽に楽しむなら、まずは一部の区間だけ歩くセクションハイクがおすすめです。和歌山県では、紀伊路の山中渓駅から紀伊田辺駅までの道のりを、9つの区間に分けたコースを紹介。標準的な歩行スピードの場合、1区間あたり約2〜5時間で気軽にトライすることができます。一方、全長約120kmの紀伊路を一気に踏破するロングトレイルの場合は、最低でも5〜6日ほどかかりますが、そのぶん歩きとおしたときの達成感は何にも代えがたいものがあります!ご自身の能力に応じて、一区間を歩くセクションハイクとロングトレイルを上手く使い分けましょう。
事前準備&旅のお供に!和歌山県街道マップを活用しよう
和歌山県が発行している「和歌山県街道マップ」では、紀伊路の歩き方をわかりやすく紹介。2冊に分けて9つのコースごとに、見どころや所要時間などを確認することができます。マップにはトイレや自動販売機などの情報も掲載されているので、紀伊路ウォークの心強い味方になること間違いなし!こちらのマップは、沿道の町役場や観光協会などで配布されているほか、和歌山県観光振興課(TEL:073-441-2424)に問い合わせれば無料で送付してもらうことも可能です。また、和歌山県公式観光サイトからダウンロードもできるので、事前の下調べにもぴったりです。
押印帳のスタンプラリーで、踏破証明書をGET!
紀伊路ウォークを楽しむなら、和歌山県が整備する「押印帳」のスタンプラリーに挑戦しましょう。紀伊路の沿道にある王子社や社寺など、19カ所に設置されているスタンプを全て集めると、和歌山県よりシリアルナンバー入りの「熊野古道紀伊路踏破証明書」と記念品がもらえます。スタンプのデザインは、古来より神様の儀式に使われた絵画手法である切り絵風になっており、旅の記念にもぴったり!
また、押印帳は「熊野古道紀伊路」のほか、「熊野古道中辺路」「熊野古道大辺路」「高野七口」の全4種類あります。合計92カ所のスタンプを集めると、和歌山県知事から「『高野・熊野』和歌山四参詣道“超(スーパー)”完全踏破証明書」が進呈されます。
「熊野古道中辺路」の押印帳は、田辺市や新宮市の観光施設などで1冊100円で販売。そのほかの押印帳は3冊とも、和歌山県街道マップと同じ場所で無料で入手できます。
熊野古道・紀伊路で必ず押さえておきたいポイントは?
京都と熊野を結ぶ紀伊国の主要街道として、長い歴史を有する紀伊路には、多くの文化遺産や伝説が今なお残り、社寺や景勝地などの見どころもたくさんあります。そのなかでも特に、押さえておきたいポイントをご紹介しましょう。
紀伊路のポイント① 熊野九十九王子
「熊野九十九王子(くまのくじゅうくおうじ)」は、熊野詣(くまのもうで)の途中で身を清めたり、旅の安全を祈願したりするために設けられた神社の総称です。「九十九」は実際の数ではなく、数が多いことを表したもので、熊野古道全体では100以上の王子社があるといわれます。
この王子社のなかでも、特に格式が高いとされる5つの「五体王子」のうち、なんと2つは紀伊路にあります(残りの3つは中辺路)。長い歴史を経て、現在では石碑だけが残された王子跡も少なくありませんが、五体王子として崇敬を集めてきた「藤代(ふじしろ)王子」は海南市の「藤白神社」、「切目(きりめ)王子」は印南町の「切目神社」として現存しています。
●藤代王子(藤白神社)
万葉の時代、斎明天皇が白浜温泉への行幸の際に、創建したと伝わる古社。歴代の上皇たちが宿泊した参詣道途中の要所で、境内には南方熊楠(みなかたくまぐす)ゆかりの樹齢約千年のクスノキがそびえ立ち、権現堂には熊野三所権現本地仏坐像が安置されています。
■藤白神社(ふじしろじんじゃ)
住所:海南市藤白446
電話:073-482-1123
●切目王子(切目神社)
熊野参詣の中継遥拝所として、天皇や上皇などが必ず参詣し、御所御殿は皇族の宿泊所として使われました。後鳥羽上皇が開いた歌会の記録、国宝「切目懐紙」の写しが巻物となって残されています。令和4(2022)年には、国の史跡に指定されました。
■切目神社(きりめじんじゃ)
住所:和歌山県印南町西ノ地328
紀伊路のポイント② 紀伊路最長の石畳道
日高町にある標高360mの「鹿ヶ瀬峠(ししがせとうげ)」は、「次またシシノセの山を昇る、崔嵬の険阻(さいかいのけんそ:石や岩がごろごろして険しい様子)」と、藤原定家を嘆かせた紀伊路の難所です。峠越えが難しく馬を留めた「東の馬留王子」や、今昔物語などの伝承の舞台となっている「法華壇」を過ぎ、茶屋跡を残す頂へ。そこから峠を下り始めると、長い石畳の道が続きます。こちらは紀伊路に現存する最長の石畳道。苔むした石畳に歴史ロマンを感じることができます。
■鹿ヶ瀬峠(ししがせとうげ)
住所:和歌山県日高町原谷
電話:0738-63-3806(日高町観光協会)
紀伊路のポイント③ 伊太祁曽神社
紀伊路には有名な神社仏閣が点在しており、古道歩きの途中に立ち寄るのも楽しみのひとつです。和歌山市にある「伊太祁曽神社(いたきそじんじゃ)」は、日本に木種をもたらしたとされる神様・五十猛命(いたけるのみこと)を祭神として祀る古社。樹齢千年のご神木の穴をくぐる「木の俣くぐり」は、厄難除けとして有名です。境内には6世紀ごろに築造された直系16m、高さ5mの円墳もあり、横穴式の石室内を見学できます。
また、最寄りの伊太祈曽駅は、全国的にも有名な「猫駅長」がいる人気スポット。火・土・日曜には、駅舎内でかわいい猫の駅長さんを見ることができるので、参拝の前後に立ち寄るのもおすすめです。
■伊太祁曽神社(いたきそじんじゃ)
住所:和歌山県和歌山市伊太祈曽558
電話:073-478-0006
料金:拝観無料
時間:9:00〜17:00
紀伊路のポイント④ 道成寺
日高川町にある「道成寺(どうじょうじ)」は、文武天皇の勅願により大宝元年(701)に創建された和歌山県内最古の寺。国宝・千手観音菩薩像をはじめ、文化財指定の仏像が多数安置されています。能や歌舞伎、浄瑠璃の演目で「道成寺もの」と呼ばれる一大ジャンルを築き、今なお語り継がれる「安珍・清姫物語」は、こちらの道成寺が舞台。境内にある縁起堂では、絵巻「道成寺縁起」の写本を使って悲恋物語を伝える「絵とき説法」を毎日実施しており、参拝者から人気を集めています。
■道成寺(どうじょうじ)
住所:和歌山県日高川町鐘巻1738
電話:0738-22-0543
料金:境内無料(宝仏殿・縁起堂は拝観700円、絵とき説法を含む)
時間:境内自由(宝仏殿・縁起堂は9:00~17:00、絵とき説法は~16:00)
紀伊路のポイント⑤ 御所の芝
紀伊路には、風光明媚な絶景スポットも数多くあります。海南市にある地蔵峰寺(じぞうぶじ)の裏手にある「御所の芝(ごしょのしば)」は、白河上皇の熊野御幸の行宮跡といわれ、江戸時代に編纂された『紀伊国名所図会』で「熊野路第一の美景なり」と讃えられたほど。眼下には海南市の町並みや臨海工業地帯、日本遺産に指定されている「和歌の浦」の眺望が広がり、天気のいい日には淡路島や四国まで見渡せることもあります。
■御所の芝(ごしょのしば)
住所:和歌山県海南市下津町橘本
電話:073-483-8460(海南市産業振興課)
紀伊路のポイント⑥ 千里の浜
約1.3kmの美しい砂浜が続くみなべ町の「千里の浜(せんりのはま)」は、『伊勢物語』や『枕草子』にも出てくる景勝地。紀伊路で唯一海岸を歩いて通るので、風光明媚な海景色とともに古道歩きが楽しめます。また、現在では全国有数のアカウミガメの産卵地としても知られ、毎年5月下旬から8月上旬にかけてたくさんの母ガメが産卵のために上陸します。
■千里の浜(せんりのはま)
住所:和歌山県みなべ町山内259
電話:0739-74-8787(みなべ観光協会)
紀伊路ウォークの第一歩!「紀伊宮原駅〜湯浅駅」コースを歩いてみよう
9つに区切られたセクションハイクのうち、「紀伊宮原駅~湯浅駅」コースは、歩行距離が一番短い上に見どころが豊富で、古道歩きの初心者にもおすすめです。
JR紀伊宮原駅を起点に、柑橘畑と絶景が広がる糸我峠を越え、醤油醸造発祥の地として知られる湯浅の町へ!その道中には、日本最古の稲荷神社といわれる「糸我稲荷神社」など見どころはもちろん、みかん農家が営む可愛いショップや、ご当地グルメのしらす丼が味わえる人気店もあり、「歩く旅」の楽しみが満載です。
全長約7kmのコースを、標準的なスピードで歩けば約2時間。途中で寄り道しながら散策しても、半日もあればゆっくり楽しむことができますよ。
旅のお供に、有田特産の柑橘系ドリンクはいかが?
スタート地点となるJR紀伊宮原駅に到着したら、まずは駅近(徒歩約5分)にある「伊藤農園直営店 みかんの木」に立ち寄りましょう。明治創業のみかん農家が営む直営ショップは、木造の蔵をリノベーションしたレトロな空間。店内には、有田みかんをはじめとする季節ごとの生柑橘や、柑橘類を使ったさまざまな加工品が並んでいます。
これからはじまるセクションハイクのお供には、16種類の柑橘から選べる「100%ピュアジュース(335円)」や、持ち歩きやすいパックタイプの「ピュアフルーツ寒天ジュレ(390円)」、伊藤農園と創業300余年の老舗酒造・能勢酒造がコラボした「有田みかんサイダー(390円)」などがおすすめ!また、海南市にある山本勝之助商店のシュロ製品など、「和歌山のいいもの」をセレクトした素敵なアイテムも販売しています。
■伊藤農園直営店 みかんの木(いとうのうえんちょくえいてん みかんのき)
住所:和歌山県有田市宮原町滝川原518
電話:0120-897-053
時間: 9:00〜17:00
休日:無休
見どころ① 有田川を渡って、中将姫ゆかりの寺へ
高野山から紀伊水道へと流れる有田川は、もともと「暴れ川(あれかわ)」と呼ばれ、昔の旅人たちは渡し船で対岸へ向かいました。現在、有田川に架かる宮原橋の北詰・東側には、渡し場跡の碑が残されています。
宮原橋を渡って少し歩き、国道42号を越えた先には、時の右大臣・藤原豊成の娘である中将姫(ちゅうじょうひめ)ゆかりの「得生寺」があります。姫を疎んだ継母から殺害を命じられた家臣・伊藤春時は、姫の徳に心を打たれて草庵にかくまい、剃髪して名を得生と改めました。これが寺の由来と伝えられます。毎年5月14日に行われる練供養「来迎会式(らいごうえしき)」は、二十五菩薩が姫を極楽浄土へ導く様子を表し、県無形民俗文化財に指定されています
■得生寺(とくしょうじ)
住所:和歌山県有田市糸我町中番229
電話:0737-88-7110
見どころ② 日本最古といわれるお稲荷さんを参拝
得生寺から少し歩くと、朱塗りの鳥居が連なる神社を発見。こちらの「糸我稲荷神社」は、文化7(1810)年に当時の神官が残した社伝『糸鹿社由緒』によれば、創建は白雉3(652)年。京都にある伏見稲荷神社の創建より約60年もさかのぼることから、日本最古の稲荷神社といわれ、鳥居には「本朝最初稲荷神社」の額が掲げられています。
■糸我稲荷神社(いとがいなりじんじゃ)
住所:和歌山県有田市糸我町中番329
電話:0737-88-7093
熊野古道のルートからは少し離れます(糸我峠から往復約2km)が、この先にある糸我峠の頂上付近から栖原海岸方面に進む途中には、糸我稲荷神社の元宮である「稲葉根社」があります。緑深い山中に連なる朱色の鳥居をくぐり抜けた先には、大岩の祠があるので、時間に余裕があればぜひこちらもお参りを。同神社の神様が降り立ったと伝わる元宮は、神秘的な雰囲気が漂い、春には美しい河津桜が鳥居周辺を鮮やかに彩ります。
■稲葉根社(いなばねやしろ)
住所:和歌山県有田市糸我町中番
電話:0737-88-7093(糸我稲荷神社)
見どころ③ 熊野古道の歴史について学び、ここでちょっぴりひと休み
糸我稲荷神社に隣接する「くまの古道歴史民俗資料館」には、熊野古道に関するさまざまな資料を展示。藤原定家の日記『熊野御幸記』をもとに熊野詣の様子を記した絵巻や、かつて糸我峠にあった茶屋を再現したコーナーなどを見ることができます。こちらは入館無料で、トイレや自動販売機も設置されているので、休憩スポットにもぴったり。この先には坂道が続く糸我峠があるので、ひと休みしてから出かけましょう。
■くまの古道歴史民俗資料館(くまのこどうれきしみんぞくしりょうかん)
住所:有田市糸我町中番330-2
電話:0737-88-8528
料金:入館無料
時間: 9:30〜17:00
休日: 水・木曜
見どころ④ 険しい峠のてっぺんには、万葉の旅人も眺めた絶景が!
熊野九十九王子の一つ・糸我王子を通りすぎると、藤原定家の日記『熊野御幸記』で「険阻(けんそ)を凌ぎてイトか山を昇る」と書かれている、「糸我峠」の険しい山道を登ります。
今回のモデルコースでは一番の難所ですが、七曲がりの急な坂道を登り詰めた先には、万葉の歌枕で「絲鹿の峠」といわれた絶景が広がります。江戸時代にはここに2軒の峠の茶屋があり、参詣者たちに名産のみかんを振る舞ったそう。みかん畑の先にある有田市の町並みや湯浅湾を一望できる美しい風景は、きっと旅の疲れを癒してくれることでしょう。
■糸我峠(いとがとうげ)
住所:和歌山県有田市糸我町990
電話:0737-83-1111(有田市観光協会)
見どころ⑤ 醤油醸造の発祥地・湯浅のレトロな町並みを散策
糸我峠を下って、熊野九十九王子の一つ・逆川王子を過ぎると、熊野古道の宿場町として栄え、醤油醸造の発祥地としても知られる町・湯浅に到着。湯浅では、鎌倉時代から700年以上に渡って醤油づくりが盛んで、江戸時代には徳川御三家・紀州藩の保護を受けて、92軒もの醤油屋が繁盛していたといわれます。
湯浅の北町・鍛治町・中町・濱町を中心とする地区には、江戸時代の面影を残す町屋や土蔵が今なお残り、風情溢れる散策スポットに。平成18(2006)年には、和歌山県で唯一となる国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、平成29(2017)年には、日本遺産「『最初の一滴』醤油醸造の発祥の地 紀州湯浅」にも登録されています。熊野古道からちょっぴり寄り道して、レトロな町歩きを楽しみましょう。
■湯浅重要伝統的建造物群保存地区
(ゆあさじゅうようでんとうてきけんぞうぶつぐんほぞんちく)
住所:湯浅町湯浅
電話:0737-63-2525(湯浅町役場)
江戸創業の老舗で、湯浅醤油をおみやげにGET!
重要伝統的建造物群保存地区にある「角長」は、天保12(1841)年に創業した醤油醸造蔵です。創業から180年以上使い込まれた吉野杉の木桶で、冬季だけの寒仕込みにこだわって醸造される醤油は、まさに昔ながらの逸品。湯浅で唯一の手づくり醤油蔵として、室町時代の溜りを再現した「濁り醤」や、江戸時代の醤油を再現した「湯浅たまり」などを製造販売しています。
事前に電話予約すれば、醤油づくりの道具を展示する職人蔵や、醸造工程を解説するジオラマやパネルを展示する醤油資料館などを、無料で見学することもできますよ。
■角長(かどちょう)
住所:和歌山県湯浅町湯浅7
電話:0737-62-2035
料金:見学無料
時間:9:00〜17:00(日曜は10:00〜16:00)
休日:無休(資料館は要予約)
旅のお楽しみ!湯浅名物のしらす丼でランチ
醤油と同じく湯浅の名物といえば、県下一の水揚げ量を誇る「しらす」。町内には、しらす丼が味わえる食事処が10店舗以上あります。
そのなかでも、JR湯浅駅のすぐ近くにある「かどや食堂」は、地元はもちろん遠方から訪れるファンも多いという人気店。創業から約75年に渡って愛され続ける老舗の食堂です。看板メニューのしらす丼は、生しらす(1100円)と釜揚げしらす(720円)から選ぶことができます。湯浅の醤油をベースに、有田みかんのハチミツや紀州梅の梅干しを加えたオリジナルのタレをかけて、鮮度抜群のしらす丼を豪快にいただきましょう!
■かどや食堂(かどやしょくどう)
住所:和歌山県湯浅町湯浅1109-1
電話:0737-62-2667
時間:11:00〜14:00、17:00〜20:00
休日:水曜、日曜の夜、月一回不定休
ゴール地点のJR湯浅駅に到着!
美味しいしらす丼でお腹を満たした後は、今回の区間のゴール地点であるJR湯浅駅へ向かいましょう。JR湯浅駅の旧駅舎は、2023年5月に改修工事を実施。昭和2(1927)年に開業した当時の外観が蘇ると共に、新たに飲食&物販店がオープンし、昭和レトロな複合施設としてリニューアルされました。
飲食&物販店の「湯浅米醤」では、かまど炊きご飯のおむすび定食(950円)や、金山寺味噌のタレをからめた炙りもち(1本150円)、甘酒入りの米ソフト(カップ450円、コーン500円)などを、店内でもテイクアウトでもいただけます。また、湯浅醤油や金山寺味噌、みかんジュースなどの特産品も販売しているので、おみやげ探しにもおすすめです。
■湯浅米醤(ゆあさべいしょう)
住所:和歌山県湯浅町湯浅(JR湯浅駅・旧駅舎内)
電話:070-9133-0737
時間:10:00~17:00(イートインは11:00〜14:00)
休日:無休
まだある!モデルコース周辺の立ち寄りスポット
今回ご紹介した「紀伊宮原駅〜湯浅駅」のコースには、他にもたくさんのおすすめスポットがあります。時間に余裕があれば、ぜひこちらも立ち寄ってみてくださいね。
●立石道標(立石茶屋)
湯浅の熊野古道沿いに立つ大きな石の道標は、天保9年(1838)に建てられたもの。高さ2.35mの石の側面には、東西南北の方角と共に、「きみゐでら(紀三井寺)」「すぐ熊野道」「いせかうや(伊勢高野)」という地名が刻まれています。
また、立石道標の隣にある立石茶屋(旧堀田茶舗)は、休憩所として気軽に利用できます。江戸後期に建てられた風情溢れる建物は、かつて茶商を営んでいた堀田家の店舗兼住宅を改修したもので、国の登録有形文化財に指定。例年、ひなまつりには雛飾りや吊るし飾り、端午の節句には五月人形が展示され、訪れる人をもてなします。
■立石茶屋(たていしちゃや)
住所:和歌山県湯浅町湯浅860-2
電話:0737-22-3133(湯浅町観光協会)
時間:10:00〜16:00
休日:水曜
●湯浅醤油
JR湯浅駅から東へ徒歩10分の場所にある「湯浅醤油」では、醤油蔵の見学&体験をおこなっています。見学ツアーでは、醤油の熟成発酵の工程や原料を間近で見ることができ、タイミングがよければ、もろみが入った大きな杉樽を職人さんがかきまぜる櫂入れ(かいいれ)の作業などが見られることも。また体験では、職人さんと同じように櫂入れができるほか、ペットボトルに醤油のもろみを仕込んで育てる「マイ醤油づくり体験」が楽しめます。
併設の売店&蔵カフェでは、和歌山県海南市にある黒沢牧場とコラボした醤油ソフトクリーム(450円)が大人気!2023年の「第9回ものづくり日本大賞」で経済産業大臣賞を受賞したカカオ醤をはじめ、自社ブランドの湯浅醤油や金山寺味噌を多数販売しています。
■湯浅醤油
住所:和歌山県湯浅町湯浅1464
電話:0737-62-2100
料金:工場見学無料、櫂入れ体験300円、マイ醤油づくり体験1,300円(要予約)
時間:9:00〜17:00(蔵カフェは〜16:00、工場見学の最終受付は〜16 :00)
休日:無休
●橘家 花梵天
JR紀伊宮原駅の近くにある、明治36(1903)年創業の料理旅館「橘家」。その1階にある「花梵天」は、日帰りでも利用できる食事処です。春は太刀魚、夏は鮎、秋は鱧、冬はクエ。すべて地元で獲れた新鮮な魚介にこだわり、丼もの・定食・コース料理など多彩なメニューを提供しています。
そのなかでも、「太刀魚の漁獲量日本一」を誇る地元・箕島漁港から直接仕入れた太刀魚は、ぜひ味わってほしい逸品。新鮮な太刀魚をサッと湯にくぐらせていただく太刀しゃぶ鍋(1320円)や、太刀魚の素焼きに秘伝のタレをかけた太刀重(1320円)など、ご当地ならではの太刀魚料理を堪能しましょう。※太刀魚料理は要予約
■橘家 花梵天(たちばなや はなぼんてん)
住所:和歌山県有田市宮原町17
電話:0737-88-7005
時間:11:30〜14:00、17:00〜20:00
休日:無休
セクションハイク&ロングトレイルのコースガイド
モデルコースとしてご紹介した「紀伊宮原駅〜湯浅駅」を含め、紀伊路のセクションハイクは全部で9つのコースがあります。古道歩き初心者の方は、まず興味のあるコースを選んでセクションハイクを楽しむのがおすすめ。トレッキングなどの経験がある中〜上級者は、紀伊路を踏破するロングトレイルに挑戦してみましょう。服装や持ち物など、紀伊路ウォークのヒントも参考にしてくださいね。
【初心者向け】セクションハイクで全9コースを気軽に楽しもう
紀伊路のセクションハイクは、各コースそれぞれに魅力が満載!歩行距離や時間も参考にしながら、気軽に紀伊路ウォークを楽しみましょう。
① 山中渓駅~布施屋駅
歩行距離16.4km/標準歩行時間4時間20分
大阪府最南端の阪南市・山中渓から、雄ノ山峠や紀ノ川を越えて、和歌山市・布施屋へ。
② 布施屋駅〜海南駅
歩行距16.3km/標準歩行時間4時間20分
比較的、平坦な道をのんびり歩けるコース。道中には、木の神を祀る「伊太祁曽神社」も。
③ 海南駅~紀伊宮原駅
歩行距離14.4km/標準歩行時間4時間45分
格式の高い「藤代王子」や絶景が広がる「御所の芝」など、見どころが豊富な名コース。
④ 紀伊宮原駅〜湯浅駅
歩行距離7km/標準歩行時間2時間
有田川を渡って糸我峠を越え、醤油醸造発祥の地・湯浅の町歩きが楽しめる。モデルコース参照。
⑤ 湯浅駅~紀伊内原駅
歩行距離16.9km/標準歩行時間4時間55分
「鹿ヶ瀬峠」は健脚向きの難所。峠を越えた先には、熊野古道最長の石畳がある。
⑥ 紀伊内原駅〜西御坊駅
歩行距離14.6km/標準歩行時間3時間55分
安珍・清姫伝説の「道成寺」や、髪長姫伝説の「海士王子」など、ロマンチックな史跡が点在。
⑦ 西御坊駅〜切目駅
歩行距離14.9km/標準歩行時間3時間55分
日高川を渡って海沿いを南下。コースの後半では、五体王子の一つ「切目王子」に参拝を。
⑧ 切目駅〜南部駅
歩行距離12.1km/標準歩行時間3時間20分
紀伊路で唯一、爽快な浜辺を歩ける「千里の浜」を経て、日本一の梅の里・みなべ町へ。
⑨ 南部駅〜紀伊田辺駅
歩行距離9.4km/標準歩行時間2時間30分
紀伊路の終点・田辺市へ。熊野古道はこの先、中辺路と大辺路に分かれ、熊野三山へと続く。
【中~上級者向け】紀伊路を一気に踏破するロングトレイルに挑戦
全長120kmの紀伊路をロングトレイルで踏破するには、中級者で6日、上級者で5日が概ねの目安となります。それぞれの歩くペースに合わせて、しっかりと旅のプランを立てましょう。
●中級者向けのモデルプラン
1日目:山中渓駅~海南駅(泊)
2日目:海南駅~紀伊宮原駅(泊)
3日目:紀伊宮原駅~湯浅市街地(泊)
4日目:湯浅市街地~御坊市街地(泊)
5日目:御坊市街地~印南港(泊)
6日目:印南港~紀伊田辺駅
●上級者向けのモデルプラン
1日目:山中渓駅~海南駅(泊)
2日目:海南駅~湯浅市街地(泊)
3日目:湯浅市街地~御坊市街地(泊)
4日目:御坊市街地~印南港(泊)
5日目:印南港~紀伊田辺駅
※1日目の山中渓駅から海南駅の区間は30km強ありますが、海南駅まで道中に宿泊場所がありません。30kmの歩行が厳しい場合は、途中の布施屋駅で電車に乗り、和歌山駅周辺の宿で一泊しましょう。
【紀伊路ウォークのヒント】服装や持ち物をチェック
紀伊路は一般道やコンクリートの舗装路が大半で、岩が積み重なったガレ場のような場所はほとんどありません。ただし、苔むした石畳などで滑ることもあるため、履き慣れたスニーカーやトレッキングシューズがおすすめです。上着やズボンは気候に応じて、発汗性や伸縮性に優れた動きやすい服装を選び、念のため雨具も準備しておきましょう。
峠越えをする場合、人里から離れた山道には飲み物を買える場所がありません。季節によりますが、1リットル程度の水分は必ず携行しましょう。また、1食分の食べ物も用意しておくと安心です。
コースによっては、中間付近にある飲食店などで昼食がとれる場合もあります。Paypayなどの電子マネーが使えるお店もそれなりにありますが、個人商店の場合は使えないこともあるので、旅の日数などを考慮しながら現金を用意しておきましょう。
和歌山県公式観光サイトからダウンロードできる「和歌山県街道マップ」と「押印帳」は、事前入手もしくは出発前にプリントするなどして持参するのがおすすめです。
おみやげにぴったり!熊野古道・紀伊路ならではの特産品
和歌山市から田辺市にかけて続く紀伊路には、その土地の気候や風土、伝統が育んださまざまな特産品があります。各市町の店舗や観光施設などで販売されているので、ぜひおみやげにGETしましょう!
特産品①和歌山ブランドの果物
豊かな自然と温暖な気候に恵まれた和歌山県は、言わずと知れたフルーツ王国。みかん・いちじく・かきなどは、いずれも日本一の収穫量を誇ります。さらに、有田市から全国にその名を広めた「有田みかん」をはじめ、和歌山県オリジナル品種のイチゴ「まりひめ」、紀の川流域で瑞々しく実る「あら川の桃」、海南市で生産される「下津のびわ」など、和歌山ブランドの果物もいっぱい!おみやげに買うなら、それぞれに趣向を凝らした加工品もおすすめです。
特産品②南高梅
和歌山県のみなべ町を中心に栽培される梅は、栽培面積&収穫量ともに日本一!そのなかでも「南高梅」は最高級品とされており、皮が薄くて種は小さく、ふっくら柔らかい果肉が特徴。梅干しはもちろん、梅スイーツなども製造販売されています。また、県内では梅酒づくりも盛んで、日本最大級の生産地となっています。
特産品③金山寺味噌
うり・なす・しそ・しょうがなどの夏野菜を、大豆・むぎ・米の麹で仕込む「金山寺味噌」は、調味料として使われるのではなく、ご飯に乗せたり魚料理に添えたりして食べる「おかず味噌」です。その歴史は鎌倉時代にまで遡り、興国寺を建立した高僧・覚心(かくしん)が、修行で訪れた宗の怪山寺(きんざんじ)から製法を持ち帰ったといわれています。その後、湯浅町で盛んに作られるようになり、醸造の過程から生まれた醤油と共に、湯浅名物として知られるようになりました。
特産品④日本酒
紀伊山地から湧き出す良質な水に恵まれた和歌山県には、こだわりの日本酒を醸造する酒蔵がたくさんあります。そのなかでも県北部の海南市は、昔から酒づくりが盛んな土地。慶応2(1866)年に創業した「名手酒造店」や、銘酒・紀土で知られる「平和酒造」、日本酒から梅酒まで多彩な酒造りに挑む「中野BC」など、個性豊かな地酒が揃っています。
特産品⑤紀州備長炭
ウバメガシを原料に作られる「紀州備長炭」は、火力が強くて長時間燃える良質な白炭として、古くから料理の加熱や焼きものなどに重宝されてきました。江戸時代には紀州田辺の炭問屋によって、備長炭の評判が江戸中に知れ渡ったといいます。
そんな備長炭の発祥地・田辺市では今もなお、昔ながらの製法で紀州備長炭が作られています。紀州備長炭の用途は加熱だけにとどまらず、消臭や浄水に利用されるほか、叩くと澄んだ音色がするため風鈴や炭琴などの楽器にも使われます。また近年では、「食べる備長炭」として料理やスイーツの材料にも使われるなど、多彩な広がりを見せています。
紀伊路ウォークの動画をYoutubeで公開中!
紀伊路ウォークの魅力をもっと知りたい方は、Youtubeで公開されている動画もチェック!Youtuberのお二人が、紀伊路のロングトレイル&セクションハイクに挑戦する様子をご覧いただけます。
紀北から、紀中を経て、さらに紀南へ。和歌山県の南北間の変化を、歩きながらゆっくりと楽しめる紀伊路の旅。見どころからご当地グルメまで、魅力満載の「歩く旅」に、みなさんも出かけてみませんか?
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