更新日: 2024年10月2日
箱根は坂と階段の連続!東海道五十三次ちょこっと半日ハイキング【vol.01 小田原宿~箱根宿:前編】
「東海道五十三次」と聞くと、今はなき歴史上のもの、と思う人も多いのでは。確かに、かつての東海道のほとんどが舗装され、きれいな道路に整備されてしまいました。宿場町も、歴史の風情を残しているところもあれば、開発が進みまったく面影のない場所もあります。
しかし中には、江戸時代の雰囲気を残した山道や峠道など、歴史散策をしながらハイキングをするのにぴったりの道も。江戸時代の旅人の気分になって宿場から宿場までをてくてく歩く、日帰りハイキングに出かけてみませんか。
今回ご紹介するのは、東海道の中でも難所として知られた箱根峠を目指す、小田原からのコースです。
小田原城の美しい姿を目に焼き付けてから出発!
日本橋から数えて9番目の宿場「小田原宿」には、かつて豊臣秀吉が攻め落とした小田原城がありました。箱根峠に向かう前に、まずは「小田原城跡」を訪れてみましょう。
JR小田原駅を出て、さまざまな店が立ち並ぶ通りを歩いて、「小田原城跡」のお堀端までおよそ10分。春には桜が咲き誇り、お堀の水面には花びらが浮かぶ光景が広がります。
「馬出門」から中に入って中心部分を目指すと、そこには白く美しくそびえ立つ天守。天守は中に入って見学もできるので、上までのぼって小田原の街並みを眺めてみるのもいいでしょう。
「小田原城跡」を見学した後は、城の南側から国道1号に出て右折します。この辺りでは、国道1号が旧東海道にあたります。
新幹線の高架が前方に見えてきたところで、旧東海道は国道1号から離れ、脇の細い道に入っていくことになります。脇道に入ってすぐ、「板橋見附跡」の案内板が現れます。
見附とは、宿場の江戸側と京都側の端に設けられた見張り所のこと。ここで宿場の人の出入りを監視していました。ここを過ぎれば、いよいよ小田原宿を出て箱根へと向かう道になります。
脇道を抜けて再び国道へ戻り、箱根登山鉄道と早川に沿うようにしてしばらく歩きます。頭上を行く小田原厚木道路の下をくぐり、旧東海道は踏切を渡って住宅街の中へと入っていきます。間もなく左手に箱根登山鉄道の風祭駅が見え、すぐ隣には大きな建物が建っています。
ここは「鈴廣かまぼこの里」。小田原はかまぼこが名物で、ここではさまざまなかまぼこをお土産に購入できるほか、併設の飲食店でかまぼこ料理などが味わえます。休憩がてらちょっと寄り道するのもオススメです。
ここから1時間弱ほど歩くと、箱根湯本駅近くに到着です。
箱根湯本からいよいよ難所の箱根の峠道へ
再び合流した国道1号は箱根湯本駅前の商店街へと続きます。しかし、旧東海道を歩くならば商店街へは向かわず、三枚橋という橋で川の向こう側へと渡りましょう。
箱根の山はここからが本番。橋を渡りきった先の旧東海道は、道が狭くなり、勾配もきつくなっていきます。道の両脇には温泉旅館が立ち並んでいます。車の往来が多いのですが歩道はなく、路側帯を歩くことになるので、十分気を付けてください。
しばらく進むと、旧東海道は舗装された道路から緑が鬱蒼とした脇道へと入っていきます。芦ノ湖までの道中、いくつかこのような分岐があるので、案内板を見逃さないように道路の脇にも注意しながら歩きましょう。
脇道に入った先には「猿渡石畳」と呼ばれる、江戸時代に敷かれた石畳が当時のまま残っています。周囲には草木が生い茂っていて、まるでタイムスリップしてしまったかのよう。そんな風情を楽しみながら歩いていると、道の向こうから制服姿の学生たちが。今でも地元の人に使われる道でもあるんだと驚いてしまいました。
「猿渡石畳」から舗装された道路に戻ると道幅は広くなりますが、あいかわらず歩道がない区間が多いので、慎重に足を進めます。
東海道随一の難所として知られる箱根峠ですが、道中にはさらに難所と呼ばれる急坂がいくつもありました。こうした坂には名前が付けられていることが多く、「女転し坂」などは、道が整備された現在も、その一部はいまだに急勾配となっています。
石畳の「割石坂」から再び舗装道路に合流してしばらく行くと、左手のガードレールの切れ目付近に「箱根旧街道」と書かれた案内板があることに気づきます。なんとそこから、森の中へと下っていく道が続いているのです。
先ほどまでの石畳の道よりも木々が鬱蒼としていて、「え?ここを行くの?」とちょっとびっくりしてしまいますが、突き進むしかありません。
澤坂をのぼって間の宿・畑宿に到着
坂を下りきり、小さな木橋で小川を渡るとやがて石畳ののぼり坂が現れます。案内板によると、ここは「大澤坂」。木々が影を落とし、湿気もあるせいか石畳は苔むし、滑りやすくなっているので注意が必要です。
「大澤坂」をのぼりきると短い階段があり、舗装された道路に出ます。すると目の前には集落が広がる光景が。ここは間(あい)の宿「畑宿」。間の宿とは宿場と宿場の間に設けられた休憩所の役割をする場所です。しばらく人気のない道路や森の中ばかりを歩いていたので、観光客が行き交う様子にホッとしてしまいます。
もしかしたら江戸時代の人たちもこんな気持ちだったのかもしれません。
「畑宿」は、樹木の色を活かして幾何学模様を描いた工芸品・寄木細工の発祥の地。通りに沿って工房や専門店が軒を連ねています。また、蕎麦屋などの飲食店もあります。
朝早く小田原を出発したのなら、「畑宿」に到着したころにちょうど昼時になっていることでしょう。江戸時代の旅人同様、「畑宿」でこのあとの行程のために英気を養いましょう。
「畑宿」から芦ノ湖までの道のりは、後編に続きます。
<データ>
■小田原宿~箱根宿
■距離:約16.5km
■所要時間目安:約7時間
※国土地理院(電子国土Web)にスポットとルートを追記
※ルートは本記事のものです。一部、旧東海道とは異なる場合があります
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※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。
【筆者】加藤きりこ
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秋田県生まれ。編集プロダクションで旅モノ、歴史モノ、交通系を中心に書籍の制作に携わり、現在はフリー。数年にわたり東海道五十三次を歩く旅を続けており、全宿踏破を目指している。2023年にようやく半分の袋井宿を通過し、今も京都を目指して西進中。