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活火山の薩摩硫黄島で豪快な海の野湯へ!!  NO 野湯 NO LIFE!【vol.01 東温泉・長浜温泉(鹿児島県三島村)前編】

瀬戸圭祐

更新日: 2024年9月18日

活火山の薩摩硫黄島で豪快な海の野湯へ!! NO 野湯 NO LIFE!【vol.01 東温泉・長浜温泉(鹿児島県三島村)前編】

活火山擁する薩摩硫黄島は、島のいたる所で温泉が湧く野湯天国だ。流れ出た温泉と硫黄は、海をコバルトブルーや黄緑色、赤茶色など様々な色に染める。

今回は、薩摩硫黄島への旅路とマニアが夢見る「東温泉」、赤茶けた砂浜を掘って湯船を作る「長浜温泉」での湯浴みをご紹介しよう。

海から突き出た活火山・薩摩硫黄島へ

昭和の雰囲気を残す雄大な火山島

海底火山が海面704mまで突き出た薩摩硫黄島は、薩南諸島北部に位置する島だ。

白煙噴く主峰・硫黄岳は、岩肌一面に硫黄を噴出し、雄々しさを感じさせる。硫黄岳はランクAの活火山に指定されており、また、隣の竹島、黒島とともに独特の自然環境や歴史などが評価され、「三島村・鬼界カルデラジオパーク」として日本ジオパークに認定されている。

一方、地元経済の支えであった硫黄鉱山が昭和中期に閉山になり、大規模な人口流失があった歴史を持つ。噴出する亜硫酸ガスによってしばしば農作物に被害が発生することもあり、現在は、港近くの集落に120人程度が住むのみとなった。

島内にタクシーやバスはなく、もちろんレストランもコンビニもない。基本的に現金しか使うことができない、昭和がそのまま残った素朴な島だ。

アクセスは綿密な計画と運がものを言う

かつては飛行機も飛んでいたが、現在、硫黄島へのアクセスは定期船フェリーしかない。その船も風や波などの天候条件により欠航になったり、出航しても硫黄島港には接岸ができずに抜港になってしまうこともある。

実質的な硫黄島への就航は2日に1回程度で、タイミングが悪ければ数日間の足止めをくらうこともあるのだ。

実際、鹿児島港で乗船する際に、帰りの船は欠航の可能性があることの了承を求められた。同行した仲間の一人は3日後に帰京せねばならなかった為、乗船を諦めた。また、船は朝9時30分に鹿児島港を出港するが、九州以外から行く場合には鹿児島などで前泊する必要がある。

さらに野湯を目指す場合は、干潮時に訪問しなければ入湯できないため、潮汐のタイミングも重要である。島に滞在中の昼間に干潮になり、かつ波が穏やかでなければ、海の野湯の入湯は困難である。

島の宿はかつて民宿が5軒あったが、コロナ渦や高齢化により2軒のみしか残っておらず、予約を取るのも至難であった。

アメージングな海の色に魅せられる硫黄島港

鹿児島港からの船旅は景色に恵まれていた。

出航してすぐ目の前に桜島が見え、運良く噴火を見ることができた。

桜島が後方に小さくなってくるころに前方西側には開聞岳が現れ、綺麗なコニーデ火山に見入ってしまう。

硫黄島までは4時間ほど。竹島に寄港後は、海上活火山の荒々しい雄姿が近づいてきた。島の東岸はコバルトブルーをベースにしたグラデーションの海が続いており、南岸には硫黄の山肌が断崖として海に落ち込んでいる。

硫黄島港は海が全て赤茶けていて驚いた。港内は海底から鉄分を多量に含んだ温泉が湧出し、海水との反応で赤茶色に変色している。

港に接岸する際には、若者が太鼓を叩いて踊りながら歓迎してくれた。西アフリカを起源にもつ打楽器・ジャンベの演奏だ。硫黄島には日本で唯一のジャンベの学校があり、その学習者が入港時も出航時も、もてなしの演奏と踊りを披露してくれたのだ。

絶海の秘湯・東温泉に身を浸す

ひたすら歩き続け波うち寄せる岩場へ

日本屈指の絶海の秘湯、日本名湯百選にも選ばれる東温泉。

波うち寄せる岩場に湧き出した温泉は、野趣あふれる絶景露天風呂で、全国の秘湯ファンから人気を集める温泉だ。

港から東へ2㎞余り、所々に穴ぼこのある傷んだ舗装路を徒歩で進む。両サイドは大名竹の藪だ。景色もあまり見えない中、ひたすら東温泉を目指した。

40~50分ほど進むと、硫黄岳からの溶岩が固まった小さな台地の岩場に辿り着いた。湯船が3つ目に入った。

岩盤の隙間から自然湧出した熱湯の源泉が、三段ある湯船に順番に注がれており、一番上の湯船は55℃ほどの熱湯で入湯は困難だったが、二番目の湯船は十人程度が一緒に入湯できるほど広く、42℃程度の適温の綺麗なお湯が溜まっていた。

三番目の湯船は人肌程度でやや温めだが、太平洋の大海原に浮かぶ、屋久島や口永良部島を眺めながらゆっくり長湯した。泉質は濃厚な硫黄明礬泉で、硫酸イオンとアルミニウムが含まれており、皮膚病・神経痛などに効能がある。pH1.7前後の強酸性であるため、少し目が濡れただけで強烈にしみてしまった。

全てを赤茶色に染める長浜温泉で寝湯を

港の湾内そのものが温泉という驚き

硫黄島港は全体が赤茶けた海であり、湾内全体が温泉と言っても過言ではない。

フェリー発着場の横にある、漁船を引き上げるために作られたコンクリートの斜面の波打ち際に降りて、手をつけると人肌程度に暖かかった。周辺のコンクリートのジョイント部分や亀裂などからも熱い温泉がどんどん湧出している。湾内のいたるところから温泉が湧き出し、海水と混合し,鉄水酸化物の赤褐色沈殿による変色海域が生じているのだ。

湾はフェリーが発着できる十分な深さがあるが、フェリーのスクリューで海水がかき乱されると、深い部分から緑がかった透明の海水が現れ、マーブル模様の海面になる。
湧出した熱い温泉は上に溜まるので海の上に薄く温泉が広がっている状態になっており、実際海に入っていくと膝上まで浸かった頃から足元から冷たい海水が上がってきた。

硫黄島港の様々な不思議に思わず感動してしまった。

硫黄島港の北側の西奥に赤茶けた浜が広がっている。集落からは200mほどの距離にあるこの長浜は、浜辺そのものが人肌程度に温かかった。

干潮時の波打ち際を掘ると、すぐに赤茶けた熱めのお湯が溜まりはじめる。しかし砂礫や石の多い浜であり、スコップを使ってもなかなか上手く掘れない。ゴム引きの軍手を装着して仲間とともに手掘りとスコップで阿吽の呼吸で共同作業して湯船を作る。

大きな石が掘り出せた時には思わず皆で喜びながら、なんとか寝湯ができる大きさの湯船を掘ることができた。

湯船が大きくなるに従って地中から海水が混じって適温になっていく。溜まっていくお湯は海よりもはるかに濃い赤茶色であり、海水パンツも手袋もまるで染物のように赤茶色に変色していく。とても濃い温泉の強烈な色であり、これまでに経験した最も赤い湯船となった。

赤い浜の向こうには緑の森が広がり、その奥に硫黄岳が聳える絶景の中、全身染色の湯浴みを楽しんだ。

さて、今回はこの辺で結びとしよう。しかし、野湯天国・薩摩硫黄島の温泉紹介が2つのみな訳がない。

ということで次回も薩摩硫黄島の野湯をご紹介する。

※国土地理院(電子国土Web)にスポットを追記

■東温泉
■住所:鹿児島県三島村硫黄島
■アクセス:硫黄島港から徒歩で約45分

■長浜温泉
■住所:鹿児島県三島村硫黄島90-61
■アクセス:硫黄島港から徒歩で約5分

 

TEXT:瀬戸圭祐
PHOTO:瀬戸圭祐、木下滋雄、尾山慎一

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※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

【筆者】瀬戸圭祐

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    アウトドアアドバイザー、野湯マニア。NPO法人・自転車活用推進研究会理事。自動車メーカー勤務の傍ら、自転車・アウトドア関連の連載、講座などを数多く行っている。著書に、全国各地の野湯を訪ね歩いた冒険譚『命知らずの湯』(三才ブックス)、『快適自転車ライフ宣言』(三栄)、『雪上ハイキングスノーシューの楽しみ方』(JTBパブリッシング)などがある。2024年5月現在、足を運んだ野湯はトータルで約110湯。
    >>ウィキペディア(Wikipedia)

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