更新日: 2024年11月27日
西上州の遅い秋、電車でお手軽な日本一きれいなハイキングコース「神成山九連峰」をノンビリゆっくりと完登する
群馬県の南西部を占める「西上州」という山域、皆さんはどのような山々を想像されるでしょうか?
ネガティブなイメージとして、
・荒船山や妙義山以外は知名度が低い山ばかりで登山者が少ない。
・妙義山のように険しい岩稜や薮が連なりほとんどが中級・上級レベルで初級者にはとても近づきがたい。
・ルートが不明瞭で道迷いや遭難が心配。
・公共交通機関での登山が難しい。
等が挙げられますが、そんなことはありません。初級者で登れる山がいくつもあります。
その代表格として今回は富岡市の神成(かんなり)山を紹介しましょう。公共交通機関のローカル私鉄「上信電鉄」を利用できますよ。
執筆・写真:山と高原地図21西上州 田中雅史
目次
1.神成山について
神成山は東西に2キロ程延びる山々と云うより丘陵のような山容で、主に9つの峰が連なっており、ふもとの集落の信仰の場となっています。
祭祀物(石碑や石祠、石仏等)が数多くありますが、一昔前までは登山道といえばふもとから祭祀物までの参道程度で、東西を貫く登山道は30年ほど前までは存在しませんでした。
実際、私が若い時(30年以上前)ヤマツツジの奇麗さに興味を持ち、西側から縦走を試みた事がありましたが、藪が凄まじく眼鏡を枝に弾かれた記憶があります。
その後、地元の方の厚志で西側の新堀神社と東側の宮崎公園を貫く登山道が整備され「日本一きれいなハイキングコース 西上州 神成山 九連峰」として世に出ることとなります。
また、上州は武田と上杉の勢力争いの地、あちこちに山城が築かれましたが、神成山九連峰にも宮崎城・神成城・吾妻山の砦等の山城の跡があり、その痕跡があちこちで見られます。
2.登山口まで
首都圏からはJR高崎線、高崎駅で下車、ローカル私鉄の上信電鉄に乗り換えます。
心地よい揺れを感じながら、左右の西上州の低山を眺め、真っ正面の鹿岳・四ッ又山を目指し、50分ほどの乗車し神農原(かのはら)駅で下車します。
神農原駅は単線の無人駅ですが、ホームには神成山ハイキングコースの案内図が目に入ります。
さて駅から車道を北上しますが、駅前からハイキングコースの案内板が登場、同様の案内板がこれからの山行のお伴になります。
宮崎公園の前を通過しますが、宮崎公園は春にはツツジ等が綺麗に咲き誇ります。
また東側には旧茂木家住宅(板葺民家建築として国の重要文化財に指定)があり、建築に興味のある方は見学されると良いでしょう。
登山口までは坂を登り、丘陵にでれば畑が広がります。
2.いよいよ神成山九連峰、全山踏破の旅へ
登山口は中学校の北側にありしばらくは学校の北縁に沿って歩きます。
部活動等で生徒がいる場合、「こんにちはー」と声をかけてくれますので、思いっきり「こんにちはー」と返事しましょう!子供たちに声をかけられると足取りが軽くなりますね!
学校を越えると竹林や雑木の登山道になり、城郭跡の堀切や曲輪が目に入ります。
そして地蔵様、不動様、石碑等が次々に現れます。
登山道脇に「見晴台」なる表示がありますが、現在は木が茂ってしまい、展望は大した事はないですが、これから先も展望が開ける場所が多いので、がっかりしないでください。
「見晴台」すぐ先には城郭の深い堀切があり左右に峠道が横切ります。
暗めの登山道を抜けると段々の平地が広がりますが、神成城址です。
初夏にはキンラン等の山野草が見られます。
「一峰」の表示に従い左手へと進むと展望が開けP1に到着、目の前に稲含山が聳えています。
引き返してメインルートを進むとまた堀切に左右に峠道が横切ります。それどころか数メートル奥の左手側には宇芸神社への下山道、その先にはP2を巻く道が分岐し、確実にメインルートを選択しましょう。
そして急登を登り切ればP2の龍王山に到着で、東側の展望が開け、牛伏山が印象的です。
ベンチに腰掛けて小休止。1杯のお茶が美味いですね。
一休みした後にP2を西へ下ります。脇道が何ヶ所か分岐しており、道標に従い踏み跡のしっかりした道を下りましょう。
ふと、ガタゴト上信電車の音が聞こえてきます。見下ろすと鉄道模型のような風景が広がります。
松の木が茂るP3を越えて、広い広場のようなP4に達します。
P4は宇芸神社の跡地で「ミニ自然博物館」なるショーケースに様々なものが展示されていて、神成山の名物といってよいでしょう。
更に西進すると石祠のあるP5、石碑のあるP6(打越御嶽山)からは北側にある集落へと古い参道が分岐しています。明瞭な尾根道なので迷い込まないように気をつけましょう。
先に進むに連れて登山道が粘土質から小石混じりの礫に変わっている事に気付かれることでしょう。この先は石車に乗って滑らないように注意して先を進みます。
P7、P8は何気ない小ピークで巻き道もありますが、10mもない標高差なので、ピークを踏んで神成山九峰コンプリートを目指しましょう。
P8を越えてすぐに休憩舎「山カフェドローム」が目に入ります。
いわゆる「屋根付きベンチ」と云ったところでしょう。こんなスタイルの休憩舎は見たことありませんよね。
とにかく西上州の山々(鹿岳、四ッ又山等)が一望できますので、座って休憩しないと損です。メニューでは全て「¥0」と表示されていますので。
休憩後は5分とかからず最期のピークP9(吾妻山)に着きます。頂上には石祠が置かれ、展望も開けます。
P9を後にしますが、下りの参道は塹壕状に掘れていて小石が散らばり滑りやすいので注意深く下ります。
しばらくして神成山の西登山口といってもよい新堀神社の前に降り立ちます。
新堀神社の中をのぞき込むと嘉永二年の年期の算額が奉納されています。算額といえば和算の大家「関孝和」を彷彿されますが、関孝和の墓は近くの藤岡市にあり、多少の関連はあったことでしょう。
3.下山後は南蛇井駅への道も楽しもう!
下山後は南蛇井(なんじゃい)駅へ向かいます。
T字路の右手は昔「大サボテンの家」があり、バカでかいサボテンの木が名物でしたが、数年前に伐採されてしまいました。
T字路を左折してすぐに下山後最初の公衆トイレがあります。畑の中の車道をトボトボ歩き、ふと振り返ると神成山が見えますが、南側は崖状である事に気付きます。
また手前の畑のネギは「下仁田葱」で別名「殿様葱」とも呼ばれ、太くて短いずんぐりした姿が特徴で、加熱すると甘味が引き出されてやわらかい食感であり、年末の鍋料理に最適です。(ホントに美味しいです!)
買って帰りたいところですが、葱の匂いが電車内に篭ると思うと遠慮してしまいますね。
難読駅名として有名な南蛇井駅までは何ヶ所か左へ右へ車道を曲がりますが、道標がたっていますので迷うことはないでしょう。
南蛇井駅はまるで昭和の雰囲気で、ベンチに腰掛けて列車を待ちます。
やがて電車が四ッ又山や鹿岳をバックに入線、高崎へ向かう車窓からは先ほど歩いてきた神成山の峰が望めます。
神成山はこれからが登山に適した季節となります。たまには電車での山旅はいかがでしょうか?
4.その他の情報
・神成山はゆっくり歩いても2、3時間程度で縦走できてしまいます。
丸一日の予定の場合は上信電鉄1日フリー乗車券(2260円)やぐんまワンデーローカルパス(2500円)を是非利用しましょう。
下仁田駅周囲の低山(御岳山等)、千平駅より鍬柄岳、富岡市内散策(富岡製糸場等)、吉井駅・山名駅から無料巡回バス「上野三碑めぐりバス」を利用して世界記憶遺産の上野三碑や高崎自然歩道をめぐることもできます。
・宮崎公園の駐車場は10台程度です。満車になることもしばしばです。経営の苦しい上信電鉄を是非利用してください!
・春にはP9付近にオキナグサが見られます。宮崎公園のツツジ、神成山にもミツバツツジが咲きます。
・夏には古代蓮の里の蓮の花が見事です。また神成山の北にある丹生湖畔のひまわり園は8月上旬が見ごろです。
・神成山の紅葉の見ごろは11月下旬から12月上旬頃です。
5.神成山を【山と高原地図】で楽しもう!
本登山には、登山ルートの計画作成や現在地の確認ができる「山と高原地図」アプリを使用しました。
アプリには2種類あります。
・月額、年額課金で山と高原地図63エリア分の登山コース情報がダウンロードし放題の「山と高原地図ホーダイ」
・1エリア分を購入してダウンロードできる「山と高原地図(コンテンツ課金版)」
アプリ名称、アプリのアイコンが似ているので、間違わないように注意しましょう。
アプリアイコン | ||
アプリ名称 | 山と高原地図 | 山と高原地図ホーダイ |
料金 | DL1回につき650円(税込) | 月額500円(税込)もしくは 年額4800円(税込) |
DLできる登山地図 | 1回のDLで山と高原地図1エリア分をDL可能 | 山と高原地図全63エリア分をDLし放題 |
登山計画作成機能 | × | ○ |
ダウンロード ※ロゴをタップすると各ストアに遷移します |
6.今回歩いたコースはこちら
START:神農原(かのはら)駅
→ハイキングコース入口
→見晴台
→神成城址
→P1
→P2龍王山
→P3
→P4宇芸神社跡地、ミニ自然博物館
→P5
→P6打越御嶽山
→P7
→P8
→休憩舎「山カフェドローム」
→P9吾妻山
→新堀神社
GOAL:南蛇井(なんじゃい)駅
※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。
【筆者】山と高原地図 編集部
『山と高原地図』シリーズは、1965年より毎年発行、登山を楽しむ方に長く親しまれ続けているロングセラー登山地図。深田久弥による「日本百名山」をすべて収録し、主要な山岳エリアを網羅しています。
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