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ヒグマとツキノワグマはどちらが怖い?全国でクマ出没激増中!被害に遭わないために知っておきたいこと【vol.01 生態編】

まっぷるアウトドア編集部

更新日: 2024年7月31日

ヒグマとツキノワグマはどちらが怖い?全国でクマ出没激増中!被害に遭わないために知っておきたいこと【vol.01 生態編】

クマに出遭わないよう、また襲われたりしないようどのような注意が必要なのでしょうか。まずは、クマの種類や生息エリア、生態や出没状況について基本的な情報を知っておきましょう。

市街地出没や人的・農作物被害などが年々増加

北海道東部に出没した「OSO18」、秋田県鹿角市に伝わる「スーパーK」など、家畜や人を襲ったクマのコードネームがニュースで頻繁に報じられるようになった昨今。市街地出没や人的被害、農作物被害などの熊害(ゆうがい)事件数は、年々増加の一途をたどっています。
国の対策が求められていたなか、環境省はこの4月、省令を改正してクマ類を「指定管理鳥獣」に指定(四国の一部を除く)したばかりです。

これまで以上に、人とクマとの距離が縮まっている状況下でアウトドアを楽しむとき、たとえ山の奥深くへと立ち入らない場合でも、クマに出遭うことは想定しなければなりません。自身や家族、友人たちの安全確保のためにもそれは大切な心掛けです。

北海道のヒグマと本州のツキノワグマ

国内に生息するクマは2種類。日本でいちばん大きな陸の動物といわれるヒグマは北海道全域に生息しており、本州・四国には黒い毛で、胸に白い三日月形の模様のあるツキノワグマが生息しています。

1940年代、九州のツキノワグマの生息数がゼロになり、四国は徳島県、剣山系の狭い範囲に20頭前後が残るのみとなっており、このエリアに関しては環境省レッドリスト2020で「絶滅のおそれのある地域個体群」とされています。

四国より北、本州に生息するツキノワグマは胸の白い三日月模様が特徴

体の大きさは、ヒグマのオス成獣が200~大型で400kgくらい、メス成獣が100~大型で200kgくらいです。一方のツキノワグマのオス成獣が60~100kg、メス成獣が40~60kgくらいで、どちらの種類も行動範囲はメスよりも、オスの方が10~100倍とかなり広範囲にわたります。

北海道に広く生息するヒグマはツキノワグマよりも大型

その個体数はというと、ヒグマは現在約1万頭以上、ツキノワグマは約3~5万頭と分析されています。しかし、クマが生息する山奥は見通しが悪くて姿を確認しづらく、クマはシカのように開けた場所に群れで出てくることはないため、実数を正確に把握することは専門家でもとても難しいといいます。

クマは基本的に草食動物だが肉も食べる動物

どちらの種類も基本的な生活サイクルは同じで、一般的には初夏のころに繁殖期を迎え、冬眠入りが11~12月ごろ、冬眠明けが3~4月。妊娠したメスは穴の中で出産し、4~5月に穴から子どもとともに出てきます。クマが穴の中で過ごすのは5カ月ほどになります。

しかしその年の気象状況などによって、また積雪地帯か無積雪地帯か、緯度などによっても時期的なズレは生じます。

クマの冬眠穴は、ヒグマとツキノワグマは違いがあります。ヒグマは自分で土に穴を掘ることができ、雪などによって穴が隠れて一見してわからない場合も多いのですが、ツキノワグマは自分で穴を掘ることができず、岩の間の空洞や、木の根のすき間、樹洞など自然の穴を利用して冬眠します。

クマ穴で冬眠するヒグマ/写真提供:坪田敏男

クマの食べるものは、主にドングリ、コクワ、ヤマブドウなどの木の実や野草。雪解けとともに芽吹く新芽や柔らかい草、タケノコ類、山菜などのほか、アリやハチなどの昆虫、死んだシカやイノシシが山にいれば食べることもあります。もし、山の中で人が死んでいた場合、その区別はないので食べることもありますが、積極的に人を襲うことはないといわれています。

クマは基本的には草食ですが、雑食動物といえるでしょう。北海道では、飼料やデンプンに使われるデントコーンというトウモロコシをヒグマが好み、その被害額が甚大となっているほか、最近では家畜の牛が狙われる例も出てくるようになったことで、酪農家たちは頭を悩ませています。

ほとんどのクマは、人を避ける慎重で臆病な性格

そしてクマは臭覚が非常に発達しており、長く突き出た鼻の感度は、犬の6倍といわれています。クマは臭いをたよりに季節の食べ物を探し求めて歩く雑食動物。いろいろなことを覚える学習能力がとても高いといわれています。

そして、ほとんどのクマは「慎重で臆病な性格。人を避けてくれる動物」と教えてくれたのは、ヒグマ研究40年のキャリアを持つ、「ヒグマの会」会長・北海道大学獣医学研究院の坪田敏男教授です。

仕掛けた罠の調査/写真提供:坪田敏男

「ヒグマに関しては、道内に1万頭以上いると言われている中でも、重大事件を起こすのはほんの数頭。OSO18のようなクマは稀です。出没件数に関しては、確かに都会の札幌市でこの5年間を見ても常態的にクマは出没しています。昔よりも分布が広がり、個体数が増えている。そして人を怖がらない新世代グマも出現していることなどが、出没件数増加の要因だと思います。
とくに昨年は、ドングリの不作が拍車をかけました。クマが「指定管理鳥獣」になったことで国からの予算もつき、駆除が進むと思われますが、研究者としてはシカやイノシシと違ってクマは、単純に数を抑えたら被害が減るのかというと、そうはいかないと考えています」

出没数を減らすための管理が必要

「数を抑えるのではなく、まずは出没数を減らさなければなりません。その対策は、ハンター頼みでクマを撃つだけではなく、人間側がクマの管理をしっかり行うことです。
行政の中にクマの知識を持った専門家を配置して組織をつくり、その人材が最終的にはクマを撃てるだけの技術を持ちながら、駆除するのか、花火弾やゴム弾、あるいは本州が取り組んでいるような訓練を受けたベアドッグを使うなどの選択肢から、追い払いを行うのか現場で判断・対応する人材を育成することが求められます。とにかく、駆除だけでは出没件数を減らすことは難しいでしょう」(坪田教授)

特殊な訓練を積んだベアドッグは、強力な吠え声によりクマを追い払う/写真提供:NPO法人ピッキオ

これから行政も、本格的にクマ対策に乗り出すと思われますが、全国で体制がしっかり整うまでは時間がかかります。アウトドアを楽しむ一人ひとりが、身近な自然の中にいつでもクマはいることを意識することが事故を防ぎ、またクマを守ることにもつながります。

TEXT:兼子梨花

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