更新日: 2024年9月15日
【長野】白駒池でハイキング!雫が滴るコケの回廊・もののけの森を歩く
せっかくのお休みなのに雨模様……。天気が微妙だと、お出かけの計画が立てづらいですよね。梅雨時期ももうすぐやってきますし、ここは雨を味方につけて楽しんでしまいましょう!
雨の時こそオススメしたいのが、鬱蒼とした樹林を歩くハイキングです。木々が雨を遮ってくれるので歩きやすく、しっとりとした風情を味わうことができます。
特に今回ご紹介する長野県の「白駒池」周辺は、樹林帯の中に数百種類のコケが繁茂する神秘的なエリア。霧雨によって緑が潤い、雫が滴る様子はまるでジブリ作品に迷い込んだような世界観を見せてくれます。
目次
白駒池周辺を歩くハイキングコース
ハイキングの起点となる麦草峠( むぎくさとうげ)は、日本の国道の中で標高第2位を誇る場所(標高2,127m)。北八ヶ岳と南八ヶ岳を分ける峠道で、「メルヘン街道 」の愛称で親しまれています。
東京から麦草峠までは、中央自動車道を通って車で約3時間 。諏訪南ICで降り、国道299号線に接続します。大阪からは6時間ほどかかります
麦草峠は八ヶ岳登山の拠点として重宝され、5月〜11月には多くのハイカーが入山することでも有名です。登山初心者向けのコースが充実しており、コースを選べば誰でも心山歩きが楽しめます。
初心者向けのコースの中でもオススメしたいのは、白駒池周辺をぐるりと巡るコースです。所要時間は平均して4〜5時間。半日程度を見ておくとよいでしょう。
途中に丸山 ・高見石(たかみいし)などの山頂を踏み、幻想的なコケの森、眺望の開ける白駒の奥庭など、変化に富んだ景観も魅力です。今回は麦草峠を起点に、ぐるりと反時計回りに一周するコースをご紹介していきます。
■コース概要
麦草峠駐車場→(5分)→麦草ヒュッテ→(30分)→丸山の森→(15分)→丸山→(30分)→高見石小屋→(5分)→高見石→(5分)→高見石小屋→(20分)→高見の森→(10分)→白駒池→(10分)→もののけの森→(5分)→青苔荘→(10分)→白駒の奥庭→(5分)→黒曜の森→(10分)→麦草ヒュッテ→(5分)→麦草峠駐車場
白駒池キャンプ指定地
- 住所
- 長野県南佐久郡佐久穂町畑3220-46
- 交通
- 中部横断自動車道八千穂高原ICから国道299号を麦草峠方面へ、峠の手前右手に駐車場、八千穂高原ICから25km
- 料金
- サイト使用料=大人800円、小学生650円、トイレ使用料1人100円/
白駒池ハイキングの見どころ① 登山者が少ない「丸山の森 」でコケの森を独り占め
それでは、麦草峠からハイキングのスタートです。途中に麦草ヒュッテ を経由し、5分も歩けば分岐が現れるので、標識に従って丸山方面へ進みましょう。スタートポイントである麦草峠からの道のりは標高差が少ないため、良い足慣らしになりますよ。
分岐から5分もすると、周囲には針葉樹のコメツガ やシラビソ などが覆いかぶさり、針葉樹林の原生林へと入ります。 林床には緑鮮やかなコケがびっしり。雨に濡れて青々としている様子を楽しみながら進みましょう。
スタートから35分ほどで第一ポイントの「丸山の森」へ到着です。
丸山の森を含むこの八ヶ岳山麓は、日本に生えるコケの4分の1以上が生息していることで知られています。その種類は実に485種類!2008年には日本蘚苔類学会( にほんせんたいるいがっかい)より「日本の貴重なコケの森」 として選定され、保護されているエリアです。
通常、登山やハイキングは晴れている日に行くことが多いですが、ここではむしろ、霧が出ており、少し雨が降っている日のほうがコケの風情を楽しむことができます。
雨に洗われて潤いに満ち、緑が溢れる林床は、いつまで眺めていても飽きない極上の癒し空間なのです。
中でもこの「丸山の森」はハイキングコースの一番外れにあるため、ハイカーが少なく、手付かずの自然を独り占めすることができます。雫滴る瞬間や、朽木に添えられるコケ、数種類のコケが織りなす絨毯など、コケのミクロな世界に引き込まれることでしょう。
丸山の森を登りきった場所が、丸山山頂です。ここからあとは下り基調。眺望はほとんどないため、サクッと通過しましょう!
白駒池ハイキングの見どころ② 岩峰・高見石の山頂を経て、霧雨で輝く「高見の森」 へ
美しい原生林とコケが織りなす景色を楽しみながら、丸山より30分ほど進んでいくと、二つ目の山頂「高見石」周辺に到着します。赤い屋根の高見石小屋が目印です。
写真からもわかるように、登山道は岩の上を歩く道となっており、雨の日は特に滑りやすいので注意が必要です。石の上より、できるだけ雨で固まった砂の上を歩く方が滑りづらくなりますよ。
高見石はその名の通り、樹林帯より少し高台に位置する展望岩。眼下に見える白駒池をはじめ、八ヶ岳の眺望、北アルプスなどが広がり、北八ヶ岳随一の展望台として親しまれています。
霧が出ているときには、白駒池が浮かび上がる幻想的な風景も楽しめます。山頂で天候が悪いとがっかりしてしまいますが、太古の自然が根付く八ヶ岳では、天候が悪いときでも味わい深い景色が見られます。
高見石の山頂を辿り着いたら、白駒池まで降りていきましょう。この区間は徒歩30分ほどです。
途中、「高見の森」というポイントを通るのですが、ここが本当に絶景!角度のついた道には、視野いっぱいに美しい樹林とコケの緑が広がります。霧雨に洗われた後、一層鮮やかとなった風景を前に、思わず立ち尽くしてしまうでしょう。
随所に見られる倒木も、この原生林の中ではまるで一つのオブジェのようで絵になります。
白駒池ハイキングの見どころ③ 白駒池の畔を歩き、八ヶ岳が誇る「もののけの森」に出会う
高見の森から10分ほど下り切ったところで、白駒池畔を歩くハイキングコースと合流。
この「白駒池」は、背後にある白駒峰が噴火してできた堰止湖(せきとめこ) で、標高2,000m以上にある池としては国内最大規模を誇ります。池畔の道からのぞく、対岸の原生林の風景が印象的です。
合流地点から400m、10分ほど歩くと池の北東部にたどりつきます。そこから少し池畔をそれて、再び樹林帯へ入っていきましょう 。 ここは「もののけの森 」と呼ばれる、白駒池を代表する景勝地 。ゴツゴツした溶岩の地面や、原生林の根を覆うように、コケがびっしり繁茂しています。
まるで神々が住んでいそうなこのスポットは、どこまでも静かで神秘的。太古から根付いている自然の力強さと美しさが感じられます。ひとたび深呼吸をすれば、自然のパワーが体に流れ込んでくるような気持になりますよ。
もののけの森から道なりに進んで行くと、高見石小屋に続いて、二つ目の山荘「青苔荘(せいたいそう) 」に到着です 。この山荘は、多くのハイカーに長年愛されている八ヶ岳登山の憩いの場。その証拠に、山小屋の中にはハイカーたちの写真がずらり!
青苔荘ではお菓子や飲み物を購入できるほか、食事をすることもできます。特に、ゴロゴロとした野菜がたっぷりと入った濃厚なカレーが絶品です!
白駒池ハイキングの見どころ①④「白駒の森」でコケの回廊の情緒を味わい、奥庭・黒曜の森へ
青苔荘で一息ついたら「白駒の森 」を通過する木道を歩いていきます。麦草峠 でもっとも人通りが多い道とあって、とても整備されているのがポイント!
整備されているとはいえ、原生林やコケの見応えは損なわれていません。むしろ、木道と周囲の景色の調和が素晴らしく、巨木の樹肌が見えなくなるまで繁茂するコケの群生が神秘的です。
木道に沿って歩いて行くと、一区間だけ、雰囲気の異なるポイントが現れます。ここは「白駒の奥庭」と呼ばれるスポットで、森林限界* を彷彿させる低いマツや、シャクナゲが群生しているのが特徴です。
鬱蒼とした森だけに開放感が引き立ち、「秘密の場所」という言葉がぴったり。美しい原生林が絵画のように広がっています。
*森林限界:高い木々が生えなくなる限界となる標高(高度)のこと
そして麦草峠へ戻るまでのラスト区間、「黒曜の森 」へ進みます。こちらもコケの風景が楽しめる場所ではありますが、面白いのは「黒曜石」がたくさん落ちているということ。
黒曜石とは、旧石器時代や縄文時代に石器の素材として使われた石のこと。雨によって洗われると石の光沢が分かりやすく、すぐに見つけることができますよ!
黒曜の森を抜けたら、麦草峠の駐車場に到着。これにてハイキングは終了です。
白駒池は雨中ハイキングがオススメ!
晴れている日には、高見石からアルプスの絶景や木漏れ日の原生林が楽しめます。そして雨の日には、潤いに満ちたコケの林床を味わいつつ、神秘的な日本の美を感じられることでしょう。
八ヶ岳・白駒池周辺のハイキングなら、普段歩き慣れていない人でもしっかり準備をすれば大丈夫。今回ご紹介したハイキングコースの中継ポイントは、そのほとんどがGoogleマップに登録されていますので、安心して計画が立てられますね!
天候や密の心配なく楽しめるハイキング。ぜひお試しください!
※備考
・あらかじめ記載した登山届を登山口のポストに提出しましょう。
・トイレは駐車場のトイレで済ませておくと安心です。途中の山荘でもトイレが利用できます(有料)。
・歩きやすい服装と、スニーカー以上の靴で臨んでください。
・降水確率が30%以上の場合は、レインウェアの持参をお勧めします。
・食料や水分は途中の山小屋でしか買えないので、十分に持参しておいてください。
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