更新日: 2024年12月26日
「三島宿」への箱根西坂は下りでもハード 東海道五十三次ちょこっと半日ハイキング【vol.03 箱根宿~三島宿】
江戸と京都を結ぶ、東海道に置かれた53の宿場町。現在では街も道路もすっかり開発されてしまいましたが、部分的には歴史の面影を感じながら自然の中を歩くコースなども残っています。
今回は、箱根宿があった芦ノ湖を出発して三島宿へと向かう、箱根峠越えの西坂コースです。
歴史×ハイキングを満喫できる日帰り旅へと出かけてみませんか?
朝の美しい芦ノ湖を見て箱根峠へと向かう
江戸と京都を結ぶ、東海道に置かれた53の宿場町。現在では街も道路もすっかり開発されてしまいましたが、部分的には歴史の面影を感じながら自然の中を歩くコースなども残っています。
今回は、箱根宿があった芦ノ湖を出発して三島宿へと向かう、箱根峠越えの西坂コースです。
歴史×ハイキングを満喫できる日帰り旅へと出かけてみませんか?
朝の美しい芦ノ湖を見て箱根峠へと向かう
JR小田原駅からバスに揺られること約55分。バスは芦ノ湖湖畔の「元箱根港」バス停に到着します。天気が良ければ、芦ノ湖の向こうには富士山の姿が望めます。
前回の小田原から箱根宿までのコースのゴール地点だった芦ノ湖。今回はここからスタートします。海賊船を模した遊覧船や、カラフルなスワンボートが浮かぶ湖の景色を堪能したら、まずは国道1号を南へ進みましょう。
少しすると、「箱根旧街道一里塚」の碑が現れ、旧東海道は樹齢400年近い杉の木が連なる杉並木の道に入っていきます。木陰が心地良い、約500mの道のりです。
10分も歩かないうちに、道は再び国道1号に戻り、目の前に恩賜箱根公園の広い駐車場が現れます。その先に続く道を行くと「箱根関所資料館」が建っていて、その向こうに、江戸時代の箱根関所が復元されています。
江戸時代は東西を行き交う旅人を取り締まり、「入鉄砲に出女」が厳しくチェックされていた場所です。「入鉄砲」は江戸へ鉄砲が持ち込まれること、「出女」は大名の妻女が江戸から国元へ逃亡することです。関所でこれらを厳しく取り締まることで、幕府の力の維持を図っていました。もちろん、今の時代は女性の一人旅でも気軽に通り抜けることができます。
箱根関所を抜け、飲食店や土産物屋の並ぶ通りを通過すると、道はまたも国道1号へ。この辺りの風景は見覚えのある人も多いのではないでしょうか?
ここは、毎年1月2・3日に開催される「東京箱根間往復大学駅伝競走」、通称「箱根駅伝」のコースとなっている道だからです。
右に曲がればまさにゴール地点という交差点をそのまま直進。県道737号と交わる地点で県道の方へと右折すると、周囲には住宅が増えていきます。
間もなく、左手に「箱根駒形神社」の鳥居が姿を現します。小ぢんまりとした神社ですが、なんだかとても心地のよい空間です。境内には、江戸時代初期に箱根宿をつくっているときに、周辺の狼から人々を守ってくれたとされる2匹の唐犬(からいぬ)を祀った「犬塚明神社」もあります。
数年前に立ち寄った際には、人懐っこい白い大きな犬がいて、祀られている唐犬の化身かと驚いたこともありました。白い犬は、どうやら地元の人の飼い犬だったようです。
神社を過ぎると旧東海道は、周りを木々に囲まれた石畳の道へと入っていきます。箱根の東坂ほどではありませんが、それなりにきついのぼり坂です。懸命にのぼっていると、後ろから足音が近づいてきます。なんと、この坂道を駆けのぼってくる男性がいるではないですか。「こんにちは」とあいさつを交わすと、男性は軽々と追い越して行ってしまいました。
坂をのぼりきると、本日何度目かの国道1号への合流。この三島宿へ向かうコースは国道と旧街道の行ったり来たりが続きます。近くには箱根新道の箱根峠ICもあることから非常に交通量が多く、道路を渡る際は十分に注意しましょう。
ここまで来れば、箱根峠の最高到達点はもうすぐ。あとは下るだけです。
箱根峠西坂は下りでもなかなかハード
箱根峠の上には公衆トイレなどが設置されている箱根エコパーキングがあります。旧街道はここから国道を離れ、「茨ヶ平(ばらがだいら)・石畳入口」から石畳の道へと入っていきます。道の両脇が笹に囲まれて薄暗く、まるでトンネルのようになっています。趣のある道です。
しかしながら、2019年の台風19号の影響で、「茨ヶ平・石畳入口」から「接待茶屋跡」までの道は通行止めになってしまいました。2024年8月現在も、道は復旧せず通行止めのまま。残念ながら、迂回路となっている国道1号を進むしかありません。
「接待茶屋跡」の案内板近くに、「山中新田一里塚跡」の碑が立っています。ここから国道を離れ、石割坂を下っていきます。木々が鬱蒼とし、両脇に笹も密集しています。
近年は、箱根周辺でもクマの出没情報があるので、こうした道を歩くのはちょっと不安。熊鈴などを持って、できるだけ一人では歩かないようにするのがいいのかもしれません。
こういう時、前後にほかの東海道歩きの人たちがいると、ホッとしますね。
道の前方が開けてくると突然民家が現れます。花がきれいに咲き誇る庭先の道を通り抜け、国道を横断するとさらに先に旧街道の石畳が続きます。
道中に現れる「山中城跡」を見学
石畳を通過すると、やがて「山中城跡」が現れます。住宅街の道路をくだり、大きな通りに突き当たると、その脇には「山中城跡公園」の駐車場があります。
「山中城」は豊臣秀吉の小田原攻めの際に攻め落とされた北条氏の城です。見学が可能で、格子状の障子堀があることで有名。時間に余裕があるのなら、ぜひ立ち寄ってみましょう。
城跡は道路で二分されていて、駐車場側には本丸が、道路を挟んだ売店側には出丸という城から出っ張った部分が広がっています。まずは駐車場の奥から続く道を行きます。道は途中で分岐し、本丸や二の丸などさまざまな場所を巡れるようになっています。
障子堀がよく見えるという西の丸へと向かいます。物見台だったという少し高い場所へ上がれば、見事に格子状に造られた堀を見下ろすことができます。その日はガイドの人がいたので、解説を聞くことに。今は、木が植わっていて見づらいですが、右手には駿河湾が広がっているのだそう。当時はこの物見台から、駿河湾の方から攻めてくる豊臣軍が見えたのだとか。
下の方に降りて、横からも堀を見てみます。上からだとそれほど深そうには見えなかった堀もだいぶ深く感じられ、一度落ちたらのぼるのは大変そうだな、と当時の城づくりに感心したのでした。
ぐるりと城跡を巡ってから駐車場へ戻り、道路を渡ったところにある売店へ。ここでは軽食も食べられるので、そばで昼食にすることにしました。
昼休憩ののち、「山中城跡」の脇を通る旧街道の石畳を進みます。石畳が途切れ国道に出ると、道の向こうに大きな建造物が現れました。2022年にオープンした「ドラゴンキャッスル」です。「山中城」近くに建っていて“キャッスル”とは言いますが、城とは似ても似つかないシロモノ。大人も子供も楽しめるアスレチック施設だそうです。アスレチックで遊ぶ人たちの歓声が聞こえ、急に現代に引き戻された気分になります。
つづら折りの国道を串刺しにしたように通る旧東海道を下っていきます。何度目かに国道に出たときに、向こうに巨大なつり橋が見えました。これは、「三島スカイウォーク」という観光施設です。近年、この辺りは新たな観光地としてにぎわっているようです。
やがて周囲に民家が増え始め、旧街道は集落の中を行くことに。「こわめし坂」とも呼ばれた箱根峠西坂随一の難所が現れます。とにかく坂の勾配がキツイ。西へ向かう旅人からしたら下り坂になるので楽に思えるかもしれませんが、前につんのめらないように足をふんばるので太ももやふくらはぎがパンパンになってきます。
「こわめし坂」の名前は、旅人の背負った米が汗で蒸されて強飯(こわめし)のようになってしまうことからついたともいわれています。それも納得の急坂です。案の定、翌日にはひどい筋肉痛に見舞われました。
道が平坦になるころに三島宿へ到着
旧街道は、しばらく高台に広がる集落の中を進みます。前方を望むと、眼下には三島市の市街地が見晴らせ、右手を見ると見事な富士山の姿が。このあたりに住む人は、当たり前のようにこんな素晴らしい景色を毎日見ているのかと、ちょっとうらやましくなりました。
いくつかの集落を抜け、本日何度目かの国道1号への合流。ここまで来たら、ゴールまではあと一息です。車道に沿って復元された石畳を歩きます。
周囲にはやがて店舗やビルなどが増えてきて、市街地に入り人通りも増えてきます。しばらく行くと「三嶋大社」が見えてきました。源頼朝も崇敬したとされる、歴史ある神社です。
大きな鳥居をくぐると、広い境内にはたくさんの参拝客が行き交っています。訪れた日は、社殿の前で儀式が行われていて、その様子は写真撮影も禁止という厳かな雰囲気。こうした珍しい光景に出会えるというのも、旅の魅力です。
お参りをすませて神社を出ると、周囲にある三島市名物のうなぎの店が目に入り、食欲がそそられます。旅の〆にうなぎ料理に舌鼓を打つのもおすすめです。
「三嶋大社」からJR三島駅までは徒歩約15分。駅に到着したら箱根の西坂ルートの旅は終了です。
次は、美しい富士山の姿が望める薩埵峠コースです。
<データ>
■箱根宿~三島宿
【距離】約14.7km
【所要時間目安】約6時間
※国土地理院(電子国土Web)にスポットとルートを追記
※ルートは本記事のものです。一部、旧東海道とは異なる場合があります
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※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。
【筆者】加藤きりこ
SNS
秋田県生まれ。編集プロダクションで旅モノ、歴史モノ、交通系を中心に書籍の制作に携わり、現在はフリー。数年にわたり東海道五十三次を歩く旅を続けており、全宿踏破を目指している。2023年にようやく半分の袋井宿を通過し、今も京都を目指して西進中。