トップ >  中国・四国 > 

7■アイデア勝負で駅弁界をリード 近畿エリア

続いて近畿。このエリアを幅広く網羅するのは、神戸市「淡路屋」の駅弁です。昨年は『JR貨物コンテナ弁当 すきやき編』が大ヒット、今回は待望の姉妹品『明石の鯛めし編』が登場して再び注目を集めました。
器のモチーフは、鉄道コンテナ輸送50年を記念して作られた黄緑色の特別塗装「19D形式コンテナ」。ファンの間では “幸せの黄緑コンテナ” として親しまれているそうです。ワゴンに積み上げられたコンテナ弁当は壮観! プレスリリースの情報が瞬く間に拡散し、販売開始が待たれた商品とあって、駅弁大会でも初日は開幕と同時に売り切れていました。

近畿エリアの中でも、大阪の駅弁は関東であまり知られていません。“食の都” ともいわれる大都市にしては、不思議な気がします。
その中で燦然と名を残しているのが、老舗の味を今に継ぐ大阪割烹弁当、新大阪駅『八角(はちかく)弁当』1,200円。1975年(昭和50年)発売のロングセラー商品です。特に煮物の味わいが秀逸で、高野豆腐やお茄子の “炊いたん” を口に含んだときのジュワッという食感がたまりません。甘くない関西風の玉子焼き、黒胡麻をぱらりと振った俵型の白飯。器の “余白” もぜひ楽しんでください。
鉄道開業150周年記念の神戸駅『むかしの驛辨當(えきべんとう)』920円も、今大会で光った一品。昭和20年代の神戸の街並みを描いた掛け紙を復刻、ご当地ならではの牛肉煮、甘くない玉子焼き、たこの旨煮(これが絶品!)を盛り付けた、小さくて可愛らしい幕の内弁当です。今回は実演販売で買えましたが、通常は現地でしか販売していないお弁当。次に関西へ旅行したら、絶対また買いたいと思いました。

姫路駅は独特な『えきそば』も有名ですが、但馬牛やアナゴの駅弁のバリエーションも見逃せません。しかし、ここは敢えて定番のラインナップを離れ、『瀬戸内レモン鶏めし』1,100円はいかがでしょうか。会場でもひときわ目立つ黄色のパッケージ。盛り付けも現代的で、全国の数ある鶏めしの中でも毛色が違う洋風のアプローチが印象に残ります。「レモスコ」という、瀬戸内産のレモンと九州産の青唐辛子を使った液体調味料が味わいのポイント。和風な駅弁に飽きた方は、ぜひお試しを。
近江牛のブランドイメージが強い滋賀県の駅弁の中で孤軍奮闘していたのが、草津駅『近江蔵元醤油のとり天重』790円。鶏そぼろや海苔を乗せた白飯の上に、甘辛いタレを絡めたジューシーなとり天が4個。少し濃いめの味付けに食が進みます。発泡酒やハイボール缶と一緒に買っても千円くらい、しっかりお腹も満たすボリュームは、財布にも優しい一品。

8■多様な食材や食文化の競演が楽しめる 中国・四国エリア

中国・四国エリアは、日本海に面する鳥取・島根、瀬戸内海寄りの岡山・広島、その両方に面する山口、そして四国と、多様な食材や食文化の競演が楽しめる面白いエリアです。駅弁の種類も多く、名品も数々あるので悩ましい地域かもしれません。

駅弁大会でも、毎回、開店30分もせずに売り切れるのが、鳥取駅『ゲゲゲの鬼太郎丼』1.500円。お弁当としてもちろん美味しいのですが、毎年イラストが変わる有田焼の丼に、熱いコレクターがいると思われます。ご当地キャラクターの訴求力を活かした好例ですね。現在流通しているのは第11弾。猫娘やねずみ男など、人気キャラクター5人を配したデザインは、今年も人気を呼びそうです。
松江駅『島根牛みそ玉丼』1,280円も、催事を通じてその名が全国に広がった人気商品。『しまね牛すき焼きもろみ丼』1,320円は、もろみのふわっとした甘さが印象に残る一品。数ある牛肉の駅弁の中でも、いぶし銀的な個性を感じます。

岡山駅は、ダークシンカリオンやガチャピン・ムックなど、「三好野本店」が提供するお子さま向けキャラクター駅弁の種類が豊富。『超電導リニアL0系弁当』1,380円で、未来の乗りものに思いを馳せるのもいいですね。
福山駅や広島駅は、アナゴやカキの駅弁が目白押し。とくにアナゴは煮たり焼いたり、調理法によって食感も風味も大きく変わるので、食べ比べもおすすめです。『夫婦あなごめし』1,380円は、アナゴが2本並んで入った豪華版。その長さゆえ、両端を折り返して畳んであるのが嬉しいところ。付属のタレをかけて艶やかになったアナゴと醤油ごはんのハーモニーを堪能してください。
買いやすい価格帯から個性的な一品を選ぶとしたら、新山口駅『ふく寿司』1,200円もおすすめ。円いわっぱに、甘めの酢飯と色とりどりの具を乗せた可愛い駅弁です。厚めの身を酢で〆た淡白なフグがいい感じ。フグの駅弁は全国的に見ても希少なので、一度食べてみる価値があるのではないでしょうか。

四国の駅弁で忘れてならないのが、松山駅『醤油めし』880円。1960年(昭和35年)から続くロングセラーは、2018年に製造元が撤退。その後、岡山の「三好野本店」がその味を復刻・継承して現在に至ります。ほんのり甘い炊き込みごはんに錦糸玉子、赤いチェリーのワンポイントがキュート。小ぶりながら、華やぎのある一品です。今治駅『瀬戸内しまなみ海道ちらしずし』1,350円は、縁起のいい瓢箪型の器が印象的。四国の駅弁は東京で買いにくいので、駅弁大会で再会すると嬉しいものです。

9■角煮、ステーキ、炙り焼き。肉系駅弁が目白押し 九州エリア

ラストは九州。今回の大会では鹿児島県出水(いずみ)駅「松栄軒」の駅弁が多く、ぱっと見は肉系が優勢でした。とくに豚肉が頑張っています。角煮、ステーキ、炙り焼きと、心惹かれるキーワードが並んで悩ましいばかり。ボリュームのある駅弁を求める方は、ぜひ九州エリアを覗いてみてください。

そして、九州で忘れてならないのが「かしわめし」です。全国的には「鶏めし」が多数派ですが、ここ九州地方では、甘く煮た「かしわ」と錦糸玉子、刻み海苔の3色ストライプが美しい「かしわめし」が一般的。鳥栖駅の『かしわめし』740円は、1913年(大正2年)に販売を開始したロングセラー商品。鶏ガラを長時間煮込んだスープで炊いたごはんが最高! 筆者も大会初日の開店直後に並んだものの、会場に入った時点で既に2個しか残っていない人気ぶりを見せていました。
この『かしわめし』に、たっぷりのおかずを付けたアップグレード版『長崎街道 焼麦(しゃおまい)弁当』980円も見逃せません。容器の左半分に「かしわめし」、右半分にシュウマイが5個、さらに鮭や煮物、玉子焼きといった定番のおかずが隙間なく詰められていて、もちろんお味は最高! これだけの内容が楽しめるにもかかわらず、千円札でおつりがくる駅弁は、物価高騰の時代にあって他にそうそうないと思います。

駅弁大会にエントリーされる駅弁も、時代とともに新陳代謝し、古参の登場も少なくなりました。そんな中、忘れたくないのが新八代駅『鮎屋三代』1,350円。「九州駅弁グランプリ」で3年連続1位を獲得した名物駅弁です。焼鮎の出汁で炊いたごはんと、熊本・球磨川名産の鮎の甘露煮がまるごと一匹乗った迫力は他にありません。
同じく「九州駅弁グランプリ」で2015年(平成27年)に優勝した大分駅『山海三昧』1,600円も、九州駅弁の名品のひとつ。高級レストランを除き、ほとんど市場に流通しない「湯布院牛」のあぶり焼きをはじめ、豊後水道おしずし、椎茸バター焼にぎり、鳥天にぎりと、山海のうまいものを次々握って詰めた、見た目も美しい贅沢な駅弁です。価格は少し張りますが、中身の濃さを考えれば、お買い得ではないでしょうか。

しばらくお休みしていた「九州駅弁グランプリ」は、2022年(令和4年)暮れ、6年ぶりに復活。今年2月末のグランプリ発表に向けて、いま、まさにお客さま投票を受け付けている最中です。エントリーされた51種類の駅弁は、東京では買えないものが大半。西に東に、こうして駅弁の祭典が盛り上がると張り合いがありますね!

駅弁で日本縦断、おなかいっぱいになりまし……た?

「駅弁大会」で日本縦断駅弁の旅。旅気分をちょっぴり楽しんでいただけたでしょうか。各地の特色を活かした駅弁の中から、あなたのお気に入りの一品を見つけてください。

さぁ、今年も一年、駅弁とともに楽しい旅を続けましょう!

マルワ

1 2

中国・四国の新着記事

記事の一覧を見る

記事をシェア

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

駅弁大好き歴25年。平成の”Windows95”時代から某IT企業のインストラクターとして全国の官公庁・小中学校へのパソコン導入に携わりながら、各地の駅弁や名産品を食べ続けるうち「うまいもの」「みやげもの」で日本地図が描けるようになりました。これまで全国を旅して食した駅弁は2,000個以上、「駅弁大会」と聞けば連日通って“大人買い”、休日は朝昼夕と駅弁が食卓に並ぶような家庭です。時々ちょっと苦手な食材もありますが、そこはすべて「実食」してのルポがモットー。食味の感想には個人差がありますので、その点はご容赦ください。