更新日: 2024年9月9日
『すずめの戸締まり』聖地巡礼!九州~東北までおすすめのスポットをご紹介
新海誠監督による劇場用アニメーション映画『すずめの戸締まり』。
実在する風景を魅力的に切り取り、町や都市の「記録映画」としても大きな役割を果たしてきた近年の新海誠監督作品。今作は九州から東北まで、過去に大きな災害に見舞われた5つの地域を巡り、土地土地の記憶に向き合っていくロードムービーのような物語となっています。
センシティブな題材を直接的に扱っていることもあり過去作品と比べて明確にモデルが明かされていない部分も多いのですが、本記事ではSNS等からの推測情報も交えつつ、かいつまんで聖地をご紹介していけたらと思います。
※映画『すずめの戸締まり』のストーリーに言及しています。
※本作には地震描写および、緊急地震速報を模した警告音の流れるシーンがあります。
目次
物語は「九州」から始まる ▶『すずめの戸締まり』聖地巡礼
主人公の「鈴芽(すずめ)」は、九州で暮らす高校生。小説版や劇中の描写からは「宮崎県南部」であることが読み取れますが、地図アプリが示す位置などから、より詳細には「日南市」だろうと推測されています。
——「このあたりに、廃墟はない?」
通学中に声を掛けてきた“イケメンの人”を追って鈴芽が向かったのは、かつては栄えていたリゾート温泉街の廃墟。「特定」しがいのあるこの場面は、九州全体から複数のロケーションを合わせたものだろうと推測されているようです。いち早く公開されていた「冒頭12分」に含まれているため、『すずめの戸締まり』聖地としてSNS等でも多くの情報を見ることができます。
【湯平温泉(大分)/湯の鶴温泉(熊本)】『すずめの戸締まり』関連スポット
湯平温泉
『すずめの戸締まり』温泉街のモデルとして有力なのは、大分・湯布院の「湯平温泉」および、熊本・水俣の「湯の鶴温泉」。
提灯や石畳、特徴的な欄干の橋など、確かに!と頷ける光景がありますので、聖地巡礼をしたい方はぜひ調べてみてくださいね。
湯の鶴温泉
なお2022年現在、いずれも「廃墟」ではありません(以下紹介するほとんどのスポットについても同様です)。
湯の鶴温泉
住所 熊本県水俣市湯出
【旧豊後森機関庫(大分)】『すずめの戸締まり』関連スポット
劇中の温泉街で最も印象的、かつ本作のキービジュアルともなっている「鉄骨ドームのある大きなコンクリート建築の廃ホテル」のモデルは、大分にある「旧豊後森機関庫」ではないかと言われています。鉄骨ドームはないものの、スケール感や広大な中庭のイメージは、なるほど!という趣です。
ここで“イケメンの人”こと「草太(そうた)」に再会し、災いをもたらす「後ろ戸」や、それを封じ込める「要石」「閉じ師」の存在を知った鈴芽。さらには謎深き“喋る猫”「ダイジン」の登場、草太の「椅子モルフォーゼ」など、物語は一気に動き出していきます!
豊後森機関庫公園
- 住所
- 大分県玖珠郡玖珠町岩室36-15
- 交通
- JR久大本線豊後森駅から徒歩5分
- 営業期間
- 通年
- 営業時間
- 見学自由
- 休業日
- 無休(12月29日~翌1月3日休)
- 料金
- 入園料=無料/豊後森機関庫ミュージアム入館料=100円、小学生以下無料/
駆け込み乗船で「四国(愛媛)」へ ▶『すずめの戸締まり』聖地巡礼
猫の「ダイジン」を追うかたちで鈴芽と草太がうっかり乗り込んでしまったのは、愛媛行きのフェリー。これは「九四オレンジフェリー(九四の読み方は「きゅうし」。九州と四国、ですね)」の「おれんじ四国」という船であると特定されています。
映画鑑賞でチケット料金が割引になる自主的コラボ企画も実施されているようです。『すずめの戸締まり』聖地巡礼をする際には要チェック!
九四オレンジフェリー
住所 愛媛県八幡浜市出島1581−26
【八幡浜港】『すずめの戸締まり』関連スポット
2014年の八幡浜港(旧ターミナルあり)
フェリーが着いた先は、九州と四国をつなぐ愛媛の玄関口「八幡浜港」。築年齢高めなフェリーターミナルを前に鈴芽が仁王立ちしているシーンが印象的ですが、じつはこのターミナル、老朽化に伴う建て直しで現在は見ることができません。
しかし本作が扱う題材を考えると、これは喜ぶべきことであると言えます。というのも、八幡浜市は全域が「南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域」に指定されており、2022年4月に完成した新ターミナルは津波からの迅速かつ円滑な避難の確保を目的とした設計になっているからです。『すずめの戸締まり』聖地巡礼の際はぜひともフェリーを利用したいと思いました。
八幡浜港
住所 愛媛県八幡浜市出島1581−26
【八幡浜駅/伊予大須駅 】『すずめの戸締まり』関連スポット
八幡浜港に着いた鈴芽と草太は「八幡浜駅」から鉄道に乗り換えます(なお港から駅は歩くと25分ほどかかるようなので、あの茶番はちょっとした瞬間移動ですね)。
この駅や、ダイジンがSNSでバズっていた「伊予大洲駅」などはかなり忠実に描かれており、『すずめの戸締まり』聖地巡礼に訪れるファンも多いようです。
伊予大洲駅
住所 愛媛県大洲市中村
【大谷池(西条市)】『すずめの戸締まり』関連スポット
旅館の娘「千果」と出会う、ガードレールの向こうに橋が見えるシーンは西条市の「大谷池」が有力です(伊予市にも同じ名前の「大谷池」があるので注意)。
もとは大正時代に造られた溜池で、劇中には登場しませんが、近代土木遺産にも選定されている「煉瓦造りの樋門(ひもん)」を現地では見ることができます。ちなみに、この樋門にも「要石」が嵌められているのだとか。きっと偶然ではないのでしょう。
大谷池(西条市)
住所 愛媛県西条市小松町新屋敷字大谷
ヒッチハイクで「兵庫(神戸)」へ ▶『すずめの戸締まり』聖地巡礼
廃校の「後ろ戸」を閉じ、千果とはガールズトークに花を咲かせ——。一夜明けて鈴芽たちが向かったのは、ダイジンの目撃情報があった「明石海峡大橋」。
ヒッチハイクに失敗し続けるも、神戸に帰る途中の「ルミさん」が運良く拾ってくれました。
【大鳴門橋/明石海峡大橋】『すずめの戸締まり』関連スポット
車は徳島から「大鳴門橋」を渡って淡路島へ、さらに「明石海峡大橋」を渡って兵庫・神戸へと入ります。
明石海峡大橋
- 住所
- 兵庫県神戸市垂水区東舞子町
- 交通
- JR神戸線舞子駅からすぐ
- 営業期間
- 通年
- 営業時間
- 24時間
- 休業日
- 情報なし
- 料金
- 通行料(垂水IC~淡路IC、普通車、片道)=現金車は2410円、ETC車は910円/
【東山商店街/二宮商店街】『すずめの戸締まり』関連スポット
ルミさんがスナックを営むアーケード商店街のモデルは、神戸の「東山商店街」と「二宮商店街」を合わせたものとされています。
いかにもモデルがありそうな「多角形の屋根」が特徴的な入口は東山商店街。
東山商店街
住所 兵庫県神戸市兵庫区東山町1丁目
ルミさんの住居兼店舗や味わい深い路地などは二宮商店街。少し離れてはいますが、『すずめの戸締まり』聖地巡礼旅で神戸を訪れた際には、ぜひ巡ってみたいですね。
二宮商店街
住所 兵庫県神戸市中央区琴ノ緒町
【神戸おとぎの国(兵庫)/鷲羽山ハイランド(岡山)】『すずめの戸締まり』関連スポット
『すずめの戸締まり』の物語中盤に登場した神戸でもやはり「後ろ戸」は開いてしまいます。
ダイジンを追って辿り着いた「廃遊園地」のモデルは、「神戸おとぎの国(「道の駅 神戸フルーツ・フラワーパーク大沢」内)」。劇中で最も派手なスペクタクルが展開される観覧車とジェットコースターは、ここのものが近いようです。
また、鈴芽と草太が駆け上がっていく遊園地への道は、岡山・倉敷の遊園地「ブラジリアンパーク 鷲羽山ハイランド」へと続く入口が完全に一致。予告編にも登場したシーンなので、たかが道、されど道、見たら「あ!」となる聖地です。
鷲羽山ハイランドへと至る道
ブラジリアンパーク 鷲羽山ハイランド
住所 岡山県倉敷市下津井吹上303-1
神戸おとぎの国
- 住所
- 兵庫県神戸市北区大沢町上大沢2150道の駅神戸フルーツ・フラワーパーク大沢内
- 交通
- 神戸電鉄三田線岡場駅から神姫バスフルーツフラワーパーク行きで15分、終点下車すぐ
- 営業期間
- 通年
- 営業時間
- 10:00~17:00(閉園、時期により異なる)
- 休業日
- 火曜、祝日の場合は営業、2月は月~金曜、祝日の場合は営業(GWは開園、春・夏休み期間は無休)
- 料金
- 入園料=無料/乗り物=300~400円/
【新神戸駅】『すずめの戸締まり』関連スポット
決死の思いで「戸締まり」を終え、背徳のポテサラ入り焼きうどんで英気を養った鈴芽。翌朝、送ってもらった「新神戸駅」のロータリーでルミさんとお別れします。
——「えっ、新幹線で行くの?」
なけなしの貯金をはたき、鈴芽は新幹線に乗車。ダイジンが絶賛バズり中の東京へと向かいます。
新神戸駅
住所 兵庫県神戸市中央区加納町1-3-1
新幹線で「東京」へ ▶『すずめの戸締まり』聖地巡礼
富士山を寝過ごしてご機嫌斜めな鈴芽さん、下車した「東京駅」で人波に圧倒されながら、草太のアパートがある「御茶ノ水駅」へ。小説版には「全面ディスプレイの黒光りするSF的自販機」で水を買ったと書いてあるのですが、映画でもその「SF的自販機」はさりげなく描かれていますし現実にも存在していますので、水分補給していきましょう。
さて、御茶ノ水駅周辺。ここは、東京近郊にお住まいの方も、遠方から来られる方も、比較的まわりやすく感動の大きい「聖地」と言えます。筆者も実際に歩いてきましたので、少し具体的にご案内します。
【御茶ノ水駅ホーム端からの「聖橋」】『すずめの戸締まり』関連スポット
御茶ノ水駅で降りたら、まずは周囲の風景を記憶と照らし合わせながらホームの先端を目指します。非常に狭くなっており乗降も多いので注意が必要ですが、ここから見る「聖橋(ひじりばし)」はまさしく『すずめの戸締まり』東京編のキービジュアル! 新海誠監督の描く東京に、また新たな聖地が誕生しました。
【御茶ノ水駅「お茶の水橋口」改札】『すずめの戸締まり』関連スポット
改札を出ると、そこは「環(たまき)さん」や「芹澤」との一悶着が道ゆく人々をざわつかせた「あの場所」。
工事の関係で、劇中のように車を停めたり飛び乗ったりということはできなさそうですが、ピンク色の看板がインパクト大な薬局などはそのままに見ることができます。2022年12月時点では駅入口の自販機とシャッターが『すずめの戸締まり』仕様にラッピングされていました。
御茶ノ水駅
住所 東京都千代田区神田駿河台2丁目
【聖橋からの風景】『すずめの戸締まり』関連スポット
駅外周をぐるっと回り、聖橋へ。関東大震災の復興事業として昭和2年に架けられたこの橋は、東京編の主たる舞台となります。パルクールよろしく車道を横断する鈴芽、欄干から神田川へ飛び込もうとする鈴芽——。実際この場所に立つと、鈴芽の命知らずっぷりがよく分かります。
そして、聖橋からの最大の見どころは「東京の後ろ戸へと続くトンネル」。
ミミズの噴き出るトンネルを目の当たりにすると、なかなかの感動があります。取材時、通りがかりの人たちが「あそこから出てきたんでしょ」と、明らかに「ミミズ」の話をしていたのが印象的でした。その先に見える松住町架道橋も含め、永く保存したい、美しい景観となっています。
【草太のアパート(近辺)】『すずめの戸締まり』関連スポット
御茶ノ水エリアで『すずめの戸締まり』聖地巡礼をするなら、まずは聖橋へ。
駅とは反対側に渡り切ったところの階段(劇中に登場)を降り、順天堂医院や順天堂大学の前を通りながら今度は「水道橋駅」方面へ、せっかくなので歩いていきましょう。
草太のアパートは、このあたりにあるのではと言われています。アパートのモデルは不明ですが、「昭和第一高等学校」を目指してください。とても印象的な、「新海誠的」な「坂道」に出会うことができますよ。
以上、御茶ノ水駅〜水道橋駅エリアのお手軽『すずめの戸締まり』聖地巡礼コース一案でした。人通りの多い場所ですので、迷惑にならないよう気を配りながら東京散歩をお楽しみください。
オープンカーで「東北」へ ▶『すずめの戸締まり』聖地巡礼
東京での「戸締まり」で苦渋の決断を下した鈴芽。単身ふたたび御茶ノ水駅から旅に出ようとしますが、なんやかんや芹澤の車に乗り込み、環さんや猫たちとの不本意な珍道中が始まります。
鈴芽の「記憶の深層」に近付いていく、この旅最後の目的地は「東北」です。
【道の駅 大谷海岸(宮城)】『すずめの戸締まり』関連スポット
道中、休憩で立ち寄るのは「道の駅 大谷海岸」。環さんと芹澤が離れて食事をするフードコート、「闇深ぇ」あの通路、鈴芽が「これみよがしに」ひとり車で待つ屋根付き駐車スペースなど、多くの場面を追体験できるスポットです。
宮城県気仙沼市、大谷海岸の目と鼻の先に位置する「道の駅 大谷海岸」は、東日本大震災で壊滅的な津波被害を受けました。シンボルとして親しまれていた砂浜も消失し、砂浜のあった場所に防潮堤が建設されようとしていました。しかし、地域住民の分断をも招きかねない復興事業に大谷の人々は団結して向き合い、防潮堤の移動および砂浜の再生を実現。「道の駅」は、震災から10年の節目となる2021年3月にリニューアルオープンしました。
鈴芽と環さんの間に決定的な亀裂が入りかけるシーンの舞台にこの場所が選ばれたのは、もしかしたらそんな背景も関係しているのかもしれません。
道の駅 大谷海岸
- 住所
- 宮城県気仙沼市本吉町三島9
- 交通
- 三陸自動車道大谷海岸ICから国道45号を大谷海岸方面へ車で0.3km
- 営業期間
- 通年
- 営業時間
- 産直市場は9:00~18:00、カフェテリアは10:00~17:00、ファストフードは9:00~16:00
- 休業日
- 無休、レストランは第1・3水曜
- 料金
- 施設により異なる
【三陸鉄道リアス線「織笠駅(岩手)」】『すずめの戸締まり』関連スポット
終盤、鈴芽と草太が別れる駅は、岩手県山田町の「織笠駅」。同じく東日本大震災を描いた朝の連続テレビ小説『あまちゃん』で一躍有名になった三陸鉄道リアス線の駅です。特徴的なトリコロール配色の車両に乗って、草太は次なる地へと旅立ちます。
この駅も、やはり2011年、津波で流失しました。劇中に登場するのは高台に移転した現在の姿です。ロケハンで岩手を訪れた新海誠監督は、再建された「織笠駅」を見て「人の生活の力強さ」を感じたといいます。監督によれば、鈴芽の出身地設定は岩手とのこと。さらりと登場する駅ですが、きっととても大事なロケーションなのでしょう。
織笠駅
住所 岩手県下閉伊郡山田町織笠第12地割
新海誠監督の覚悟が見える作品『すずめの戸締まり』
2011年以降、『君の名は。』でも『天気の子』でも東日本大震災が頭にあったという監督。今作ではついに「直接触れる」かたちで物語が作られています。記憶に新しい世代からすれば「ぎょっ」としてしまう、暴力的とすら言える作品ですが、上に挙げた監督の言葉からはその緊急性も理解することができました。
観たら必ず「聖地」を調べたくなる新海誠作品。「震災を連想しない」世代が何気なく検索した先には、語り継がねばならない歴史や現実がふいに現れるかもしれません。そう考えると、『すずめの戸締まり』はとても意義のある映画です。
※「聖地」を訪問する際は、公式からのアナウンスに準じた行動をお願いいたします。
映画『すずめの戸締まり』ご鑑賞後、本編中に登場する、または関連のある場所への訪問をされる皆様におかれましては、近隣住人の方々へのご配慮、及び節度のある行動、マナーに十分心掛けながらお過ごし頂きます様、お願い申し上げます。
「すずめの戸締まり」製作委員会
中国・四国の新着記事
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【筆者】353
SNS
ただの雑食な映画好き。——だったはずが、気付けば映画館スタッフに。
映画を観る時間がめっきり減ってしまうというジレンマと戦いながら、映画ブログ『353log』を時々更新中。
不勉強なことばかりですが、皆様に「観たい!」と思っていただけるようなご紹介ができるよう努めます。
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