目次
- 「ふつうの津軽の幕の内弁当」 つがる総菜(新青森駅・弘前駅ほか)1,100円
- 「みちのく 山形びより弁当」 もりべん(山形駅・仙台駅)1,150円
- 「上野弁当」 しまだフーズ(上野駅ほか)1,150円
- 「新宿弁当」 丸政(新宿駅ほか)1,200円
- 「幕之内弁当」 日本ばし大増(東京駅ほか)1,100円
- 「銀だら幕之内」 日本ばし大増(東京駅ほか)1,380円
- 「日本橋 -幕之内-」 (東京駅ほか)1,200円
- 「特製幕之内御膳」 (東京駅・品川駅・新横浜駅ほか)1,380円
- 「シウマイ弁当」 崎陽軒(横浜駅ほか)860円
- 「幕の内 こだま」 松浦商店(名古屋駅ほか)780円
- 駅弁「幕の内弁当」の元祖は?
- 各地の食文化を伝える「幕の内弁当」への旅
「特製幕之内御膳」 (東京駅・品川駅・新横浜駅ほか)1,380円
同じく、東海道新幹線の改札内で買える駅弁でもう一つ、ジェイアール東海パッセンジャーズの『特製幕之内御膳』をご紹介します。
関東・東海・関西の味が一度に楽しめる豪華版。あれこれ食べ比べてみたい方にぴったりです。
フタを開けると、華やかなおかずが行儀よく詰められていて、ワクワクします。
関東(上段)・東海(中段)・関西(下段)に区切って、各地域ご自慢の味をチョイス。関東はアサリを炊き込んだ「深川めし」で、煮物の味付けには濃口醤油。東海は「飛驒牛うま煮ごはん」に、エビフライと八丁味噌の「みそかつ」。関西は「梅ちりめんごはん」で、味付けは薄口醤油です。
東海道新幹線の車窓とともに、各地の味わいを食べ比べてみるのはいかがでしょうか。
「シウマイ弁当」 崎陽軒(横浜駅ほか)860円
神奈川エリアで幕の内弁当を買うのであれば、断然、崎陽軒(きようけん)の『シウマイ弁当』がおすすめ。
昭和29年(1954)生まれの『シウマイ弁当』は、一日平均およそ2万3,000個を販売する駅弁界の横綱、キングオブ駅弁。神奈川県民のソウルフード、しかも日本で一番売れている駅弁なのです。
崎陽軒の弁当製造ラインは横浜と東京に計3か所あり、横浜産の『シウマイ弁当』は掛け紙スタイル(写真右)、東京産はシンプルな被せ蓋仕様(写真左)という違いはあるものの、中身も味もまったく一緒。
とはいえ、食べる前に「掛け紐を解く」というアクションがあるのとないのとで、情緒面で大差を感じてしまうのはなぜでしょうか。
この駅弁はシウマイが主役ですが、俵形のごはんに焼き魚・かまぼこ・玉子焼きという構成をしっかりキープした、立派な幕の内弁当。1個860円という良心的な価格と味の良さ、そして、何といっても「ごはん」の美味しさがピカイチ。
オリジナルの蒸気炊飯で蒸し上げたごはんは、吸水性に富んだ経木(きょうぎ)の折箱で水分が程よく調節され、冷めても美味しく、ふっくらもちもち。何回食べても飽きることがありません。よく売れて回転が早いので、店頭で買った直後はごはんがまだ温かいことも。
ちなみに、この『シウマイ弁当』は、食べ進める順番がしばしば話題になります。筆者の場合、最初に食べるのは鮪の照り焼き、最後はアンズで締めくくる派。でも鶏の唐揚げとアンズを一緒にいただくのも、たまには気分が変わっていいですね。
「幕の内 こだま」 松浦商店(名古屋駅ほか)780円
最後にご紹介するのは、江戸時代の料亭にルーツを持つ名古屋の老舗「松浦商店」が手がける『幕の内 こだま』。東海道新幹線開業に合わせて昭和39年(1964)に発売され、いまなお多くの駅弁ファンに支持されているロングセラー商品です。
写真は京王百貨店の駅弁大会で購入した復刻版デザインの被せ蓋ですが、現地で販売される商品は、名古屋城と金のシャチホコがポップに描かれています。
中身はこのとおり、いたってオーソドックスな幕の内弁当。手前には、黒胡麻をふった俵形のごはん。センター位置には自慢のサバの照り焼き・かまぼこ・玉子焼きと、ボリュームのあるチキンカツ。その脇を、ミートボール、ごぼう煮、鶏肉煮、昆布巻き、うぐいす豆、福神漬けが囲みます。
派手さはないけれど、食べてから年月が経っても「あのお弁当、美味しかったな」と恋しく思い返す逸品。どのおかずも白飯と相性が良く、冷めた状態でも一品一品がちゃんと美味しい。使われている食材が多く、彩りにも工夫があり、栄養価的にも優れています。きちんと食事をしたと実感できるボリュームがありながら、容器は簡素で無駄がありません。
いまの時代、千円札1枚で駅弁とお茶を一緒に買ってもおつりがくるというのは、まさに企業努力の賜物。売れ続けるには、ちゃんと理由があるんですね。
関東から東の地域では、砂糖を使った「甘い」玉子焼きが優勢ですが、関西圏より西になると、塩や白だしを使った「しょっぱい」味付けが主流です。この駅弁で後者の玉子焼きを食べると、いつも、名古屋は玉子焼き文化圏の境界線なんだなぁと感慨深く思います。
駅弁「幕の内弁当」の元祖は?
現在主流となっている幕の内駅弁は、姫路の「まねき食品」が明治22年(1889)に日本で初めて経木の折箱に入れた弁当を山陽鉄道の姫路駅構内で販売したのが始まり、といわれています。
まねき食品の公式サイトによると、上折におかず、下折に白飯を詰めた二重の折詰で、当時お米が一升6銭の時代に、12銭で販売したそうです。かなり高価なお弁当だったのですね。
12銭を現在の値段に換算してみると、仮に米10kgが5,000円として、一升は約1.6kgで800円。その2倍の1,600円が本体価格、さらに消費税8%を加算して、1,728円が売価ということになります。
内容は、鯛塩焼き、伊達巻、焼きかまぼこ、玉子焼き、大豆昆布佃煮、ごぼう、ふき、百合根、タケノコ、人参、そら豆、きんとん、奈良漬け、梅干し、白飯。現代の「幕の内弁当」と構成はほぼ同じです。いつか「復刻版」で販売される機会があれば、筆者もぜひ食べてみたい駅弁です。
各地の食文化を伝える「幕の内弁当」への旅
今回ご紹介した以外にも、各地の食文化を伝える美味しい「幕の内弁当」は全国にたくさん存在します。
高級食材が主役の駅弁を「個人戦」のスター選手とするならば、「幕の内弁当」はご当地自慢の伝統食の供宴、白飯を監督に据えた「団体戦」と言えるでしょう。
けれど、内容が豊富なぶん消費期限の管理も厳しくなり、長距離での流通が難しいため、離れた地域の駅弁は現地に行かないとなかなか味わうことができません。
駅弁は、旅で訪れた地域をより深く知るための足掛かりとして欠かせないアイテム。ただお腹を満たすだけのお弁当ではもったいない! だからこそ、掛け紙やパッケージには、ぜひとも「お品書き」が欲しいところ。欲を言えば、作り手の声をもっと聴きたいと思っています。裏面に商品のコンセプトや観光情報を載せるなど、旅がさらに楽しくなる「プラスアルファ」の工夫にも期待したいと思います。
では皆さん、よい旅を。
マルワ
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※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。
【筆者】駅弁こんしぇるじゅマルワ
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駅弁大好き歴25年。平成の”Windows95”時代から某IT企業のインストラクターとして全国の官公庁・小中学校へのパソコン導入に携わりながら、各地の駅弁や名産品を食べ続けるうち「うまいもの」「みやげもの」で日本地図が描けるようになりました。これまで全国を旅して食した駅弁は2,000個以上、「駅弁大会」と聞けば連日通って“大人買い”、休日は朝昼夕と駅弁が食卓に並ぶような家庭です。時々ちょっと苦手な食材もありますが、そこはすべて「実食」してのルポがモットー。食味の感想には個人差がありますので、その点はご容赦ください。