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奥久慈しゃもべん (水戸駅・勝田駅)
■しまだフーズ/1,100円
北関東地域は、しまだフーズからもう一品ご紹介。
「奥久慈しゃもべん」は、令和元年(2019)秋の台風19号で大きな被害を受けたJR水郡(すいぐん)線が令和3年春、1年5か月ぶりに全線で運転再開したのを記念して発売されました。
軍鶏(しゃも)は、闘鶏で使われるほど闘争本能の強い鶏。手間ひまを惜しまず、厳しい自然の中でのびのび飼育された奥久慈の軍鶏は、低脂肪でヘルシー。締まった肉質と、凝縮された野趣あふれる味わいが特長です。
茨城県産米の炊き込みごはんに、身の締まった軍鶏焼きと軍鶏肉のそぼろ。脇役のきんぴらごぼうと相まって茶色っぽいおかずが優勢かと思いきや、鮮やかな玉子そぼろ、山菜の醤油漬け、長ネギ焼きで色味が盛り返し、素朴でナチュラルな彩りに仕上がっています。ごはんを隙間なく覆った、みちっとしたコンパクトな詰まり具合がとても良し。
ぱっと見たときには、「しゃもべん」と謳うからにはもう少しお肉が入っていても……と思いましたが、いざ食べてみると、その味の強さと弾力にパンチがあり、焼きネギのとろりとした甘さと相まって、絶妙なコントラストになっていました。主役の軍鶏を前面に出した一人勝ちを狙わず、味のトータルバランスで勝負に出ている点に地元愛を感じます。
湘南チョイス (大船駅・小田原駅・熱海駅)
■大船軒/1,100円
埼玉・千葉・神奈川の南関東地域からは、大船軒(鎌倉市)の「湘南チョイス」をご紹介します。
お弁当というよりは、「おつまみ」に近い構成。コロナ禍で家飲みが主体になった昨今、掛け紙に書かれた「つまんでよし、食べてよし」のサブタイトルで、時代のニーズに合致した個性を打ち出しています。
合鴨スモークのほか、明太ポテトサラダ、しらすごま油炒め、鯵マリネに三崎鮪の角煮など、海の幸が盛りだくさんな品書きを見ただけで、ついついビールが進んでしまいそう。掛け紙に中身の写真を載せているので、開けてみて「イメージと違った!」というガッカリがないのも安心です。
締めには、大船軒自慢のお寿司をどうぞ。3色の変わりいなりに、カラフルな押し寿司。意外にごはんの量があるので、食べきるとお腹がしっかり満たされます。
唐揚げ弁当 (東京駅・新宿駅・大宮駅)
■日本ばし大増/980円
最後にご紹介するのは、東京・日本ばし大増(だいます)の「唐揚げ弁当」。
鶏の唐揚げはお弁当の定番。家でつくるお弁当はもちろん、コンビニやスーパーにも必ず並ぶ人気メニューです。だからこそ、“町なかにあふれている唐揚げ弁当を、わざわざ駅弁で選ばなくても……”と一瞬考えてしまう方も多いでしょう。
それでも「よし、買ってみよう!」と思わせるのは、パッケージに書かれた「JKA日本唐揚協会監修」の文字。一瞬でも「何なの、それ?」と疑問に感じたら、もう見過ごすことはできません。気がつけば手に取って、レジに並んでしまう引力を、この駅弁は持っています。
思えば、昨今は空前の唐揚げブーム。部位や衣、調味料を自在にアレンジした個性的な味わいが増えている中で、この駅弁は、高知県産宗田節の出汁が香るモモ肉の唐揚げと、同じく高知県の柚子胡椒(ゆずこしょう)がピリッと効いた胸肉の唐揚げが2個ずつ入って、食べ比べが楽しめる仕様になっています。
食べ応えのあるモモ肉か、さっぱりめの胸肉か――。初めは唐揚げ好きとしてジャッジする気で満々だったものの、冷めても油っぽさを感じることなく、もっちり美味しいごはんと交互に食べ進めるうちに満足し、「みんなちがって、みんないい」の心境に至りました。唐揚げ弁当は、いつの時代も“テッパン”なんですね。
「駅弁味の陣2021」 お気に入りに投票しよう!
「駅弁味の陣2021」に臨むにあたり、駅弁大将軍に選ばれた歴代の有名駅弁と、各地の調製元が開発した新作駅弁の双方を実食してきました。有名・無名にかかわらず、その日その時に巡り合った駅弁を無心にいただくことで、また新しい出合いがありました。
長い歴史に裏打ちされた老舗の味わいは手堅く、ゆるぎない美味しさを提供してくれますし、新作駅弁には現在進行形の物語が反映され、各地の「今」を伝えようとする思いにあふれています。この「駅弁味の陣」で新旧相まった戦いが繰り広げられることで、駅弁業界が活性化し、次の潮流が生まれるのだと思います。
駅弁は、日々厳しい競争の中で新陳代謝を繰り返しています。筆者にも、まだ出合えていない駅弁が目白押し。調製元は、売り上げのいかんはもちろん、アンケートなどを通じて、購入者の意見や感想を商品開発に活かしています。気に入った!美味しかった!楽しかった!――そんな気持ちを込めて投票した結果が、調製元の皆さんへ届きますように。
今年度の「駅弁味の陣」開催は2021年11月30日(火曜)まで。まだまだ買って、食べて、最終日まで果敢に駆け抜けましょう!
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※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。
【筆者】駅弁こんしぇるじゅマルワ
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駅弁大好き歴25年。平成の”Windows95”時代から某IT企業のインストラクターとして全国の官公庁・小中学校へのパソコン導入に携わりながら、各地の駅弁や名産品を食べ続けるうち「うまいもの」「みやげもの」で日本地図が描けるようになりました。これまで全国を旅して食した駅弁は2,000個以上、「駅弁大会」と聞けば連日通って“大人買い”、休日は朝昼夕と駅弁が食卓に並ぶような家庭です。時々ちょっと苦手な食材もありますが、そこはすべて「実食」してのルポがモットー。食味の感想には個人差がありますので、その点はご容赦ください。