更新日: 2024年7月26日
【福島・山形・宮城】憧れの高級旅館~温泉宿ガイドブックのプロがおすすめする、一度は泊まりたい至高の宿
コロナ禍の長期化もあり、旅の「行き控え」で楽しみがない...という人は多いのではないでしょうか。
そんな近ごろのトレンドは、従来なら支出していたはずの旅行コストを憧れだった高級旅館やホテルにドン!と費やす「一点豪華主義」。贅を尽くした料理と温もりに満ちた温泉、ハイエンド宿ならではの極上空間は、スペシャルなひとときを叶えてくれます。
ここでは、原生林の中にたたずむ露天風呂が幻想的な「土湯別邸 里の湯」(福島県)、米沢藩時代の建物を瀟洒にリノベートした地元愛たっぷりの「山形座 瀧波」(山形県)、素朴で温かな陸奥の情緒に満ちる「四季の宿 みちのく庵」(宮城県)をクローズアップ。
ホテル・旅館の取材歴20余年、まっぷるマガジン『温泉やど』シリーズで2500件以上の宿に関わってきた編集者が、「プロの目利き」でおすすめするイチ押しの高級宿をご案内します!
目次
執筆者のプロフィール
過去20年に渡って国内・海外の旅館やホテル、旅行全般のメディアを制作しているプロダクション「編集屋チョーク」です。
創刊28年の『温泉やど』シリーズをはじめとする「まっぷるマガジン」を通して、関わってきた宿は2500件以上。宿の良し悪し・見極めには“そこそこ”自信あります。
趣味は「品のある」宿の考察、支配人との一献、あとは庭いじりと猫いじり。
取材・撮影には特急で馳せ参じ、宿選びの参考にしていただける現場のライブ感と実直なレポートをお届けします!
予約時におさえておきたいポイントは?
満ち足りた至福の滞在を体験したいときにダンゼンおすすめの高級宿ですが、もちろん個々の期待や優先事項はさまざま。
せっかくお金を出すなら失敗したくない!という人のために、これから紹介する宿は、下記のカテゴリーに着目しています。予約時のポイントをおさえながら、自分のニーズに合わせた宿選びを!
- 客室…当然ですが、客室クラスが上がれば料金も上がります。さっくり素泊まりで一泊、料理のグレードを上げて部屋はモデレートで、おこもりできる連泊可能な客室がいい、1部屋の定員や眺望が優先など、まずは自分のプライオリティに順番をつけて、ベストマッチな客室選びを。今回は参考となる客室の広さも紹介しています。
- 部屋付き温泉…高級宿は客室に源泉かけ流しの露天風呂や内湯を備えていることが多々。ただ、なかには客室風呂は白湯、温泉は大浴場のみという場合もあります。温泉を重視したいなら、ぜひともチェックしておきたい項目です。
- 食事…部屋食、専用個室、食事処と大きく3つのパターンに分かれます。高級宿の場合、広間にずらーっと膳が並ぶことはまずありません。おこもり滞在がねらいなら部屋食に徹している宿がおすすめですが、ダイニング食の場合でも100%に近い宿がかなり慎重に密を避ける安全対策を実施しています。
- パブリックスペース…観光ではなく「宿そのもの」が旅の目的、というときは館内・敷地内に何があるのか、何ができるのか、は気になるところ。これはHPで紹介している宿が多いので、事前に確認しやすいポイントです。
なお、本記事の表示料金は、2名で宿泊した場合の1名料金の目安となっています。
土湯別邸 里の湯(福島県・土湯温泉)
深緑に宿る癒やしの力
無為の時間を慈しむ
いつもとは異なる景色に郷土の美味、そして豊かな良泉。こんなときだからこそ、静寂に安らう隠れ宿に行きたい!という向きにぜひおすすめなのがこの湯宿です。
広大な区域と原始性の高い環境を誇る磐梯朝日国立公園の一角に建ち、火山が造り出した起伏のある森と渓流が織りなす瑞々しい自然景観が秀逸。青々と広がる手つかずの原生林、湧き水を利用したわさび田、リスやカモシカと出会える小道など日本人の遠い記憶を呼び覚ます光景が、ここには丸ごと保たれています。
土湯温泉の源泉を新鮮なままにかけ流す3つの貸切風呂や華美に偏らない上質な料理もポピュラーですが、とくに評価が高いのはもてなしの姿勢。客室やラウンジ、浴場でのビールやソフトドリンク各種、お菓子などはすべてインクルーシブサービスで提供、朝夕とも食事は部屋食、またスタッフの振る舞いにさりげない心配りが感じられ、季節ごとに訪れるというリピーターが多いのも特徴です。
1400年の歴史をもつ名湯をかけ流し貸切風呂で
とくに湯客の期待感に応えるのは、すべての客室に引く温泉に加え、貸切で利用できる3か所の湯殿です。なかでもシグネチャー的存在の「深碧(しんぺき)」は、森のミストが降り注ぐ深山幽谷の美が圧倒的。大自然のなかで湯に浸かりながら夕餉を待つひとときは、人生のごほうびにふさわしいと思えるほどです。
内湯タイプの貸切風呂「櫨染(はじぞめ)」は樹齢一千年を超える古代檜で造られた湯船が格調高く、また三方がガラス張りになった内湯と半露天風呂の二つを同時に独占できる「青藍(せいらん)」も季節折々の自然美が見事です。
いずれも予約は宿泊当日のチェックイン時に。1組1回30~40分程度で、利用時間は深碧が(14:00~22:30、5:30~10:00)、櫨染・青藍は(14:00~23:00、5:30~10:00)となっています。
客室で自在にいつでも温泉を独り占め
宿の規模拡大よりも質の向上にこだわり続けてきた結果、客室は4千坪の敷地にわずか9室。すべての客室が二間続きで、また全室に古代檜風呂もしくは露天風呂を配して土湯温泉を源泉のまま引湯しています。
地元材を多用した数寄屋造りの空間は、凛とした品位のなかにも安らぎ感があり、窓外に望む木の名前がそれぞれの客室に付けられているのも、自然と共存する宿ならではの愛らしさ。9室のうち3室は和室にツインベッドを備えた和洋風で2名仕様、露天風呂付き「こぶし」はアッパークラス、「花村」は一棟建ての離れ屋で1室4名以上での利用時におすすめです。
客室タイプは以下のようになっています。
<春陽スタンダードタイプ>
・桜…檜風呂付き和室6畳+6畳/定員1~2名
・石楠花/梅…檜風呂付き和室8畳+6畳/定員1~4名
<照葉セミラグジュアリータイプ>
・もみじ/けやき…檜風呂付き和室8畳+ベッドルーム6畳/定員1~2名
・松…檜風呂付き和室10畳+ベッドルーム8畳/定員1~2名
・楓…檜風呂付き和室10畳+6畳/定員1~4名
<炯然ラグジュアリータイプ>
・こぶし…露天風呂付き和室10畳+リビング6畳/定員1~3名
・花村(離れ)…露天風呂付き和室10畳+8畳+7.5畳/定員2~6名
手間を惜しまない質重視の会席料理
食事はひと品ひと品に丁重な手仕事が見て取れる日本料理。朝夕とも和食の部屋出しという湯宿の真髄を基本にしています。
通常の会席料理プランはおおむね9~10品目。華美な演出を極力控えていることで、熟練された料理の技がさらに際立ち、質のよさ味のよさともに心尽くしが伝わってきます。山の旬菜や川魚といった素朴な食材は滋味豊か、また必ず盛り込まれる国産黒毛和牛は定番の石焼きステーキで供されることが多く、鰹節や昆布、ゴボウといった和の出汁を利かせた特製ソースがおいしいと好評です。
離れ客室「花村」および3名以上で宿泊の場合は食事処の利用となりますが、こちらも客室と同様、完全なプライベート個室で安心です。
散策道をつたってジブリ映画のような森の中へ
母屋玄関の北側には、荒川や産ヶ沢まで降りてゆける遊歩道があり、チェックイン前後や翌朝の散策に格好です。
翡翠色の森は立体感あふれる絵のように幻想的で、そこここに顔をのぞかせる山野草や耳に届く野鳥の声は非日常感たっぷり。山葵(わさび)やクレソンが育つ産ヶ沢清流にはたくさんのイワナが生息し、天然ものを見るのは初めてと感激する湯客も。
また湯上がりにおすすめなのがラウンジとその奥にあるDEN風の空間。インクルーシブサービスの飲み物やお菓子、オーナーセレクションの蔵書がそろい、好きなときに好きなだけのんびりできる趣向です。
編集者からのおすすめポイント
「土湯別邸 里の湯」のチェックポイントはこちら!
・パワースポットを思わせる神々しい露天風呂
・自然景観を取り込む全室2間以上の客室
・周囲に広がるジブリ映画のような森の環境
こういったあたりに着目しながら、ぜひ「土湯別邸 里の湯」を楽しんでみてはいかがでしょうか?
全9室に対して3つの貸切風呂と余裕があり、予約が取れなかったという声はないようです。比較的スムーズに貸切風呂の全種を体験できますよ。
お宿のデータ
土湯別邸 里の湯
つちゆべっていさとのゆ
所在地/福島県福島市土湯温泉町悪戸尻27-2
アクセス/JR東北本線福島駅から路線バス土湯温泉行きで45分、土湯温泉下車、送迎車で約5分(要予約)
電話番号/024-595-2146
宿泊料金/1泊2食付(税・サ込)3万8000円~6万円前後
駐車場/20台
子ども/宿泊可(小学生以上のみ、2食付1万8000円~)
>>「土湯別邸 里の湯」をネットで宿泊予約
山形座 瀧波(山形県・赤湯温泉)
新しいカタチで上杉の歴史を継承
山形の味と湯、文化を楽しむ
米沢藩大庄屋の屋敷や蔵座敷、大正期築の木造小学校といった歴史的価値の高い建造物を移築して構成された湯宿です。気遣い、心配りが行き届き、接遇サービスに対する高評価は赤湯の中でもピカいち。2017年のフルリニューアル以降、「一度は泊まってみたい東北の宿」で常に上位ランクの座を占めています。
すばりポイントは、伝統建築に融合する不易なインテリアセンスと山形愛。そもそも曲がり家や蔵座敷というと、江戸時代、金に糸目をつける必要のなかった土地の名士や豪商の邸宅。いうまでもなくその普請は素晴らしく、数百年ものあいだ豪雪に耐えた東北の家屋は強固そのものです。そんな建造物の梁や柱、天井組みなどを残しながら、北欧テイストあり、ヴィンテージモダンあり、シンプルスタイリッシュありと、和洋それぞれの良さを調和させてでき上がったのが瀧波ワールド。
また旬菜や魚介は地元の天然もの、肉はもちろん米沢牛、蔵王石の風呂や天童木工の家具など、山形の風土が育てた食と文化、郷土の色、香り、温もりまで、全身で山形を感受してほしいという願いが具現化されています。旅館という枠をこえ、「山形のショールームでありたい」というコンセプトに、純粋な山形愛が感じられるのも大きな魅力です。
ラウンジでのアルコールはインクルーシブ
母屋の一角にあるのは、瀧波の顔ともいえるロビー・ラウンジ「1916」。20世紀を代表するデンマークの家具デザイナー、アルネ・ヤコブセンとハンス・J・ウェグナーの名作が空間に彩りを差し、和と洋の調和が絶妙です。
ここでは到着時に名物ずんだシェイクが振るまわれるほか、夕刻には鮮やかな舞姿で知られる山形の伝統「花笠踊り」を実施(コロナ拡大防止のため当面のあいだ休止中)、また滞在中いつでも自在に楽しめるコーヒーや各種ドリンクは無料サービスで提供、夜19:00以降にはウイスキーや地酒などのアルコールも並びます。
板の間部分は、山形県産の杉材に浮造り(杢目の立体感を増す手法の一種)を掛けたもので、思わず素足で過ごしたくなる質感。この浮造り仕上げは足腰にもやさしいそうです。
家具好きをうならす、こだわりの客室たち
母屋と渡り廊下でつながる客室群は全19室。それぞれにコンセプトを設けた3タイプがありますが、同じタイプでも設計や調度はすべて異なり、湯客を迎える空間造りへのこだわりがひしひし伝わります。
まずは座敷蔵をはじめ、板蔵や米蔵をリノベートした「KURA」、残りの2タイプは大正時代の木造校舎を再生したもので、山桜と池泉庭に臨む「SAKURA」、山形が誇る木製家具ブランド天童木工の作品や山形に縁する作家の工芸品を集めた「YAMAGATA」。全室に付く源泉かけ流しの露天風呂は1階が蔵王石のくり抜き、2階は檜という造作です。
山形を体現する宿=瀧波が唯一、山形産ではないものを取り入れているのがテーブルやラウンジチェア。世界中で絶大な支持を得るインテリアブランドの最高峰「Fritz Hansen(フリッツハンセン)」や「CARL HANSEN & SON(カールハンセンアンドサン)」、「Herman Miller (ハーマンミラー)」、徳島の「宮崎椅子製作所」らのコレクションを多く採用し、とくにデンマークのハンス・J・ウェグナーやカイ・クリスチャンセンといった椅子の巨匠たちの名作は快適で美しいタイムレスな光を放っています。
客室タイプは以下のようになっています。
01 蔵王石露天風呂付きスイート(約115㎡) 定員6名
02 蔵王石露天風呂付きメゾネット離れ(約51㎡) 定員3名
03 蔵王石露天風呂付きメゾネット(約46㎡) 定員2名
04 蔵王石露天風呂付きメゾネット(約51㎡) 定員3名
05 檜露天風呂付きクリエイティブツイン(約46㎡) 定員4名
06 檜露天風呂付きツイン(約37㎡) 定員3名
07 檜露天風呂付きツイン(約38㎡) 定員3名
01 蔵王石露天風呂付きツイン(約37㎡) 定員3名
02 蔵王石露天風呂付きツイン(約34㎡)定員3名
03 蔵王石露天風呂付きツイン(約34㎡) 定員3名
04 檜露天風呂付き畳ツイン(約50㎡) 定員3名
05 檜露天風呂付き和洋ツイン(約39㎡) 定員2名
06 檜露天風呂付き和洋ツイン(約37㎡) 定員2名
01 蔵王石露天風呂付きスイート(約54㎡) 定員4名
02 蔵王石露天風呂付きツイン(約34㎡) 定員3名
03 蔵王石露天風呂付きツイン(約34㎡) 定員3名
04 檜露天風呂付き和洋スイート(約54㎡) 定員4名
05 檜露天風呂付き和洋ツイン(約39㎡) 定員2名
06 檜露天風呂付き和洋ツイン(約44㎡) 定員3名
置賜の恵みを地域ネットワークから調達
食事は朝夕ともオープンキッチンスタイルが臨場感たっぷりのダイニング「1/365」で。基本は創作風も加味した日本料理で、置賜エリアの新鮮なオーガニック野菜をはじめ、料理長みずから摘み取る山菜、庄内浜に揚がる魚介、米沢牛や米澤豚一番育ちといった郷土の美味がずらりと登場します。
地産地消を心がけている宿は日本中にありますが、瀧波が異なるのは、食材選びだけに限らず、地域の文化や歴史をも料理に表現し、農商工の連携を目指す「ローカル・ガストロノミー」を常に追求、テーマとしているところ。かといって背景にある薀蓄の押し付けがなく、あくまで山形のおいしいものをさらにおいしく味わってもらおう、というシンプルな意気込みに好感がもてます。
有機栽培の農家とネットワークを組んだ野菜は甘くて元気いっぱい、上杉の知恵が生んだ糅物(かてもの、食べられる草木や山菜の常備食)を干物や煮付けに、素朴この上ない伝統の芋煮汁はフェンネルが香る椀で、と興味をそそる趣向にわくわくさせられ、また上質の米沢牛や庄内浜の魚介は思い出としてしっかり心に残る味わい深さです。
参加無料のアクティビティーや大浴場も
すべての客室に源泉かけ流しの露天風呂が付いていますが、パブリックとして大浴場も用意。女性側は檜の内湯と蔵王石のくり抜き露天風呂、男性湯は切り石・檜造りの露天風呂のみという構成で、滞在中は深夜を含めいつでも好きなときに赤湯温泉の100%かけ流しを楽しむことができます。
また、ぜひとも参加してみたいアクティビティーが、毎日夕刻に開催される蕎麦打ちと、十分一山山頂への早朝ツアー。蕎麦打ち実演時には地酒が振るまわれるほか、その日の打ち立て蕎麦を夕食時にサービスで。9~11月ごろなら雲海を見れるチャンスも大の十分一山へは車で案内してくれ、いずれも参加無料という太っ腹ぶりです。
編集者からのおすすめポイント
「山形座 瀧波」のチェックポイントはこちら!
・築数百年の建物を巧みに再生した独特の世界観
・山形愛に満ちあふれる食事が美味
・インクルーシブサービスが充実
こういったあたりに着目しながら、ぜひ「山形座 瀧波」を楽しんでみてはいかがでしょうか?
Fritz HansenやCARL HANSEN & SON、天童木工の家具コレクションは、ファンの心を鷲づかみに!
お宿のデータ
山形座 瀧波
やまがたざたきなみ
所在地/山形県南陽市赤湯3005
アクセス/JR山形新幹線赤湯駅からタクシーで6分(赤湯駅から送迎あり)
電話番号/0238-43-6111
宿泊料金/1泊2食付(税・サ込)3万6300円~8万5000円
駐車場/20台
子ども/宿泊可(10歳以上のみ、2食付1万9000円~)
>>「山形座 瀧波」をネットで宿泊予約
四季の宿 みちのく庵(宮城県・鎌先温泉)
確かな技が冴える日本料理と
穏やかな陸奥の風土に安らう
「奥羽の薬湯」と呼ばれ、約600年以上に渡って親しまれる鎌先温泉は、今も湯治場風情が残る山間の湯処。その昔、草刈りをしていた里人が鎌の先で湯を掘り当てたのが開湯のきっかけと伝わり、これが温泉名に由来していることからも、その素朴さがうかがえます。
5軒の旅館が点在していますが、なかでも日常の喧騒や気遣いから離れ、ざわついた心を洗濯したいというときに、おすすめできるのがこちらの宿。自家源泉かけ流しの湯、安定感のある接客サービス、上質な料理と三拍子がそろい、コストパフォーマンスの高さが魅力です。
大きな特徴は、気取りなく穏やかな陸奥の風土を映した心温まるもてなしと、日本料理の真髄を見せる至福の味。とくに接遇面の評価は高く、口コミで評判が広がり東北圏以外から訪れるファンも多いほど。静寂に癒やされる大人向きの湯宿ながら、子どもの宿泊を不可としていないのも、家族旅行にはありがたいですね。
和の基本に則った上質な日本料理
奇をてらわない本物の美味といっていい料理は、陸奥の旬を伝える逸品ぞろい。三陸が誇る質の高い鮮魚、近在農家の地元野菜、厳選した仙台牛など目利きした食材の良さはもちろん、一品ごとに料理人のていねいな姿勢と確かな技がうかがえます。
一年を通して用意されるのは、みちのく庵懐石コース(スタンダードプラン)と特選懐石コース(グレードアッププラン)。特選懐石コースには、A5ランクの仙台牛ミニステーキが加わり、ちょっとボリューム感のほしいときにおすすめです。
また、おいしいと評判のご飯は、近隣の契約農家が丹精する「ひとめぼれ」。その昔、城主への献上米を作っていた地元白石の原地区は、初夏にはホタルも舞うほどの清流と粘土質の土壌がとびっきりの米を育てます。適度な粘りと飽きのこない甘みがあり、食指を誘う光沢の美しさも格別。夕食も朝食もおかわりをする湯客が多いというのも納得です。
部屋食でのもてなしを重視した客室設計
客室はトイレ付き和室6室、露天風呂付き和洋タイプ3室の構成で、こまやかなサービスが十分に行き届く全9室の規模です。
すべて部屋の造りは異なりますが、主室が凛とした美しい数寄屋建築なのは、部屋食に徹する日本旅館ならではのもてなしを貫いているため。スイート格の3室のみ客室にダイニングがあり、立ち座りの楽なテーブルでの食事も可能です。
いずれの客室も、四季折々に彩りを変える蔵王の景色を望み、安らぎ感は抜群。とくに人気が高い角部屋の「朝霧」は、二方向から眺めを取り込み、山景と一体化する様が秀逸です。また「和すぃーと 曙庵」は、室内に段差のないバリアフリー設計を採用。可動手すり付きの引き戸式トイレは車椅子や、幼児を抱っこしながらでもすんなり通れる間口の広さ、客室露天風呂で利用できるケア用シャワーチェアの貸し出しもあり、親孝行旅行や3世代旅行でも過ごしやすいよう配慮が体現化されています。
客室タイプは以下のようになっています。
・玉垣…和室10畳+広縁+専用デッキテラス/定員2~3名
・朝霧…和室12畳+専用濡れ縁/定員2~3名
・睦庵…和室8畳+ツインベッド和室+専用テラス/定員2~3名
・小萩/稲船/横雲…和室12畳+広縁/定員2~4名
・和すぃーと曙庵…和室12.5畳+ツインベッド+ダイニング+露天風呂+専用テラス/定員2~6名
・悠すぃーと端麗…和室12畳+ツインベッド+露天風呂+専用テラス/定員2~6名
・結すぃーと東雲…ダイニング・リビング+ツインベッド+和小上がり+露天風呂+専用テラス/定員2~4名
芳香がくゆる高野槇の温泉浴場も
もうひとつの名物は、森の爽やかな樹香と高野槇の高貴な香りが溶け合う大浴場「雲上の湯」。目の前で連なる峰々が深く折り重なり、秋には色艶やかな紅葉が広がります。
男女とも内湯と露天風呂のある湯殿で、湛える温泉は100%自家源泉。体をすっぽり包む豊富な湯量と眺望がここちいいうえ、さらりとした湯ざわりや泉質の良さもなかなか好評です。
里山によく似合う閑静なたたずまい
館内は和を基調にした品のいい設計で、派手なファシリティはひかえているものの、そこがまた自然の息吹に包まれた静寂の宿らしく、陸奥ならではの趣でもあり、3度目、4度目と利用する湯客の多い所以。どこか懐かしい土壁や囲炉裏を切った小上がり座敷、館内のそこここに生けられる山野草、初夏の庭に色を差す山紫陽花にも癒やされます。
ラウンジでのティータイムには大好評のソフトクリームや抹茶ゼリーといった手作りのスイーツでもてなし。女将と若女将が毎年手作業で仕込む梅酒や梅ブランデー、季節の果実酒もおいしいと評判です。
編集者からのおすすめポイント
「四季の宿 みちのく庵」のチェックポイントはこちら!
・穏やかなもてなしと優しい空気感
・派手な演出よりも質に重きをおいた料理
・完全部屋食でおもこり度アップ
こういったあたりに着目しながら、ぜひ「四季の宿 みちのく庵」を楽しんでみてはいかがでしょうか?
凛とした和建築が実に端麗な客室、和モダンな趣がほしいという方は3室ある「すいーと」客室での予約を!
お宿のデータ
四季の宿 みちのく庵
しきのやどみちのくあん
所在地/宮城県白石市福岡蔵本狐峯3-4-5
アクセス/JR東北新幹線白石蔵王駅からタクシーで15分(白石蔵王駅から送迎あり)
電話番号/0224-26-2111
宿泊料金/1泊2食付(税・サ込)2万4000円~5万5000円前後
駐車場/20台
子ども/宿泊可(大人の70%)
>>「四季の宿 みちのく庵」をネットで宿泊予約
至福のときが待つ、極上温泉やどへ
東北でおすすめ度の高い極上温泉宿3軒を紹介しました。
全国で何千軒もの温泉宿を長年取材してきたプロの編集者がセレクトした珠玉の宿です。
近場でゆっくりのんびり、絶品の夕餉と良泉にまどろんで心と身体をリセット。
こんな贅沢な時間を過ごしに行きませんか?
南東北の新着記事
※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。
【筆者】編集屋チョーク
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過去20年に渡って国内・海外の旅館やホテル、旅行全般のメディアを制作している編集プロダクションです。まっぷるマガジンを通して、関わってきた宿は2500件以上。宿の良し悪し・見極めには“そこそこ”自信あります。
趣味は「品のある」宿の考察、支配人との一献、あとは庭いじりと猫いじり。二輪・四輪問わず、輪っかの付いているものなら何でも好き。取材・撮影に特急で馳せ参じ、宿選びの参考にしていただける現場のライブ感と実直なレポートをお届けします!