更新日: 2023年8月6日
【私の移住体験】「近い田舎・川越」で豊かに暮らす
都内で約10年間会社員として働き、忙しい業務と残業に追われる日々を過ごしていた私。
学生時代から目指していた職に就き、自身の成長とやりがいを感じていた一方で、「このままの生活で本当にいいのだろうか」と、日々の生活に違和感を抱くようになりました。
今回はお伝えしたいのは、悩んだ末に会社を辞めて、実行に移した私の移住体験談です。
移住先は埼玉県の川越市。
「川越って都会なんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、実は自然の魅力が詰まった場所なのです。
「移住」というと、どこか遠くに行かなければできないと思われるかもしれませんが、素敵な田舎は意外と近くにあるものです。
目次
歴史と文化、賑わいと平穏が融合する川越
埼玉県南部に位置する川越市は、情緒溢れる「小江戸」と呼ばれる蔵造りの街並みがあります。
都心からは電車で1時間以内と、アクセス抜群の場所。コロナ前は、古い街並みを目的に訪れる外国人観光客も多く、歴史と文化を感じられる、埼玉県有数の観光地として賑わっていました。
昔から商業の町として発展し、一見「田舎」とは想像できないような印象を持つ川越。
しかし中心地からほんの少し離れると、驚くほどの田園風景が広がっているのです。
自問自答の会社員生活と、未来への決意
長年会社員だった私は、決まった時間に家を出て、満員電車の中で押しつぶされる毎日を送っていました。
仕事自体は楽しいけれど、大好きだったひとり旅をする暇もない多忙な日々。毎晩遅くに家路に着き、心身ともに疲れ切って帰宅しては、食事も疎かにする生活。
そんな日が続くにつれ、心のゆとりを失っていくのを感じました。
「これから先も何十年と、この生活が続くんだろうか」「自分が望む生き方ができているんだろうか」
30代に入り、そんなことを考えながらも日常を変える勇気が持てず、1年ほどの月日が経ちました。
そしてついに、会社を辞めることを決意。
退職後は好きだったひとり旅をたくさんして、「のんびり、心穏やかに過ごしたい」と、漠然とした未来へのイメージが持てるようになってきたのです。
そのイメージを具現化するため、私は地方への移住を考え始めました。
移住という選択肢
ちょうど同じ頃、東京で共に過ごした親友が、夫婦で岐阜県へ移住したことも移住を深く考えるきっかけになりました。
フリーランスの彼女は、平日昼間は畑で野菜を育てつつ、自分のペースで在宅の仕事をしているとのこと。会社に所属しない分、苦労や努力が必要ですが、その様子を聞くたびに、田舎での生活にどんどん惹かれていきました。
「田舎では本当にお金がかからないよ」と聞いていたこともあり、「働きすぎずに生活できる」ということは、私にとって重要なことでした。
偶然か必然か、目前にアパートの更新時期が迫っていたこともあり、パートナーと2人で岐阜へ移住することを決意。
この時の「覚悟」こそが、何よりも大きな一歩となりました。
そこからは、岐阜県の各市町村が提供する移住支援制度を調べ、新生活に胸を膨らませていくのです。
移住への壁。悔いのない選択をするために
気持ちが固まったのも束の間、ここで最大の壁にぶつかりました。
首都圏における新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、お盆休みに田舎へ帰省することについて、賛否が問われていた頃でした。
首都圏からはるばる田舎へ行って良い時期なのか。アパートの更新期限が迫る中、何度もパートナーと話し合い、悩みました。
「今は諦めてアパートを更新し、落ち着くまで自粛した方がいいのか」
「いや、退職してまで決意した再スタート。諦めたくない」
いくら考えても正解のない問題を前に、「何を選択することが、幸せなのか」ということと向き合い続けました。
最終的に、「県外への移動は避けるように」という自粛要請を無視して、高齢者が多い田舎へ移り住み、住民を不安にさせてしまうことは、やはり幸せなことではないという結論に至りました。
それならば、「今できることをやりたい。何かのせいにして後悔したくない。」と、埼玉県内で、イメージに合う町を探すことにしました。
現状を悔やんで想いに蓋をするのではなく、今選択できることは何かと考え始めると、人生が前に進み出したのです。
「ここがいい。」思い描いた新天地との出会い
それからというもの、漠然と気になっていた町へと、たびたび車で訪れました。
実際に足を運んでわかったことは、「田舎」と言っても千差万別なんだという、今思えば当たり前のこと。
自然に囲まれ、人との繋がりが温かいイメージを抱いていたけれど、活気がなく、静かで「寂しい」と感じる場所にも出会いました。
色々な場所に行くうちに、「こんな田舎がいいな」という自分なりのイメージができてきたように思います。
ふと車で川越を通った時のこと。
突然視界がひらけて、広い広い、田園風景が現れました。田んぼの向こう側には、明らかに本数の少ない4両編成の単線の電車が時々走っていきます。
ここならば、住んでいたアパートからも車で1時間ちょっと。
移住と呼ぶには近すぎるでしょうが、目の前に広がった景色は今まで住んだことのある町とは大きく異なったものでした。
遠くまで旅行へ来たような、大好きだった田舎町や離島へ旅した頃を彷彿とさせる空気に、「ここがいい」と決めました。
それからはあっという間にお気入りのアパートを見つけ、翌月には畑の隣に建つアパートへ移住していました。
憧れだった農業デビュー
引っ越して1週間後、広い畑を持つお隣さんに「畑を借してくれる人を知りませんか?」と、勇気を出して話しかけました。
「野菜作りをしたくて、引っ越してきたんです」と伝えると、80歳を超えたというお隣さんは、膝が痛いからと言って自転車にまたがり、近所の畑や3軒先の地主さんの家へ案内してくれました。
その翌日には広大な畑を借り、何もわからないまま、畑作りが始まったのです!
インターネットで仕入れた情報を元に、慣れないクワで土を耕していると、ご近所さんから採れたての野菜をたくさんいただくようになりました。
早朝にパートナーとお気に入りの田んぼ道を散歩すれば、通りすがりにたくさんの人と挨拶したり、虫の声と鳥の声に癒されたりと素晴らしい時間が過ごせます。
世界中を一緒に旅したカメラで、葉っぱにちょこんとのったカエルを撮ったりするのも心が温かくなる瞬間です。
大好きだった世界を巡るひとり旅。今はコロナでかないませんが、そのおかげで私は「そばにある魅力」に目を向けることができました。
「遠くもいいけど、近くもいい。」
そう思えるようになると、日常の中に隠れた「ワクワク」や「好き」を見つける、新しい旅のような楽しさを知れたのです。
決まらない仕事、募る不安と焦り
想像を超える移住の醍醐味を味わう中、実は悩みもありました。
「在宅ワークができれば、田舎に住んでいても働くことができる」。そう考えて、移住前から在宅の仕事を探しては応募していたのですが、結果は「不採用」か返信なし。
そんな生活が移住後も1ヶ月以上続き、先への不安が募っていきました。
自然に囲まれ、優しいご近所さんに癒され、パートナーは急かすこともなく見守ってくれ、描いていた通りの穏やかな移住生活。そのはずなのに、心の中は焦るばかりでした。
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