更新日: 2021年2月23日
【連載エッセイ・第22回】猫と田舎で暮らしてみた~6匹と僕たちの里山生活~
東京生まれ、東京育ち。9年前に奥さんと、大分・国東半島へ移住。
そこで出会った猫たちと、こんどは、自然豊かな伊豆の田舎へ。
ゆっくりと流れる時間のなかで、森や草むらで自由に駆け回る猫たちと、一緒に暮らす日々のあれこれをお伝えしていきます。(毎週火曜日・金曜日に公開)
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桜まつり-都会の街角から遠く遠く離れて
毎年2月の中頃になると、伊豆半島は河津の桜まつりに出かける人の車で大渋滞になる。
それはもう想像を絶すると言っていい渋滞で、地元の人は週末の買い物も控えてなるべく外に出ないようにしております。GWやお盆休みも人や車は多いけれど、やっぱり渋滞の深刻さでは2月の桜まつりが一番だと思う。
僕は今でもツイッターなどで流れてくる都会の街並みや、それはそれは美味しそうな料理の写真を見ると、ああ都会だなあ、ああオシャレだなあとちょっとばかり羨ましく思うことがある。そりゃやっぱり流行の最前線でみんながしのぎを削ってる街なんだから、センスも品質も値段も田舎とは別次元の世界だものね。
だけどそれはたまに観る映画の中の世界みたいなもので、実際の僕は休みの日にちょっと寒いから焚火でもしようか、焚火しながら大根でも抜いとくか、猫と日向ぼっこしながらコーヒーとお菓子で春を待つか、なんていう暮らしに慣れてしまったのも事実だし、毎日の暮らしでは煌めきよりもヤキイモみたいな飾り気のなさを愛でていたりする。
そんなことを考えながら寒空の下で猫たちと焚火を囲み、この10年間みたいなものになんとなく想いを馳せるとき、10年前には影も形もなかった6匹の悪戯猫たちが僕を生かしたのかも知れないな、としみじみ思ったりもする。
東京を離れて大分県の国東へ行かなければ彼らには出会わなかっただろう。彼らと出会わなければ僕はまた都会へ戻り、この伊豆へは来なかったかも知れない。僕たちがなんの疑いもなく歩いている道の一本隣には、考えてもみなかったような別の道があったりするものだよ。何か些細なきっかけで別の道へ迷い込んでみたら、そこは思いがけず居心地の良い道だったりするかも知れない。
国破れて山河あり。人間いたるところ青山あり。
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※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。
【筆者】高橋のら
1960年東京生まれ。製本業経営を経て編集プロダクションを設立。
2011年に東京から大分県国東市へ移住し、2014年に国東市から静岡県伊豆半島に転居しました。現在は伊豆の家で編集業を営みながら仕事上のパートナーでもある家内と、国東で出会った6匹の猫たちと共に暮らしています。
国東での猫暮らしを綴った著書「猫にGPSをつけてみた」雷鳥社刊があります。