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会期後半の週末は開店と同時に参戦!
天候の影響はありますが、2週にわたる会期中、もっとも会場が賑わうのは初日と週末の土・日。ということで、後半戦は1月15日土曜日の参戦を決めました。開店と同時に入店する予定でしたが、予定した電車を逃して10分遅れの現地到着となる、筆者痛恨のミス! 逸る気持ちを抑えながらエレベーターに乗り、4階の輸送駅弁会場へ向かうと、既に待機列は2階の踊り場まで達していました。この時間的ロスは痛い。
その後も次々と同様のお客さんがやってきては、驚いた表情で「え? この列、どこまで続いているの?」と言いながら、最後尾へと足早に階段を下りていきます。結局、待機列での待ち時間は到着から30分程度。でも大丈夫! すでに売り切れとなった商品がいくつかあったものの、陳列棚には、まだたっぷり駅弁が積まれていました。
と、ここで意外な光景が。なんと、前半戦では開店とほぼ同時に売り切れていた淡路屋の『JR貨物コンテナ弁当・神戸のすき焼き編』が、まだたくさん残っているではありませんか。それを見て、何人もの人が「コンテナまだある……!」と呟いています。時間的に、もう買えないと諦めていた人も多かったのでしょう。コンテナ弁当がたくさん積まれている様子を見たのは筆者も初めて。でも、興奮気味に見守る間に、その山もみるみるうちに崩されて姿を消しました。
駅弁大会は、2週間の期間中、前半戦と後半戦でお客さんの動向に微妙な違いが見受けられます。筆者も含め、駅弁が大好きな人は、開幕と同時のスタートダッシュが基本。前半戦では大会の目玉となる商品から順に攻めていき、次は、自分の居住地では比較的手に入りにくい駅弁を優先して購入。それらの目標が無事達成されたら、ようやく、それ以外の商品をじっくり吟味して選ぶようになります。後半戦でコンテナ弁当の残数を見て、そうした傾向を顕著に感じました。
週末だったこの日、輸送駅弁で開店直後に売り切れたトップ3(10:45現在)は、『秋田比内地鶏いいとこどり弁当』(10:10)と『広島浜蒸しかきめし』(10:10)が同率1位、続く3位が『岡山旅めし 黒毛和牛と真鯛のフルコース膳』(10:15)。次点が鳥取『ゲゲゲの鬼太郎丼』(10:17)でした。筆者、岡山を狙っていました。残念!
駅弁を味わうなら、車窓を見ながら
さて。朝から臨んだ土曜日の狩りも、正午過ぎには終了してしまいます。となれば、やはり旅気分を味わいたくなるというもの。時節柄あまり遠出はできないけれど、西武新宿駅から本川越なら、「小江戸号」の愛称で知られる特急ニューレッドアロー号で50分弱。車窓を見ながら駅弁を楽しむには十分ということで、特急券を奮発しました。この日、旅のお供に選んだ駅弁は、富山駅『螢いかの釜飯』と、豊橋駅『稲荷寿し』です。
『蛍いかの釜飯』(1,200円)は、『ますのすし』や『ぶりかまめし』で有名な「ますのすし本舗 源」の駅弁。昨年の駅弁大会で新作として登場、話題になっていたのを買いそびれてしまい、ようやく今年チャレンジが叶いました。
ご覧のとおり、蛍いかをセンターにして、こごみや山菜、花にんじんと、春の息吹を感じさせる色鮮やかな盛り付けが魅力です。土釜に似せたプラスチック容器で扱いも簡便、個性の際立った一品でした。
こちらは、豊橋「壺屋弁当部」の稲荷寿し。580円は、今大会2番目の安値です。1889年(明治22年)から今に続くロングセラー商品は、極めてシンプル。熱湯でしっかり油抜きした油揚げを、醤油とザラメ、上白糖でしっかり炊き上げた、こってり甘い味わいが特長です。
ひとつひとつ手作業で包んだ皮に歯を立てると、油揚げはパツッと固めの食感。咀嚼すると、皮の濃い甘さと酢飯の酸味が程よく合わさって、懐かしい香りが鼻に抜けます。クラシカルな掛け紙に紐かけした姿もまた、歴史と旅情を感じました。
短時間の日帰り旅ではあったけれど、やはり、車窓を楽しみながら食べる駅弁は格別ですね。
平日は仕事帰りに
さて。週末の賑わいに対して、平日の会場はどのような雰囲気なのでしょうか。
大勢のお客さんが集まる週末は当然ながら競争も激しいので、お目当ての駅弁をゆっくり選ぶなら、平日の昼間に出掛けたいところ。例年であれば、会期中に一度は「駅弁休暇」と称して有給休暇を申請している筆者も、今年は前半戦に連休があった都合で野望を遂げられませんでした。
そこで、会期中は何があっても「ノー残業」を心に留め、日中は一生懸命働き、終業時刻とともに職場を出て、いそいそと会場へ向かいました。ここでは、閉店間際の会場の様子をご紹介しましょう。
閉店時刻の1時間前。平日の19時をまわると、4階の輸送駅弁会場はかなり品薄になっています。こうなると、お目当てを求めて行くというより、その日その時の出合いに選択を委ねる感じでしょうか。
各地の駅弁がぽつんぽつんと残っているのを眺めて、好みの駅弁が残っていればラッキー。それも、「肉か、魚介か」くらいの軽い気持ちで選べる気楽さが、仕事帰りの疲れた脳にはちょうどよく感じます。開店直後の輸送駅弁の賑わいはとても楽しいものですが、選択肢が多いほど悩ましいという側面もあるんだな、と思いました。
しかし、同じ時間帯でも、日によっては「完売」の掲示が……。会場の様子を覗いて、すっかり空っぽになった陳列棚が並んでいるのを見たら、落胆より爽快さが先にきました。これもまた、嬉しいじゃありませんか。案内に立っていた店員さんと、「商売繁盛! よき!」と、思わず笑ってしまいました。
仕事帰りに参戦するなら、実演駅弁が集まる7階の大催場へ直行するのもいいと思います。輸送駅弁と違い、売り切れるタイミングも比較的遅いのが特長。何より、その場で “できたて” が買えるのだから、美味しさもピカイチです。
調理するライブ感を楽しみながら会場をぐるりと回遊、夕飯に駅弁を選び、晩酌のお供や食後のおやつを求めて全国のうまいものを見ながらさまよっていると、一日の疲れが程よくリセットされる気がします。
出品された駅弁は315種類、食べた駅弁35個
公式サイトで提供された「駅弁リスト」を見ると、今大会に出品された駅弁は計315種類。そのうち、実演駅弁は79種(平均価格1,562円)、輸送駅弁は236種(平均価格1,253円)でした。主催側が企画した豪華駅弁や記念丼といった実演駅弁は、付加価値がプラスされる分、高価格帯の商品が多くなりますが、今年は、それも会期を通してよく売れていたように見えました。
出品された商品のなかで、最も高い駅弁は『佐賀牛サーロインのみで作った極みステーキ&すき焼き弁当』3,780円。最も安いのは、千葉県『トンかつ弁当』550円。千円札1枚で買える駅弁は年々少なくなっています。でも、さまざまな経費が高騰しているさなか、遠い地域の駅弁が送料なしで楽しめるのは、本当にありがたい限りです。
筆者の今大会の実績は、合計32種類(実演駅弁14種・輸送駅弁18種)。うち3種類は期間中に “再履修” したため、食べた総数は35個、総額にして41,298円になりました。例年に比べて控えめではありますが、過去に食べたことのない駅弁が全体の3分の2を占めたことを考えると、保守よりは攻めの姿勢で終えた気がします。
今回食したおすすめ駅弁は別記事で詳しくリポートしています。
年末から感染拡大が心配されていた、オミクロン株の第6波。今年の駅弁大会は、感染爆発する“既(すんで)”のところで会期を終えました。
厳しい状況下での開催でしたが、会場にこれだけの活気を呼び戻したのは、昨年の経験から得た創意工夫がそこここに活かされた結果だと思います。特に、通販を利用した事前予約サービスは、お目当ての駅弁を必ず買える安心感があり、時間に制約がある身には大変ありがたいシステムでした。
運営される側の大変なご尽力に心から感謝し、来年もまた、各地の駅弁に出合う日を楽しみにしています。そのころには、安心して旅が楽しめる状況になっていますように。
ありがとう、駅弁大会。また来年、会いましょう!
マルワ
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※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。
【筆者】駅弁こんしぇるじゅマルワ
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駅弁大好き歴25年。平成の”Windows95”時代から某IT企業のインストラクターとして全国の官公庁・小中学校へのパソコン導入に携わりながら、各地の駅弁や名産品を食べ続けるうち「うまいもの」「みやげもの」で日本地図が描けるようになりました。これまで全国を旅して食した駅弁は2,000個以上、「駅弁大会」と聞けば連日通って“大人買い”、休日は朝昼夕と駅弁が食卓に並ぶような家庭です。時々ちょっと苦手な食材もありますが、そこはすべて「実食」してのルポがモットー。食味の感想には個人差がありますので、その点はご容赦ください。