更新日: 2023年1月29日
北鎌倉のさらに北! 鎌倉の最果てを巡る散歩旅
新型コロナウイルスの心配もあり、できるだけ人が少ない場所へ行きたいという方も多いのではないでしょうか。
今回は、観光地として人気の北鎌倉中心エリアからさらに北へのぼり、北鎌倉と大船の境にある常楽寺から、六国見山森林公園までの所要時間5時間の半日で回れる散歩旅 をご提案します。
こんなときこそ観光地から少し離れ、地元の人しか知らない隠れたスポットを散歩してみませんか?
目次
北鎌倉エリアについて
北鎌倉は観光客で賑わう鎌倉駅周辺のエリアとは違い、歴史ある寺院が並ぶ閑静なエリア。山々に囲まれた自然豊かな場所が多く、四季折々の風景がたのしめる観光地です。
JR新宿駅から北鎌倉駅までは湘南新宿ライン特別快速で55分。都内からのアクセスの良さだけでなく、鎌倉駅から横須賀線に乗れば1駅で行けるため、鎌倉観光のついでとしても人気があります。
まずは常楽寺へ向かいましょう。
常楽寺までは大船駅から歩いていくルートと、北鎌倉駅から歩くルートがあります。大船駅からは徒歩で15分。北鎌倉駅からは徒歩で約25分です。
今回は北鎌倉駅から出発。
東口改札を出てすぐに左へ向かい、さらに北(大船方面)へ約25分歩きます。
鎌倉北条氏ゆかりの寺「臨済宗 常楽寺」
常楽寺に到着しました。
鎌倉市の指定文化財にも認定されている常楽寺はもともと、鎌倉幕府第3代執権・北条泰時が、1237年に義母供養のために建てたもので、当時は「粟船御堂(あわふねみどう)」という御堂でした。歴史をさかのぼると昔はこの近辺も入り江で、粟を積んだ船がつながれていたということから、この地に「粟船山」と名付けられたそうです。
北条泰時没後は、法名である「常楽寺殿」から「常楽寺」と名付けられました。
美しく手入れされた常楽寺の境内
まっすぐ進むと仏殿。右手には庫裏と本堂客殿、左手には文殊堂があります。
山門に一礼し右手の木戸から境内へ入ると、きれいに手入れされた木々が迎えてくれます。
仏殿へ向かう途中にあるイチョウの木は常楽寺にいた最初の和尚さまが植えたものと言われており、なんと推定樹齢は800年近くとのこと。
昭和13年8月30日に台風の通過で倒れたのですが、その後たくさんの人の手によって再生されました。再生当時は幹部分だけでしたが、現在は周りにいくつも生えた、ひこばえと呼ばれる若芽が成長し、折れた大木を守るように葉をつけています。
イチョウの紅葉を楽しむのなら11月下旬〜12月上旬頃、ひこばえの姿を観察したいのであれば、イチョウの葉が落ちる1月~2月頃の参拝がおすすめです。
常楽寺には狩野雪信 (かのう・ゆきのぶ)の雲竜図や北条泰時の墓も
イチョウの木の奥にある仏殿へ。仏殿には神奈川県重要文化財に指定されている本尊の阿弥陀如来像、脇侍(きょうじ)の観音、勢至菩薩像(せいしぼさつぞう)が安置されています。
天井には狩野雪信(かのうゆきのぶ)作の雲竜図が描かれているのですが、「竜が夜な夜な動き回る」と言われ、龍の眼はつぶされています。
どんな暴れん坊の龍が描かれているのか……!実際に自分の目で確認してみてくださいね!
仏殿の裏へ回ると石碑があり、その奥には墓石3基並んでいます。左から「大応国師(だいおうこくし)」、「龍淵和尚(りゅうえんおしょう)」、「北条泰時」のもの。北条泰時没後の一周忌、十三回忌もこの寺で執り行われた記録が残されています。
さらに、源義高のものといわれる墓石や、北条泰時の娘であり、三浦泰平の妻である宮姫のものといわれる石の祠(ほこら)も徒歩3分で行ける裏手の山にあります。
受験や試験の祈願に、常楽寺の文殊菩薩
仏殿の左側にある文殊堂には、蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)ゆかりと言われる「文殊菩薩像(もんじゅぼさつぞう)」が安置されています。こちらの文殊菩薩像は日本七文殊のひとつ。
文化保存などの観点から秘仏とされ、普段は見ることができず、毎年1月25日に行われる「文殊祭」でのみ開帳されます。文殊祭では般若心経の読経のほか、経典がじゃばらのようにまくられる様子が見られるとあって、多くの参拝客が訪れます。
ちなみに「三人よれば文殊の知恵」という言葉があるように、物事のあり方を正しく見極める力や判断力を意味する「智慧(ちえ)」を司る常楽寺の文殊菩薩。受験や試験などを控えた人がよくここに訪れるそうですよ。
常楽寺
- 住所
- 神奈川県鎌倉市大船5丁目8-29
- 交通
- JR東海道本線大船駅から江ノ電バス鎌倉湖畔循環で5分、常楽寺下車すぐ
- 営業期間
- 通年
- 営業時間
- 9:00~16:00(閉門)
- 休業日
- 無休
- 料金
- 情報なし
常楽寺をのぞむ「楽庵」でランチタイム
常楽寺を満喫した後は、文殊堂の横にあるカフェ「La qwan楽庵(らくあん)」でひと休み。休憩がてらお昼ご飯をいただきます。
建築士のオーナーが自ら改修した建物は、シンプルモダンなテイストで自然に溶け込んだ造り。ギャラリーも併設され、期間限定で絵画や陶芸品の展示会も開催されています。
店内には4名掛けのテーブルと最大6名座れる囲炉裏席があり、ウッドデッキにはハンモックが用意されています。ウッドデッキのみ愛犬連れの入店もOK!
窓から入る心地よい風と常楽寺の借景、大きな吹き抜け窓から差し込む光に思わずうっとり……。まるで別荘に来たような気分で、ゆったりとした時間が楽しめます。
囲炉裏テーブルはオーナーの手作り。
1組限定で行うディナータイムには、おまかせ串焼きコース(4,000円~)が楽しめます。
楽庵いちおしメニューは「ナスとツナのソテーのガレット」。オーナー自ら仕入れる野菜とたっぷりのチーズ、ニンニクの相性がバツグンです!筆者のおすすめの食べ方は、黄身部分を途中まで残す食べ方。食べている途中で卵を割ると、味がまろやかに変化して二度楽しめますよ!
コーヒーも生豆から自家焙煎するというこだわりよう。3種類あるコーヒーの中から、ビターチョコレートのような甘さと苦さを味わえる「インドネシアマンデリン」をいただきました。お子さまには自家製のバナナジュース(500円・税込)もオススメです。
こちらのお店では、
・消毒用アルコールの設置
・定期的な換気
・検温チェック
・スタッフの健康チェック
を行い、すべての方が安心して過ごせるように対応しています。
■La qwan 楽庵
住所:神奈川県鎌倉市大船5丁目6-1
電話:090-1395-3686
交通:JR東海道本線大船駅から江ノ電バス鎌倉湖畔循環で5分、常楽寺下車すぐ
営業期間:通年
営業時間:11:00~18:00
休業日:日・月・火曜
料金:ランチ1,000円~1,500円
カード:不可(PayPayのみ可)
駐車場:なし
「長窪の切通し」を通って六国見山森林公園へ
楽庵をのんびり満喫したあとは、六国見山森林公園へ出発します。楽庵から六国見山森林公園展望台までは徒歩で約30分。公園へのルートはいくつかありますが、今回は高野台にある長窪(ながくぼ)の切通しを通るルートで向かいます。
「切通し」とは明治時代以前、まだトンネルの掘削技術が発達していない頃に、道路を切り開く手段のひとつとして使われていた手法です。とくにこの北鎌倉エリアは山々に囲まれていることから、鎌倉とほかの地域を結ぶために掘削された切通しが点在しています。
常楽寺交差点を鎌倉街道を横切り東側に進むと、すぐに上り坂のある住宅街に入ります。住宅街を登る途中に「至ル長窪経由六国見山」という看板(画像)を見つけました。ここから長窪の切通しまで徒歩5分。さらに住宅街を登ります。
長窪の切通しへ到着
住宅街を抜けると、高野公園入口横に雑木林が現れます。
雑木林に続く一本道へ入ると、高野の切通しへ到着。
まるで別世界にタイムスリップしたかのような景色が……!先ほどまで明るかった空も、この場所だけ高い木に覆われて薄暗く、神秘的な雰囲気を作り上げています。
距離にして100mほどですが、通り抜けたあとはまるで別世界にでも行ってきたのではないかと思うような感覚に襲われてしまいそうです。
この長窪の切通しは、かつて荘園だった山内荘と六浦荘を結んでいたのだとか。岩肌は荒く削られているのですが、ショベルカーなどの機械が無い時代に人の手で作られてきたのかと思うと、人間のもつ可能性を改めて感じます。
道自体は今も現役で、地元の人は生活道路として利用しています。地面は多少でこぼこしているものの、倒木などもなく歩きやすいですよ。
切通しを抜けるとまた住宅街へ。知らないうちにかなり標高が高い場所まで来ていたようで、出口を出ると右手には、大船の景色が広がっていました。ここまで来れば、六国見山森林公園まであと少しです!
六国見山森林公園入口に到着
住宅街を登りきると大きな森があらわれ、六国見山森林公園の入口が見えます。住宅街に囲まれている場所であるものの、野ウサギやキツツキなどの珍しい生き物が生息。豊かな自然が感じられる場所とあって、地元の方にとっても憩いの場所です。
六国見山北西部の丘陵地に位置しているため、公園内に山頂はありませんが、山頂にほど近い展望台までは20分ほど。六国見山の標高は147.31mと低山なので、登山をしたことがない方でも簡単に登れます。
鎌倉、横浜の街を一望できる六国見山森林公園展望台
六国見山森林公園展望台に到着!かつては相模、武蔵、安房、上総、下総、伊豆の六国が一望できたことから、「六国見山」と名付けられました。展望台からは鎌倉や江の島が、反対を向けば横浜ランドマークタワーや東京スカイツリーを見ることができます。
天気がいい日には西側に富士山も見られます。
この展望台は小高い丘になっており、その昔、富士山を神格化する富士信仰に基づいて人工的に作られた「富士塚」だったと考えられているのだそう。昔はこの富士塚を「お富士さん」などと呼び、ここから富士山を拝んでいたようです。
六国見山には白い花びらが特徴的なオオシマサクラの木が多く植えられ、春のお花見シーズンには多くの人が桜と富士山を求めて訪れます。
■六国見山森林公園
住所:神奈川県鎌倉市高野36番14
電話:0467-45-2750
交通:高野台バス停下車約20分
営業期間:通年
営業時間:公園内自由
休業日:無休
料金:無料
カード:不可
駐車場:なし
歴史あふれる北鎌倉の街並みをのんびり巡る
帰りは展望台から南口広場へ降り、そのまま北鎌倉駅に戻るのもいいですが、時間に余裕がある方は明月院や鎌倉湖(散在ガ池森林公園)方 面のルートを通ってさらに散策するのもおすすめです。
北鎌倉には一般には知られていないスポットがまだまだあります。楽庵をはじめ、地元のお店で地元ならではの穴場スポットを聞いて訪れるのも楽しそうですね。ぜひ、自分だけの北鎌倉観光を楽しんでください!
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