日本全国には約73万の橋が架かっています。その73万分の1、絶景を誇る「名」吊り橋を毎月ひとつご案内しています。
奈良の山の奥の奥に、大きな吊り橋があるのをご存知ですか?70年ほど前に村人たちの声によって生まれた、生活密着型の名吊り橋。今月は「谷瀬(たにぜ)の吊り橋」をご紹介します。
谷瀬の吊り橋
十津川にかかるスリル満点の大吊り橋
谷瀬の吊り橋は、日本一広い村、奈良県の最南端に位置する十津川村にあります。山また山の山奥を流れる十津川とともに暮らしていくため、村には現在でも60もの吊り橋が架かっています。
渓谷にかかる谷瀬の吊り橋は、渡る前からまるで宙に浮いているような感覚を覚えます。吊り橋から見える大自然も絶景ですが、周辺のキャンプ場や展望台から見る吊り橋そのものが、スリリングで見応えのある絶景です。
いざ、渡りましょう!
生活用鉄線吊り橋として日本一の長さを誇る谷瀬の吊り橋ですが、その歩道幅は板幅4枚。すれ違うのも少し緊張する幅で、一度に20人程しか渡ることしかできません。風のある日はとくに揺れるので、渡り切るにはちょっとした覚悟が必要です。
吊り橋を俯瞰したい方は、橋を渡った奥にある森山展望台へ。谷瀬の集落を通り227段の石段を上ると、吊り橋を見下ろす絶景が待っています。
地元の方々だけ自転車や
バイク通行が認められている
森山展望台から望む
十津川と谷瀬の吊り橋
谷瀬の吊り橋
開通年 1954年
全長 297m
高さ 54m
最大渡橋人数 20人未満
渡橋料金 無料
谷瀬の吊り橋は、戦後復興期の昭和29年に住民の力によってかけられた、重要な生活道路です。
吊り橋がかけられる以前、谷瀬の集落の人々は山を下り丸木橋で十津川を渡っていましたが、橋は洪水の度に流されていました。そこで谷瀬集落の人々は話し合いを重ね、私財を出し合い村の協力を得て大吊り橋が完成しました。
それから70年。谷瀬の吊り橋は今も大切な生活道路として活躍し、村一番の名所となっています。毎年8月4日の「はし」の日に行われている「揺れ太鼓」は、十津川村の夏の風物詩です。吊り橋を揺らしながら演奏される和太鼓の音色は、迫力いっぱいに渓谷に響き渡ります。
夜は真っ暗な谷瀬の吊り橋。
生活道なので24時間通行可能