現実世界でいつも探してしまう、大好きな作品のあのシーン。作品のなかには実際にモデルとなった場所がきっとあるはず!
この連載では、毎月憧れの世界をリアルで感じる聖地巡礼の旅へご案内します。
5月は広い世代に親しまれているスタジオジブリの作品『魔女の宅急便』の世界へ聖地巡礼トリップ!
取材・文:353
今月の聖地巡礼トリップは
色褪せぬ名作のモデルは
スウェーデン!
「ジブリアニメ」の金字塔であり、もはや「アニメ」というジャンルを超えたひとつの「物語」として広い世代に親しまれている作品『魔女の宅急便』。
角野栄子さんによる同名の児童文学書を原作に持つ本作が、宮崎駿監督によってアニメ化されたのは1989年。公開から35年が過ぎた今でもテレビでは定期的に放映され、そのたびに「ニシンのパイ」などの名シーンがインターネット上を賑わせているのはすごいですよね。
というわけで、今回はそんな国民的アニメ作品『魔女の宅急便』のモデルとなった地を訪ねます!
舞台は公式に発表されている
ヨーロッパの古き良き街並みであろうことは一目瞭然な『魔女の宅急便』の舞台ですが、じつは公式に情報が出ているんです。それも、本などではなくホームページに!
スタジオジブリの公式サイトでメニューから「Q&A」を選ぶと、「作品の舞台はどこですか?」という質問があり、「大いに参考にした場所」として「スウェーデンのストックホルム、バルト海のゴトランド島ヴィスビーの町」と明記があります。こんなに頼もしい情報源はありません。
ストックホルム
「北欧のヴェネツィア」とも呼ばれる水の都
スタジオジブリが『魔女の宅急便』で「大いに参考にした場所」と発表しているロケーション・一つ目は、スウェーデンの首都・ストックホルム。
ストックホルムは、「北欧のヴェネツィア」とも呼ばれる水の都です。旅立ったキキが「海の見える街」を求めてホウキで飛んできたコリコの街。まさにその風景がここにはあります。
ストックホルム市庁舎
「海に浮かぶ街」の眺望
カモメと一緒に飛んできたキキが、黒猫ジジに「見て! 海に浮かぶ街よ!」と興奮混じりに話しかける風景。当然ながらホウキに乗れない私たちは飛行機でも飛ばさない限りこの絶景を空から見ることはできないわけですが、そんな私たちにも一つ、手段があるみたいです。
それは「ストックホルム市庁舎」の展望塔に登ること。ノーベル賞受賞者の晩餐会が開かれることで有名な、ストックホルム市庁舎。106mの高さを誇る展望塔もまた、ストックホルムのランドマークとなっており、展望台からはまさしく「海に浮かぶ街」な眺望をのぞむことができます。
なお、こちらの展望台には申し込み制のツアー(夏季限定)でしか登ることができないため、ご注意ください。
ストックホルム市庁舎
- 住所
- Hantverkargatan 1, 111 52 Stockholm
ストックホルム大聖堂
キキが最初に目をとめる
時計塔のモデル
キキが最初に目をとめるのは、コリコの街のシンボル、時計塔。「時計塔よ! 私こんな街に住みたかったの!」と喜び、映画終盤では大スペクタクルの舞台ともなります。ストックホルムの街に、この時計塔はあるのでしょうか。
じつは、先程の「ストックホルム市庁舎」の外観と、「ストックホルム大聖堂」の時計塔をミックスしたものではないかと言われているようです。
先ほども紹介した
ストックホルム市庁舎
ストックホルム大聖堂
- 住所
- Trångsund 1, 111 29 Stockholm
ガムラスタン
まさに『魔女の宅急便』の世界
ストックホルム大聖堂がある旧市街「ガムラスタン」も、『魔女の宅急便』の世界を存分に味わえる場所となっています。
「私、この街に住まわせていただきたいんです!」
コリコの街に一目惚れしたキキ。風格と可愛らしさを持ち合わせた街並みは、ストックホルムの旧市街「ガムラスタン」がモデルとみて間違いないでしょう。
「古い街」を意味する「ガムラスタン」は、13世紀に作られた歴史ある街。スターズホルメン島という島にあり、一時間もあれば一周できてしまうコンパクトな街となっています。この街に関しては、もう街全体が『魔女の宅急便』の世界そのもの!
あの路地も、あのトンネルも、あの窓も看板も壁飾りも、歩いているだけで胸がときめくこと必至です。
ホウキで空高く飛び上がるキキをトンボが見上げていた細い路地—を思わせる「モーテン・トローツィグ・グレン通り(幅90センチ。ストックホルムで一番細い小道、だとか!)」や、ひときわフォトジェニックな色彩の建物が立ち並ぶ「ストールトルゲット広場」など、コンパクトな街とはいえカメラ片手に歩いていたら一日楽しめそうですね。
ゴットランド島
ヴィスビー
バルト海に浮かぶ最大の島
スタジオジブリが『魔女の宅急便』で「大いに参考にした場所」と発表しているロケーション・二つ目は、バルト海に浮かぶ最大の島・ゴットランド島(※1)。なかでも、中世時代の城壁をほぼ完全な姿で残しているという都市・ヴィスビー(※2)は『魔女の宅急便』の世界を全身で味わえる場所と言えましょう。
(※1) 公式には「ゴトランド島」と表記されていますが、ここでは「ゴットランド」と表記します。
(※2) 「ヴィスビュー」と表記されることもあります。
「海の見える街」コリコの家並み
コリコの街と出会い、希望に胸を膨らませたキキが、しかし散々な初日を過ごした夕暮れ。ジジにまで「もっといい街があるよ、きっと」なんて慰められながらしょんぼりと見下ろしていた風景は、まさしくヴィスビーのもの。
赤茶色の三角屋根に薄黄色の外壁を持つ家々が立ち並び、その向こう側には広大なバルト海。ヴィスビーの高台からこの眺めを見たら、すっかりキキの気持ちになれそうです。そしてこの場所、映画の中では「グーチョキパン店」の前の通りなんですよね。
「グーチョキパン店」は実在するのか?
映画を観ている私たちをも「ほっ」とさせてくれる存在、おソノさんの「グーチョキパン店」。そのモデルについて確かな情報はありませんが、ファンの中ではこちらのお店が有力視されているようです。
また、ストックホルムのユールゴーデン地区にある野外博物館「スカンセン」には、店内の作りが「グーチョキパン店」と非常によく似た「パン屋さんの展示」があるそうです。店内では伝統的な作り方で実際にパンを作っており、買うこともできるとのこと!
「グーチョキパン店」のモデル店?
- 住所
- Södra Kyrkogatan 5, 621 56 Visby
ヴィスビーの輪壁
映画をよく見ると
輪壁があちらこちらに
先程も少し触れましたが、ヴィスビーには中世の時代に築かれた城壁(輪壁)が限りなく当時の姿で現存しており、ユネスコの世界遺産にも登録されているんです。
よく見てみると『魔女の宅急便』のコリコでも、この城壁はあちらこちらに登場。たとえばキキとトンボが自転車で転げ落ちた後のシーンなど、トンボの後ろにしっかりと「輪壁」が描き込まれています。
終盤の大スペクタクル、倒立し制御不能となった飛行船に野次馬が群がるシーンでも、城壁から見ている人々が描かれていますね。ちなみにこの「飛行船事故」にも、モデルとなった実際の事故があるそうです。
『魔女の宅急便』の舞台は
いかがでしたか?
スウェーデンの『魔女の宅急便』にまつわるスポットをご紹介してきました。
そして『魔女の宅急便』という作品。春から始まった新生活で、思うようにいかず悶々としている方にこそ観てもらいたい映画だと、今回あらためて感じました。人生は落ち込むことばかり。でも、せめて「この町が好きです」と言えたらいいですね。