『コ』の字に曲がる国道が教えてくれる!新エネルギー計画によって消えた村
新潟市から越後七浦シーサイドラインを富山へ向い、日本海に浮かぶ佐渡島を眺めながら走ること約30㎞。突然左に多くカーブを描いて内陸へ向かい再び日本海へ戻っていく不自然な区間があります。このあまりにも不自然な区間、気になります。
不自然な『コ』の字に曲がる国道402号
日本海沿いに走る国道402号は新潟から寺泊までを越後七浦シーサイドラインとよび、日本海に沈む夕日の絶景を見ることができるドライブにぴったりな道路です。近くには岩室温泉や弥彦山、弥彦神社など一度は立ち寄りたい観光地が点在しています。
問題の区間を地図で確認して見てみるとルートが『コ』の字になっていることがわかります。そのまま海岸線を進めば良いものをあえて山側へトンネルまで通した大事業。普通では考えられない迂回ルート!迂回した土地にはいったい何があったのでしょうか。
『コ』の字の地は「角海浜」
地図をみると『コ』の字の場所には「角海浜」という地名があります。しかし、この角海浜。地図をよく見ると集落はなく、道路も行き止まり。ルートも不自然なら地域も不自然。角海浜とはどのような場所だったのでしょうか。謎は深まるばかりです。
毒消し発祥の地「角海浜」
坂口安吾の安吾新日本風土記によると富山の薬と越後の毒消しで角海の地名が登場しています。江戸時代に角海浜にあった称名寺に伝わる薬を行商用の薬として販売し、全国に知れ渡ることによって角海浜は毒消し発祥地として知られるようになりました。江戸時代の角海浜には称名寺のほかに約200軒の民家があったと言われています。しかし、時代が進むにつれて民家は徐々に減っていき、1974年に廃村になりました。
『コ』の字の誕生と新エネルギー計画によって消えた村
1971年に角海浜は原子力発電所立地の候補地点として公表されます。計画当初、角海浜のある巻町は用地取得に前向きでしたが、その後に実施された住民投票により計画への反対票が賛成票を上回り、さらには町民との住民訴訟を経て2003年に巻原子力発電所計画は撤回となりました。
このように角海浜は原子力発電所の計画により角海浜が廃村。建設予定地を避ける形で国道402号が迂回するルートに変更した結果、不思議な「コ」の字が誕生したのです。
角海浜の今
原子力発電所計画の撤回。国道ルートの変更によって角海浜はどうなっているのでしょうか。角海浜は立ち入り禁止地域となっており行くことはできません。航空写真を見る限りでは過去に集落があった形跡は見られず自然に帰ってしまったかのようです。原子力発電所建設に翻弄された角海浜。ひっそりと時を刻んでいます。
もう一つの角海浜
角海浜から富山へ向かうこと約40Km。柏崎市に角海浜と同じような道路形状が現れます。ここには柏崎刈羽原子力発電所があり、もし角海浜で計画が実現されていれば、このような風景が見られたのかもしれません。
参考資料 新潟市 東北電力 新潟県教育委員会 ゴマブックス
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