横浜の中心市街地は移動する！　古地図から見る街の移り変わり

少年B：
前回、わたしの「横浜の中心地はわかりづらい」という発言に対して、今和泉さんが「港町は中心市街地が移動する」という説を出したところから話をしたいと思います。いったいどういうことなんですか？

今和泉：
たとえば、城下町であれば城が中心なんです。江戸城（＝皇居）とか、熊本とか、金沢とか。

少年B：
熊本に住む友達が「熊本駅はちょっと外れにあって、繁華街は市役所や熊本城のあるエリアだ」って言ってましたね。

金沢は祖父母が住んでいたんですが、確かに繁華街の香林坊は金沢城公園の近くにありますね……。近年は金沢駅周辺も栄えてますが。

▲金沢は典型的な城下町。金沢城周辺には公共施設・文化施設が多い

今和泉：
そう、城の権威は殿様がいなくなっても衰えづらいんです。「城＝誰しもが行きたい場所」という中心性が残るんですね。金沢の場合、最近駅前に大型商業施設（フォーラス）ができたことによって、若者はそっちに集まっていて、街の重心が駅前に移っているという側面もあります。

石川県庁は2003年に城址付近から郊外に移転しています。このように、中心的な施設が移るパターンはありますが、金沢城周辺は金沢21世紀美術館等、文化施設ができるなど、文化的な価値が高い場所としての中心性は残ります。

少年B：
なるほど……。でも、城跡はどうして栄えるんでしょうか。なにか理由があるんですか？

今和泉：
明治維新で殿様が消え、残された城は官有地になりました。明治になってから必要になった学校、役所ができて、明治以降も中心性を持つ場所になったわけです。軍用地になることもありましたが、戦後になると閉鎖され、多くの都市で城址公園や新制大学として整備されました。

城の近くには武家屋敷がありました。武家地は1区画が大きく、官庁街に近いことからオフィス街になりやすいんです。官庁街や文教地区って、いわば治安のいい中心地、といったところではないでしょうか。

少年B：
治安がいいからこそオフィスや学校ができるんでしょうしね……。

今和泉：
一方、商店や飲食店は控えめなので、中心部でありながら夜は静かで、賑わいようがありません。治安が悪くなる要素がないのです。

少年B：
ああー、言われてみれば確かに！

今和泉：
治安のいい中心市街地は、そりゃ栄えますよね。そして地元民の間で、お城はアイデンティティの中心になるんです。城郭が残ってない都市でも「あそこはむかし城だったんだよ」みたいな話、よく聞きませんか？

ちなみに、商人や職人の住んでいた町人地は商店街や歓楽街になることが多く、こちらも繁華街になりやすいんですが、一方で治安が悪くなる可能性を秘めている地域でもあります。横浜市は港町で、江戸時代で言う町人地が広がっています。どこも歓楽街になり得る街なんですよね。

少年B：
江戸時代の用途地域が現在にも影響を与えているって話、おもしろすぎますね……！