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工業地帯から観光地に変わった新港町

今和泉:
まずは海岸通りから右側。この地図は上が北じゃないので、北東ですね。これが全部倉庫になっています。戦前からある、歴史の古い倉庫街です。

▲1985年の新港町は倉庫街。万国橋と新港橋でアクセスする(クリックで拡大)

少年B:
本当だ。道路より線路のほうが多いぐらいですね。ええと、万国橋ってことは……。ここ、現在だとワールドポーターズとか、赤レンガ倉庫のあるあたりですね!?

▲同じ場所の現在。まったく面影がない(クリックで拡大)

今和泉:
そうです! 赤レンガ倉庫は1985年の地図にも載ってますよ。

少年B:
えっ? どこに???

今和泉:
赤レンガ倉庫は横浜税関新港埠頭の保税倉庫なので、「第一号保税倉庫」「第二号保税倉庫」と書いてある建物がそうです。

▲赤レンガ倉庫は当時の地図にも載っている*

少年B:
これか! 赤レンガ倉庫の間のスペース、広いなとは思ってたけど、ここに線路があったんですね。その近くの新港橋って確か、現在は象の鼻パークがあるあたりですよね。

今和泉:
そうです、象の鼻パークは三菱倉庫と住友倉庫ですね。このあたりの倉庫が、今はぜんぶ観光地になっているという。

少年B:
あと、待ってください。この貨物線の横浜側、これってもしかして汽車道ですか?

▲汽車道には現在も線路が残っている*

今和泉:
さすが、7年住んでいただけあって、カンが鋭いですね。当たりです。

少年B:
2021年春には、桜木町駅とワールドポーターズ前を結ぶ、ロープウェイの「YOKOHAMA AIR CABIN」がオープンしましたよね。わざわざ新しく作らなくても、この貨物線を残しておけば、横浜駅から直でワールドポーターズに行けたのに、何だかもったいないですね。

今和泉:
それはどうでしょう。ロープウェイはもちろん移動手段でもありますが、「高所からみなとみらいの風景を楽しむアトラクション」といった側面が強いと思います。だから、鉄道とはそもそもの目的が違うんでしょう。

少年B:
なるほど、目的が違えば乗り物も変わってくるってことなのか……!

▲新港町の中心には米軍施設がある*

今和泉:
ほかにも、新港町のど真ん中に米軍施設がありますよね。ちょっと周りから浮いているように見えます。なぜでしょうね〜。

少年B:
横浜ハンマーヘッドの手前ぐらいの位置ですね……。えーっ、何でだろう。

今和泉:
正確な理由は分かりませんが、横浜市の主要部が米軍に接収されていた影響を感じます。横浜市は港湾施設の約90%、全市街地面積の27%を接収されていたそうですよ。まぁ、貿易関係や外交関係における重要な拠点なので、米軍としてはそりゃ押さえたいですよね。

少年B:
終戦って1945年でしたっけ。ちょうど40年も経ってるのに、まだここに残ってるんだ。

今和泉:
そうなんですよね。この地図の範囲からはちょっと外れますが、横浜は現在でも米軍施設がたくさんありますから。

▲1946年に接収され、現在も米軍用地となっている瑞穂埠頭

少年B:
言われてみれば確かに……。でもこうして見ると、デートコースの定番となったいまとは雰囲気がぜんぜん違いますね。

今和泉:
時代背景も含めて考えると、この当時はここを歩いていた女性はいなかったでしょうね……。今でいうと川崎の扇島みたいな、純然たる工業地帯のような雰囲気なんじゃないでしょうか。では、この倉庫街はどこに移ったのか?という話をしたいと思います。

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※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

【筆者】少年B

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1985年生まれのフリーライター。地図自体に造詣が深いわけではないが、地図を見ながら「こことここの間に道路ができたら便利だなぁ」などと妄想を膨らませるのが趣味のひとつ。(Twitter:@raira21

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