更新日: 2024年6月13日
地図から世界を見てみよう。ウクライナってどんな国?
連日のようにニュースで報道されているウクライナ。しかし、「ウクライナがいったいどんな国なのか」ということについては、知られていない部分も多いと思います。
報道ではウクライナの地図や衛星写真がたびたび登場します。ただ地図や写真を見ているだけでなく、実際に描いたり、さまざまな要素を重ね合わせたり、ひと工夫することで、よりその地域への理解や思いが深まる。そんな経験を持つ地図のスペシャリストに、お話を聞きました。
昭文社広報の竹内さんは小学生の娘さんに「ウクライナってどんな国なの?」と聞かれ、手描きで地図を描いたところ、情報がすっと頭のなかに入ってきたといいます。そこで、今回は空想地図作家の今和泉さんと一緒に、身近な地図からウクライナという国を見ていきましょう。
1969年生まれ。5歳の頃から昭文社の都市地図に親しみ、今和泉さん同様、小中高大と空想地図を描いて育つ。1996年に昭文社入社し地図編集部へ配属、以降都市地図、県別マップル、マックスマップル、でっか字マップル、なるほど知図帳等の編集に従事。旅行書編集部を経て2014年から広報を担当。
1985年生まれ。7歳の頃から実在しない都市の地図=空想地図を描き続けている「空想地図作家」。地図デザイン、テレビドラマの地理監修・地図制作にも携わる他、地図を通じた人の営みを読み解き、新たな都市の見方、伝え方作りを実践している。(Twitter:@chi_ri_jin)
1985年生まれのフリーライター。地図自体に造詣が深いわけではないが、地図を見ながら「こことここの間に道路ができたら便利だなぁ」などと妄想を膨らませるのが趣味のひとつ。(Twitter:@raira21)
地図情報が少ないウクライナ
少年B:
竹内さんは初めましてですね。何でも、小学生の娘さんに「ニュースでよく見るウクライナってどんなところなの?」と聞かれて、ウクライナの地図をご自身で描いて説明したとのことですが。
竹内:
そうなんです。いまは個人的にウクライナの地図を描いて日々更新しているのですが、頭への入り方がまるで違います。見るのと描くのとでは大違いでした。
今和泉:
私も興味がありますね。ウクライナのことは人並みにしか知らないので。
少年B:
そもそもの問題として、小学生なら地図帳を見ればいいのでは?という気がするんですが、それではダメだったんですか?
竹内:
小学校の地図帳では、日本国内と海外が1冊にまとまっていますよね。ヨーロッパの部分を見ると国別に色分けされた地図が出てくるんですが、1つの国に注目すると、首都と、あとは主要な都市や交通、大河川くらいの情報になってしまうんですよね。
竹内:
もちろん、小学校の地図帳は学習指導要領にのっとって作られているので、それはそれでいいのですが、ただ、「ウクライナという国を理解するためのツール」としてはもっと詳しいものがほしくなりますよね。
少年B:
たしかに、イメージとしては「ヨーロッパ全域」って感じの地図ですよね。ロシアの西部がちょこっと見切れてるぐらいの。
竹内:
中学校の地図帳になると、もうすこし詳しくなって、気候や産業などの資料も記載されています。しかし、ページが「ヨーロッパ」と「ロシア」に分かれているので、ちょうどその間にあるウクライナはちょっと捉えにくくなるんですよ。
少年B:
ロシアが侵攻した理由として、「ウクライナは西側諸国とロシアの間の緩衝地帯にしたいから、ウクライナのNATO加盟は認めない」なんて報道もされていましたが、そんな地理的条件が地図帳の上でも明確になっているんですね。
今和泉:
では、昭文社の地図はどうなんでしょうか。
竹内:
『なるほど知図帳 世界』の最新版でも、「東ヨーロッパ」というページに載っているのみです。わかるのは都市の位置関係と、地名、交通、自然地形といったところまで、ですね。
今和泉:
最近出た「地図でスッと頭に入るヨーロッパ47カ国」は情報量が多そうですが。
竹内:
こちらは文化や名所などの情報は詳しく載っているのですが、あくまでも情報のために地図を利用しているので、世界地図とはまた趣が違うんですよ。
少年B:
そうか、「ヨーロッパのなかの1国」という視点でとらえたイラスト地図しかないんですね。ウクライナという国について詳細に描かれた「日本地図」レベルの地図はないと。
正直、今年になるまでウクライナに注目している人なんてほとんどいなかったような気がしますもんねぇ……。
今和泉:
もし「国別マップル」なんてものを作ったら……。私個人はすごく欲しいですけど、売れるかどうかは別問題ですからね。
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