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知られざる小さな飛行場を、空から追う 

1948年米軍撮影/出典:国土地理院

冒頭の地図のおよそ20年前、1948(昭和23)年の空中写真です。終戦から間もない頃だからでしょうか、撮影者はアメリカ軍です。
この時点では、飛行場の滑走路らしきものは、確認できません。
当時はこの有明地区は、東側にある水路により、対岸(東雲地区)と隔てられています。まるで孤島のように、橋(都橋)一本で陸上と結ばれていました。

1956年米軍撮影/出典:国土地理院

もう一枚、見てみましょう。1956(昭和31)年の空中写真です。
ありました!
画面中央には、南北に貫く一本の滑走路が確認できます。となると、「1953年開場」という情報と矛盾していません。

1975(昭和50)年撮影/出典:国土地理院

冒頭の地図から17年後の空中写真です。カラーになり滑走路がよく見えます。目を凝らしてみると、滑走路北側には、小さな飛行機たちが止まっているのが
わかります。滑走路東側にあった水路は埋め立てられ、隣の東雲地区とは完全に陸続きです。先述の都橋も消えてしまいました。
左上の水上に浮かんでいるのは、有明貯木場の木材です。木材が、びっしりと水面を埋め尽くしている様子が、見て取れます。

さてその後、この飛行場は1980年に廃止され、短い歴史に幕を閉じます。東京航空は茨城県・阿見飛行場に拠点を移転しました。
廃止された理由は、滑走路周辺で高速道路の建設計画が本格化したため、ということのようです。

飛行場の隣にあったゴルフ場。その後どうなった?

飛行場の隣にあったゴルフ場。その後どうなった?

ここで、飛行場に隣接していた「東雲ゴルフクラブ」についても、簡単に触れておきましょう。

■東雲ゴルフ場 (江東区有明 1952年開場1981年閉場)
このゴルフ場は、周囲にはまだ何もない頃に、10号埋立地(有明地区)に建設されました。都心に近かったこともあり人気のコースだったそうです。
設計は、名匠といわれた井上誠一(1908-1981)。日本のゴルフ場設計の第一人者とも称された人物で、多くの名門といわれるゴルフコースを手掛けています。特に、2021年、東京五輪会場となった「霞ヶ関カンツリー倶楽部」(埼玉県川越市)はよく知られています。

こちらは現在のゴルフ場跡地です。すっかり様変わりしていますね。北側にあった「有明貯木場」は埋め立てられ、学校が建っています。
「有明テニスの森公園」は、2021年、東京五輪・テニス競技の会場になりました。このエリアでは他にも、バレーボール(有明アリーナ)、体操(有明体操競技場)などの五輪競技が行われています。
ゴルフからテニスへ。スポーツという共通項で、過去と現在がつながっていたのですね。

飛行場跡地は、意外?なものに変わっていた

飛行場跡地は、意外?なものに変わっていた
2022年発行 街の達人 東京23区/昭文社 より 

さて、話は飛行場に戻ります。現在の地図を見てみましょう。
何と!学校になっているではありませんか。大学、高校、中学校、そして小学校もあります。ちょっとした「文教エリア」です。
飛行場跡地はしばらくの間、空地になっていましたが、21世紀に入った頃から学校の移転・整備が進みました。

地図では、ちょうど「東京有明医療大」や「有明教育芸術短大」がある付近が、かつて小型機が駐機していた場所になります。
滑走路はそこから南へと続いていました。高速道路の南にある公園(東京臨海広域防災公園)の北端あたりが、滑走路の末端にあたります。

高速道路が完成し、モノレール(ゆりかもめ)も走る街へと変容を遂げた、有明地区。
その激変ぶりは、ここではとても書ききれません。ただ、そこには、かつて小さな飛行場がありました。
その滑走路の上に立つ学校で学ぶ生徒さんたちは、おそらくその歴史を知らないのではないでしょうか。

さて、今回は、昭和40年代発行の地図から、埋立地の先にあった、知られざる飛行場の物語をお送りしました。
みなさんも「ちょっと昔」地図から、小さな時間旅行に出かけてみては如何でしょうか。

(参考にした資料:インターネット航空雑誌ヒコーキ雲、東雲ゴルフクラブ・ブログ)

1968(昭和43)年はどんな時代?

<出来事>
・霞ヶ関ビル竣工
・東名高速道路東京IC〜厚木IC間開通
・三億円強奪事件
・長編劇画「ゴルゴ13」の連載が開始
<流行語>
・とめてくれるなおっかさん
・ゲバルト
<映画・テレビ・音楽>
・映画「卒業」「2001年宇宙の旅」
・テレビアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」「巨人の星」
・ヒット曲: ヘイ・ジュード(ビートルズ)/星影のワルツ(千昌夫)/三百六十五歩のマーチ(水前寺清子)

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※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

現住所は地図雑学系ライター、本籍は地図実踏調査員。昭文社地図の現地調査歴15年以上の、自称「地理のプロフェッショナル」チームです。これまで調査・取材で訪問した市区町村は、およそ500以上。昭文社刊『ツーリングマップル』『全国鉄道地図帳』等の編集に参加しています。休日は、国内外の廃線、廃鉱など「廃」なものを訪ねる「廃活」、離島をめぐる「島活」中。好きな廃鉱は旧羽幌炭鉱、好きな島はサンブラス諸島(カリブ海)と大久野島。特技は「店で売ってる野菜の産地名⇒県名を当てること」。

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