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半世紀前の東京ミッドタウン 軍隊の街からインターナショナルな街へ

半世紀前の東京ミッドタウン 軍隊の街からインターナショナルな街へ
1969年発行 区分地図港区/昭文社 より

こちらが、冒頭の地図から、現在「東京ミッドタウン」となっているエリアを拡大したものです。
現在のミッドタウンの場所は、町名「赤坂九丁目」文字の辺り。その下に小さく「防衛庁」の文字があります。その広大な敷地内にはいくつもの建物が並んでいます。

防衛庁前の外苑東通りには、東京都電(路面電車)の水色の軌道が通っているのがわかります。この路線をたどると、北は青山方面、東は虎ノ門・芝方面へ続いています。都電はまだこの時代、都民の足として活躍していました。

かつて六本木は「軍隊の街」でした。そもそも、防衛庁の置かれた場所は、終戦まで軍の用地だったのです。
明治時代に陸軍駐屯地がおかれ、以来、軍の街として発展します。1936年に起こったクーデター未遂「2.26事件」。その主役の青年将校達は、ここの部隊の所属だったそうです。

その後終戦を迎えると、これらの駐屯地はアメリカの進駐軍に接収され、一気にアメリカ兵の街へと様変わりします。彼らを相手にした様々な店が生まれ、発展していきました。今のこの街がもつ「オシャレで外国人が多い街」というイメージは、この経緯に由来しているのかもしれません。

実は、この地区は、およそ400年間!一般人が立ち入れないエリアでした。
というのも、江戸時代には大名・毛利家の下屋敷があり、明治時代には陸軍駐屯地となり、戦後進駐軍に接収され、その後防衛庁が置かれたためです。それが、防衛庁移転により、ようやく一般に開放されることになりました。

現在の「ヒルズ」と「タウン」

現在の「ヒルズ」と「タウン」
2022年発行 街の達人 東京23区/昭文社 より

こちらは、現在の地図です。図面中央下の「六本木ヒルズ」の巨大な建物群に目がとまります。

今回紹介した2つのエリアは、ともに2000年頃からほぼ同時期に再開発がスタートしました。六本木ヒルズは2003年に、東京ミッドタウンは2007年に完成しています。

都電は廃止されましたが、代わって都営地下鉄大江戸線か開通し、新宿、新橋方面からのアクセスが便利になりました。テレビ朝日は、少し場所を変えましたが、当時と変わらず残っています。

大名屋敷から軍用地を経て高層複合商業施設へと、大きく変貌を遂げたこのエリアですが、往時をうかがい知る痕跡は随所に残っています。ここで少しだけ、それを紹介しましょう。

ヒルズ内に「毛利庭園」の文字が見えます。江戸時代ここには大名・毛利家上屋敷がありました。以前は当時の庭園が残っていたのですが、再開発により現在の庭園に生まれ変わりました。江戸時代の所有者の名「毛利」が、今も受け継がれている、という訳です。
ミッドタウンには、大きな池のある「檜町公園」があります。かつてここにあった大名・毛利家下屋敷。そこで使われていた大きな石が、公園の擁壁として再利用されています。また、公園には防衛庁時代の樹木も移植されています。ここでも、歴史が継承されているのですね。

もうお気づきかと思いますが、ヒルズとミッドタウンは、元をたどれば同じ大名・毛利家の所有地だったことになります。ほぼ同時期に再開発が始まっただけでなく、こんなところにも共通点があったのです。

もうひとつ。地図の西端に「星条旗新聞社」という建物があります。ここは現役の米軍基地で、ヘリポートもあります。かつて陸軍駐屯地であった場所で、アメリカの進駐軍に接収された後 、未返還となっています。23区内唯一の米軍基地であり、アメリカ大使館にも近接する好立地のためか、返還がなかなか進まないようです。これらの事実も、かつてこのエリアが「軍隊の街」だった歴史を物語っています。

さて今回は、1969年発行の地図から、六本木エリアの意外な歴史を紐解いてみました。
みなさんも「ちょっと昔」地図から、小さな時間旅行に出かけてみては如何でしょうか。

【参考とした資料:ラクティブ六本木サイト、アールネットサイト、公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団サイト、東京ミッドタウンサイト、森ビルサイト、港区サイト】

1969(昭和44)年はどんな時代?

<出来事>
・アポロ11号・人類初の月着陸
・東名高速道路全通
・東大安田講堂占拠事件
・甲子園史上初の決勝引き分け再試合(松山商対三沢)
・都電33系統(浜松町一丁目~六本木~四谷三丁目)廃止
・「世界貿易センタービル」完成・当時日本一の超高層ビル(1970年3月)
<流行語>
・あっと驚くタメゴロー
・オー、モーレツ!
<テレビ・音楽>
・テレビアニメ「サザエさん」放送開始
・ヒット曲:夜明けのスキャット(由紀さおり)/港町ブルース(森進一)/ブルーライト・ヨコハマ(いしだあゆみ)

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昭文社が刊行してきた都市地図には、道路や鉄道、河川など街の骨格となる情報はもちろん、町丁名や地番、学校・役場などの公共的施設から、住宅団地やアパート、スーパー・デパート、工場や倉庫などの民間施設まで豊富に掲載してきました。収録内容も時代とともに変化するなど、地図はその時々の景観や暮らしが垣間見える「街の記憶」でもあります。

この商品は昭和40年代以降に出版した大判の都市地図から、時代の変化がわかる4世代の地図を選出・複製し、どこでも手軽に利用できる電子書籍として編集・構成したものです。

銭湯や映画館、銀行や郵便ポストなど生活密着の情報から、住宅団地の整備、工場跡地の再開発まで、様々な街の様子や移り変わりを地図から読み解きつつ、昭和から平成に至る社会の変化と合わせて時間を辿ってみてはいかがでしょうか。

<商品の概要>
◆収録されている都市地図の刊行年 「1968年」「1985年」「2001年」「2014年」

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※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

現住所は地図雑学系ライター、本籍は地図実踏調査員。昭文社地図の現地調査歴15年以上の、自称「地理のプロフェッショナル」チームです。これまで調査・取材で訪問した市区町村は、およそ500以上。昭文社刊『ツーリングマップル』『全国鉄道地図帳』等の編集に参加しています。休日は、国内外の廃線、廃鉱など「廃」なものを訪ねる「廃活」、離島をめぐる「島活」中。好きな廃鉱は旧羽幌炭鉱、好きな島はサンブラス諸島(カリブ海)と大久野島。特技は「店で売ってる野菜の産地名⇒県名を当てること」。

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