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東京の銀行、その数は減っている?増えている? 意外(?)な事実
ところで、東京都内にある銀行の店舗数は、この時代と現在を比べてみると、どう変化しているのでしょうか。気になったので調べてみました。
この1969年当時、東京都にはおよそ1200店の銀行本支店が存在していました。(注1)
一方、直近の2019年では、およそ1200店となっています。半世紀前と比べて、ほとんど変化がありません。(注2)
銀行は合併や統合が進んだので、店舗数は減ったと予想していましたが、これは意外な結果でした。
上記は、銀行の「店舗数」ですが、では、企業としての「銀行数」はどうでしょうか。
全国の銀行数は1971年度、156ありました。1996年頃には約170となり、この時期をピークとして減少します。そして2020年度は134となっています。(注3)
こちらは減少していますね。これは、銀行の合併統合が進んだため、と考えてよいでしょう。
ここまでの話をまとめると、「銀行の合併が進んだものの、東京都内の銀行店舗数は、半世紀前からあまり変化していない」ということになります。もしかすると、統廃合で減少した店舗数と、街の発展により新規開店した店舗数は、ちょうど同じくらいの数だったのかもしれません。
(注1) 銀行とは、都市銀行、地方銀行、第二地方銀行、相互銀行、信託銀行を指します。
(注2) 出典:東京都統計年鑑 金融 昭和44年・令和元年
(注3) 出典:預金保険機構 預金保険対象金融機関数の推移
「ちょっと昔地図」から、ちょっとした銀行合併の歴史を学ぶ
さて、ここで冒頭のクイズの答えです。
【正解】①太陽銀行⇒三井住友銀行 ②拓銀⇒三井住友信託銀行・北洋銀行
③協和銀行⇒りそな銀行 ④東海銀行⇒みずほ銀行
みなさんの結果は如何だったでしょうか?
太陽銀行は、日本相互銀行を前身とし、東京に本店を置く都市銀行でした。1973年、神戸銀行との合併により太陽神戸銀行となりました。その後、太陽神戸三井銀行→さくら銀行→三井住友銀行と変遷しています。
北海道拓殖銀行は、北海道を地盤とする都市銀行でしたが、1997年に経営破綻しました。事業は、札幌に本店を置く北洋銀行と、東京に本店を置く中央信託銀行に継承されます。中央信託銀行は、現在の三井住友信託銀行になります。
協和銀行は、日本貯蓄銀行を前身とし、東京に本店を置く都市銀行でした。1991年、埼玉銀行との合併により協和埼玉銀行となりました。その後、あさひ銀行→大和銀行→りそな銀行と変遷しています。
東海銀行は、名古屋に本店を置く都市銀行でした。2002年、三和銀行との合併によりUFJ銀行となります。その後、三菱UFJファイナンシャル・グループとなり、現在に至っています。
昔も今も銀行が並ぶ亀戸駅周辺
さて、話を亀戸駅前に戻しましょう。
現在の地図は、このようになっています。1969年地図にあった三菱銀行や協和銀行は、名前を変えても、当時とほぼ同じ場所で営業していることがわかります。半世紀で大きく変わったものがある一方、当時と変わらず残っているものもあります。これは、なかなか興味深いですね。
今回は、昭和40年代発行の地図から、銀行合併のちょっとした歴史を紐解いてみました。みなさんも「ちょっと昔」地図から、小さな時間旅行に出かけてみては如何でしょうか。
(参考にした資料:一般社団法人日本銀行協会ホームページ)
1969(昭和44)年はどんな時代?
<出来事>
・アポロ11号・人類初の月着陸
・東名高速道路全通
・東大安田講堂占拠事件
・キャッシュディスペンサー(今のATM)日本第1号が大阪梅田・東京新宿に登場
・地下鉄東西線東陽町~西船橋開通
<流行語>
・あっと驚くタメゴロー
・オー、モーレツ!
<テレビ・音楽>
・テレビアニメ「サザエさん」放送開始
・ヒット曲:夜明けのスキャット(由紀さおり)/港町ブルース(森進一)/ブルーライト・ヨコハマ(いしだあゆみ)
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<商品の概要>
◆収録されている都市地図の刊行年 「1968年」「1985年」「2001年」「2014年」
※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。
【筆者】オフィス プラネイロ
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現住所は地図雑学系ライター、本籍は地図実踏調査員。昭文社地図の現地調査歴15年以上の、自称「地理のプロフェッショナル」チームです。これまで調査・取材で訪問した市区町村は、およそ500以上。昭文社刊『ツーリングマップル』『全国鉄道地図帳』等の編集に参加しています。休日は、国内外の廃線、廃鉱など「廃」なものを訪ねる「廃活」、離島をめぐる「島活」中。好きな廃鉱は旧羽幌炭鉱、好きな島はサンブラス諸島(カリブ海)と大久野島。特技は「店で売ってる野菜の産地名⇒県名を当てること」。