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火薬製造所が群馬につくられたのはなぜ?
当時は東京の板橋にも軍の火薬製造所がありましたが、戦争で火薬の増産が必要とされました。そこで新たな工場建設地を探した結果、現在群馬の森がある岩鼻(いわはな)町に決まったのです。
その理由は町に流れていた烏川(からすがわ)と井野川(いのがわ)により水運の便がよく、距離はあるものの東京との間に舟便の往来もありました。また、工場の動力として水車を利用しやすかったため、この地が選ばれたといわれています。
岩鼻軽便鉄道も開通した日本初のダイナマイト工場
その後、日露戦争でノーベル社製のダイナマイトが活躍したことなどからダイナマイトの需要が高まると、明治39年(1906)年に日本初となるダイナマイトの製造を開始しました。しかし、その製造の危険性はそれまでの火薬の何倍も高かったのです。
そこで万一に備え、土をこんもりと積み上げた土塁(どるい)で建物を囲み、爆風を軽減するため白樫などの樹木を植えました。現在、公園に生い茂る木々はこのときの名残で、土塁もあちこちに残っています。また、園内には「我が国 ダイナマイト発祥の地」という石碑が立っています。
岩鼻軽便鉄道は火薬の運搬のために開通
陸軍唯一のダイナマイト工場として、ダイナマイトや従来の黒色火薬などの製造が進むと、ますます火薬原料や製品の輸送が拡大。そのため、それまでの舟便や荷馬車などの輸送手段に鉄道も加わることになりました。
大正6(1917)年、火薬製造所に設けた上州岩鼻駅と高崎線倉賀野駅との間に、工場の専用鉄道として「岩鼻軽便鉄道(いわはなけいべんてつどう)」が開通しました。当初は私鉄でしたが、後に列車の運転と管理は国鉄(当時は鉄道院)に委託。従業員は10人足らずという小規模な会社ながら、太平洋戦争終結の年まで運行していました。
ダイナマイト工場生産終了とその後
昭和20(1945)年に終戦を迎えると、火薬工場の役割も終わりを告げ、60年以上も続いた歴史に幕を閉じました。
工場跡の広大な敷地は3分割され、その中央が県立公園である現在の「群馬の森」となっています。昭和42(1967)年、「明治百年記念事業」として公園の建設が決まり、昭和49(1974)年に開園。残りの敷地には「高崎量子応用研究所(当初は日本原子力研究所)」と「日本化薬株式会社高崎工場」がつくられました。
当時の建物はほとんど壊されてしまっていますが、公園内を散策していると、爆発事故に備えた土塁やトンネルのように見える射場など、いくつかの遺構を見ることができます。これらは貴重な戦争遺跡として、当時の様子を今に伝える平和のシンボルでもあるのです。
岩鼻軽便鉄道跡と火薬製造所跡地の現状
火薬製造所の跡地は3つに分けられ、中央に「群馬の森」、北側に「高崎量子応用研究所」、南側に「日本化薬株式会社高崎工場」があります。当時の火薬製造所と倉賀野駅を結んだ「岩鼻軽便鉄道」は、終戦とともに廃線。
群馬県立公園 群馬の森
- 住所
- 群馬県高崎市綿貫町992-1
- 交通
- JR上越新幹線高崎駅から市営ぐるりんバス岩鼻線昭和病院行きで25分、群馬の森下車、徒歩3分
- 料金
- 無料、近代美術館と歴史博物館は有料
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