目次
岩宿遺跡とは
岩宿遺跡は群馬県東部、みどり市笠懸町阿左美(かさかけちょうあざみ)にある旧石器時代の遺跡です。山を分断する切通しを中心としたエリアにあります。かつては火山灰が堆積した赤色の関東ローム層がむき出しになっていた場所で、ここから石器を発見したのは桐生在住の行商人である相沢忠洋(あいざわただひろ)です。
3万年以上前の石斧や石のナイフなどが次々と発見される
相沢の情報を受けて本格的な発掘が行われたのは、昭和24(1949)年の秋。明治大学の杉原荘介(すぎはらそうすけ)らの本格的な調査により、1.8万年から3万年以上前の石斧や石のナイフなどが次々と発見されました。翌年の調査を含めて発見された石器の数は240点にのぼりました。古代の人々は石でつくられた道具で巨大なナウマンゾウなどを狩り、解体や木の伐採もしていたと見られます。
岩宿遺跡が明らかにした旧石器時代の日本人の暮らし
当時の日本考古学の定説では、日本列島に人が住んでいた最も古い年代は縄文時代。それ以前の1万年以上前、すなわち激しい火山噴火で関東ローム層が堆積した旧石器時代には、人が住んでいなかったと考えられていました。そんなところに旧石器時代の地層から人が使っていた道具が発見され、日本にも旧石器時代があったと証明されたわけです。
これにより日本における先史時代の研究の道が開き、その後も各地で旧石器時代の遺跡の発見と調査が進みました。
岩宿遺跡を発見した行商人「相沢忠洋」とは
世紀の発見は相沢忠洋の半生を抜きに語れません。20歳の相沢青年が行商の傍ら岩宿遺跡で石器を見つけるまで歩んだ道は厳しかったのです。
相沢忠洋の半生:過酷だった幼少期
生まれは大正15(1926)年の東京。8歳で鎌倉に転居し、この頃に古代の遺物に接し心をひかれたのだといいます。9歳のときには両親が離婚、一時期は寺に預けられました。11歳で父とともに桐生に引っ越しましたが、浅草に小僧奉公に出され、12歳で浅草の夜間学校に入学。18歳で海軍に入って駆逐艦の水兵になり、19歳で終戦を迎えると、桐生に復員して行商をしました。
相沢忠洋の半生:独学で土器や石器の採集を続けていた
仕事をしながら遺跡や遺物に思いを馳せ、赤城山の山麓でこつこつ土器や石器を採集する日々のなか、岩宿の切通しで石片を発見。この瞬間を「長さ三センチばかり幅一センチほどの小さなその石片は、てのひらのうえで、ガラスのような透明なはだを見せて黒光りしていた」と自著『「岩宿」の発見─幻の旧石器を求めて─』で回想しています。
相沢忠洋の半生:岩宿遺跡発見のきっかけとなる石器を発見
最初の発見は昭和21(1946)年でしたが、それから地道な採集を続け、明らかに古代の石器とわかる黒曜石の槍先形尖頭器(やりさきがたせんとうき)を発見したのは昭和24(1949)年の初夏のことでした。
岩宿遺跡を発見した相沢忠洋のその後
岩宿遺跡の発見後、相沢は考古学研究所を設立し、在野の研究者として活動しました。1989年に亡くなるまで、発掘調査、考古学啓蒙や文筆活動に精力的に取り組んでいました。
相沢が発見し、相澤忠洋記念館が所蔵する石器は、岩宿遺跡のすぐ近くにある岩宿博物館の常設展示で見ることができます。そして相沢と苦楽をともにした相棒である自転車も、同じく博物館に展示されています。
岩宿遺跡の発掘地点と史跡指定範囲
岩宿遺跡からは時期の異なる3つの石器群が見つかっており、数千年の間を経て少なくとも3度人が住んだことがわかります。
岩宿遺跡
- 住所
- 群馬県みどり市笠懸町阿左美2418-1
- 交通
- JR両毛線岩宿駅から徒歩20分
- 料金
- 岩宿博物館=大人300円、高校生200円、小・中学生100円/岩宿ドーム=無料/(20名以上の団体は割引あり、障がい者と同伴者1名無料)
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・現・みどり市で見つかった歴史的大発見! 岩宿遺跡はどうして有名なの?
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