トップ > カルチャー >  関東 > 群馬県 >

清水トンネルが完成するまでの過酷な歴史

トンネルができるまでには、事業に携わった人々の長くて過酷な歴史があります。そもそも上越線を引く計画は、明治時代の中頃から持ち上がっていました。しかし、群馬と新潟の間にある上越国境は、標高2000m級の谷川連峰にはばまれており、これらの山々を掘り抜く作業は、莫大な資金や作業量、また高度な土木技術が必要とされ、実現にはいたらなかったのです。

しかし、産業の発展とともに、ますます物資輸送の必要性が高まると、ようやく上越線開通を現実化する運びとなりました。

清水トンネルが上毛かるたの札に選ばれている理由

大正11(1922)年の工事開始から約9年かけ、ついに昭和6(1931)年、日本で最初に関東と日本海側を直接つなぐ最短のルートが完成しました。開通前から走っていた長野経由のルートに比べると、それまで10時間以上かかっていた所要時間が、わずか6時間に短縮されました。

こうして、トンネルの完成は日本の発展に大きな役割を果たしますが、一方で、山脈を通す困難な事業は多くの犠牲を払う結果に。そのため、トンネル工事に携わった多くの人たちの労を偲ぶとともに、珍しいループ線を印象付けるために、上毛かるたの札に選ばれているのです。

清水トンネルは珍しいループ線を描いている

このように苦労を重ねて築いた清水トンネルには、冒頭にも書いたように大変珍しいループ線を用いています。通常なら列車が上り下りできないほどの急勾配のルートを、ゆるやかな坂の回り道をすることで楽に走れる仕組みです。

群馬県側のループ線は、最も高低差の激しい「土合(どあい)駅」と「湯檜曽(ゆびそ)駅」の間にあります。山の高い場所にある土合駅を出ると、ゆるやかな傾斜の線路を一周しながら、低い場所にある湯檜曽駅に到着します。

清水トンネルのループ線イメージ

清水トンネルのループ線イメージ

新潟方面からの列車が山の上にある土合駅を出発。途中山間をくるりと円を描くように下り、ふもとの湯檜曽駅へ到着。

日本一のモグラ駅・土合駅とは?

新清水トンネル内に下りホームがある土合駅は、恐ろしく長い階段が注目されています。構造上やむを得ず、駅舎と下りホームの標高差が70.7mもあり、ホームまで486段の階段を10分もかけて降りなければなりません。そのため「日本一のモグラ駅」といわれています。

清水トンネルの功績は大きい

清水トンネルの開通後、上越線は輸送量が増えたため、現在ループ線のある清水トンネルは在来線の上り専用となり、下り専用として、昭和42(1967)年に「新清水トンネル」が加わりました。

さらに昭和57(1982)年に開業した上越新幹線用の「大清水トンネル」も完成。技術向上により、新たな2本のトンネルにループ線はありませんが、それでも最初に国境の山を貫いた、清水トンネルの功績は大きいのです。

清水トンネルの功績は大きい

現在、群馬と新潟の県境を結ぶ鉄道トンネルは3本あります。

『群馬のトリセツ』好評発売中!

群馬県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。群馬県の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載!

Part.1 地図で読み解く群馬の大地

・日本でたった8県しかない「海なし県」 大昔は群馬にも海があった!?
・徳川家康も重要視した日本一の川 暮らしを支える利根川とダム
・地質学的に貴重な資源と、独自の営みが残る 下仁田ジオパークってどんなところ? ほか

Part.2 群馬を駆ける充実の交通網

・こんなところにも鉄道が走っていた! 遺構が残っている群馬の廃線
・昭和に活躍した歴史ある蒸気機関車! 貴重なSLに今も乗れる理由は?
・群馬から東京ディズニーリゾートまで行ける! 日本一のサイクリングロード ほか

Part.3 群馬にまつわる歴史の話

・現・みどり市で見つかった歴史的大発見! 岩宿遺跡はどうして有名なの?
・溶岩の絶景の裏には、歴史的犠牲があった 天明の大飢饉は浅間山が一因!?
・世界遺産は富岡製糸場だけじゃない! 絹産業遺産群とはどんなところ? ほか

Part.4 群馬で育まれた文化や産業

・焼きまんじゅうやうどんは火山が育んだ!? 群馬で生まれた粉ものグルメ
・群馬県民に愛されるマスコットキャラクター ぐんまちゃんは実は2代目!
・「西に西陣、東に桐生」といわれる機どころ 桐生の織物の文化と歴史 ほか

・データで分かる全35市町村 人口の増減、観光、農業・工業
・吉田初三郎が描いた群馬の鳥瞰図
・上毛かるたにも登場する 群馬が誇る、ゆかりのある偉人
・まだまだある、群馬が誇る日本一! 群馬で見つけた日本で一番〇〇なもの

『群馬のトリセツ』を購入するならこちら

リンク先での売上の一部が当サイトに還元される場合があります。
1 2

記事をシェア

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!