トップ > カルチャー > 

末法思想の鎌倉新仏教と旧仏教

新旧仏教は激しく対立していたわけではなく、新仏教の影響力は大きくはありませんでした。

新旧仏教の対立図式が間違い?

法然の浄土宗、親鸞の浄土真宗、一遍の時宗、日蓮の日蓮宗、栄西の臨済宗、道元の曹洞宗。これら鎌倉新仏教の登場は、鎌倉時代を象徴するトピックのひとつです。

新仏教は、華厳宗、法相宗、律宗、天台宗、真言宗といった、支配層に信仰され鎮護国家を標榜する旧仏教に対抗する形で生まれ、一般庶民に受け入れられて大きな影響力をもったと考えられてきました。しかし、その見方を疑問視する向きもあります。

旧仏教の主な宗派

奈良・平安時代の仏教は、国を守る(鎮護国家)ための教えという要素を色濃く含んでいました

鎌倉新仏教ではなく江戸新仏教?

まず鎌倉新仏教と旧仏教が対立していたという点について、確かに法然の教えが法相宗の大本山である興福寺から批判されるなどの動きがありましたが、それはあくまで部分的なものであり、全体的に対立していたわけではないとされています。

次に新仏教の一般庶民に対する影響に関して、それほど大きな力はなかったとする見方が定説になってきています。末法思想を背景に、従来とは異なる教えが生まれたものの、主流はあくまで旧仏教であり、新仏教はその周辺に位置していただけだというのです。

そもそも鎌倉新仏教という概念が生まれたのは江戸時代なので、「江戸新仏教」という名がふさわしいという学者もいるほどです。

『地図でスッと頭に入る鎌倉・室町時代』好評発売中!

累計35万部を突破した『地図でスッと頭に入る~』シリーズ。
2022年のNHK大河ドラマは『鎌倉殿の13人』。日本の中世は『平家物語』『太平記』などの記述を頼りにしてきましたが、不鮮明な部分が多くありました。近年、文献の研究が進み、軍記物が伝えてきたのとは異なる実像が浮かび上がり、いまもっとも注目される時代です。
鎌倉・室町時代を地図でたどるとともに、明らかになった新事実をクローズアップ。従来の鎌倉・室町観との違いを示しながら新たな視点で中世史を紹介。おなじみのわかりやすい解説と豊富な図解で読み解きます。

見どころ―目次から抜粋:鎌倉時代

■源氏の挙兵/宿命のライバル、平氏と源氏が全国各地で戦を繰り広げる
■一ノ谷の戦い/平氏の野望を打ち砕く 源義経の奇襲「鵯越の逆落とし」
■壇ノ浦の戦い/日本史上初の本格的海戦が勃発 戦局を左右したのは潮の流れ!
■奥州合戦/源平合戦で大活躍した源義経を兄の頼朝が排斥した理由とは?
■鎌倉幕府成立/全国に守護が設置され、頼朝の征夷大将軍任命で幕府が成立!
[中世史の最前線]あの肖像画は将軍ではない?源頼朝の本当の顔
■幕府の統治機構/封建制のはじまりとなった鎌倉幕府の統治システム
■13人の合議制/カリスマ源頼朝の死後、幕政の主導権を握った13人とは?
■比企能員の乱/「13人」のメンバーの北条時政が粛清の嵐で源氏将軍の独裁を阻む
■和田合戦/鎌倉で大規模な市街戦が勃発!北条義時と古参の御家人の戦い
■将軍断絶/3代で途絶えた源氏将軍の系譜 ますます勢いを増す北条氏の権勢
■後鳥羽上皇の企み/目指すは公武合体による親政 後鳥羽上皇がついに動き出す!
[中世史の最前線]言葉のイメージはよくないが、院政は悪いシステムではなかった?
■承久の乱/公武の力関係を大きく変える中世最大級の大乱が起こる!乱の結果、幕府が勢力を拡大し、公武二元体制を終わらせた
■執権政治/武家政権を安定させたのは稀代の名執権・北条泰時!
■文永の役/日本侵略の危機!そのとき幕府はどう動いた?
■弘安の役/モンゴル軍が再び襲来するも、またもや暴風雨によって失敗!
[中世史の最前線]元寇で「神風」は吹いたのか、吹かなかったのか?
■鎌倉新仏教/上流階級から庶民のものへ……次々に誕生した新しい仏教宗派
[中世史の最前線]鎌倉新仏教と旧仏教はどんな関係だった?
■得宗専制政治の確立/将軍にならず得宗として権力を掌握した北条氏一族
■両統迭立/皇位継承が不安定に……皇統が持明院統・大覚寺統に分裂!
■正中の変・元弘の変/幕府に戦いを挑み、2度も失敗……それでも信念を貫いた後醍醐天皇
■鎌倉幕府の滅亡/幕府方の足利高氏が謀反!新田義貞も活躍し幕府が滅びる

見どころ―目次から抜粋:室町時代

■建武の新政/武家軽視の方針が仇に……挫折した後醍醐天皇の夢
■中先代の乱/ついに後醍醐天皇と決別!政府打倒を目指す尊氏
[中世史の最前線]黒い馬にまたがる騎馬武者は足利尊氏ではない?
■南北朝の分立/朝廷が分裂して天皇も2人に!北朝と南朝の攻防がはじまる
■観応の擾乱/尊氏と直義の骨肉の争い!史上最大の兄弟喧嘩の顛末は?
■将軍権威の確立/武家と公家両方の頂点に立ち、幕府を全盛期に導いた足利義満!
■幕府統治機構の確立/鎌倉幕府を踏襲した統治機構が義満の時代にようやく確立する
■南北朝合一/南北に分裂していた朝廷が約60年のときを経てひとつに!
■日明貿易/優先すべきは名より実 巨大ビジネスをものにした義満
[中世史の最前線]足利義満は本当に天皇の地位を奪おうとしていたのか

著者紹介

山田 邦明(やまだ・くにあき)
1957年、新潟県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。東京大学史料編纂所教授などを経て、現在愛知大学文学部教授。日本中世史を専門とする。主な著書に『鎌倉府と関東』(校倉書房)、『日本の歴史8 戦国の活力』(小学館)、『日本中世の歴史5 室町の平和』『戦国のコミュニケーション』『人物叢書 上杉謙信』(以上、吉川弘文館)、『日本史のなかの戦国時代』(山川出版社)、『鎌倉府と地域社会』(同成社)などがある。

『地図でスッと頭に入る鎌倉・室町時代』を購入するならこちら

リンク先での売上の一部が当サイトに還元される場合があります。
1 2

記事をシェア

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!

エリア

トップ > カルチャー > 

この記事に関連するタグ