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奥四万湖の湖面が青い理由とは
有力なのは「アロフェン」という粘土準鉱物によるという説。これは火山灰土壌の中に広く存在するもので、周辺に火山が多いこの湖の水中にも多く含まれています。アロフェン粒子の直径は約40nm(1 nm(ナノメートル)=100万分の1mm)であり、この粒子に太陽光があたることによってレイリー散乱(光の波長よりも小さいサイズの粒子による光の散乱)が生じ、深い青色に見えると考えられています。
奥四万湖の青さにはさまざまな説がある
そのほかには、pHの低い四万川に「ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉」である四万温泉の成分が流れ込んで、奥四万湖で停滞することで青色が美しく見えるという説や、奥四万湖の透明度がかなり高いので青い光は水の奥底まで届き、赤い光は吸収されて青さが際立って見えるという説があります。
実際に奥四万湖の透明度はかなり高く、2011年の環境省測定値では日本の湖のなかで3位になったこともあります。
奥四万湖の「四万ブルー」が一番美しい季節は?
この美しいコバルトブルーの湖は、時期によって色の見え方がやや異なるといいます。とりわけ美しいといわれる時期は、雪解け水が流れ込む4月から5月の梅雨入り前にかけて。この時期は水位が高くなるためか、青色がいっそう鮮やかに見えます。また、湖畔の林が沈む「水没林」という、コバルトブルーの湖面から木々が生えているように見える不思議な光景も見ることができます。
梅雨に入ると、ダム湖である奥四万湖は水害対策として水位を下げます。湖面が低くなることでやや鮮明さが失われたように見えますが、また秋になると水位が戻るため、徐々に四万ブルーの美しさを取り戻していきます。山々の紅葉と湖面の青さがつくり出すコントラストはまさに絶景。また、カヌーで水上散策を楽しむこともできます。
湯釜はエメラルドグリーンの湖面が目をひく火口湖
2つ目の美しい湖は、エメラルドグリーンの色がひときわ目をひく「湯釜(ゆがま)」。群馬県北西部の長野との県境近くにそびえる、草津白根山山頂にある火口湖です。湖面の直径は約300mで、最も深い場所は30mほどあります。火山活動が活発化した明治時代以降、地下数百mから熱水が噴出し始め、吹き出した熱水が火口にたまって湯釜となりました。
湯釜周辺
県北西部にそびえる草津白根山の山頂にある湯釜。ふもとには草津温泉街が広がります。
湯釜の湖面がエメラルドグリーンに見える理由とは
ではなぜ、このような鮮やかなエメラルドグリーンなのでしょうか。
湯釜の水には粘土、硫黄、鉄分などが含まれています。これらの微粒子が太陽光を散乱させて、美しい緑色をつくり出しているのです。また、やや白濁しているように見えるのは、水中の成分が空気に触れることで化学反応を起こすためです。
ちなみに、湖水はpH1.2前後と世界有数の酸性度を誇るほど強い酸性。鉄やコンクリートなども溶かしてしまうほどといわれており、もちろん生物が生息することはできません。
湯釜付近は現在立ち入り禁止
この火口湖を実際に見たいところですが、現在は残念ながら直接見ることはできません。2018年9月28日より、噴火警戒レベルが2に引き上げられ、火口から半径1km以内が立ち入り禁止となっているからです(2022年2月現在)。今のところ入山が可能になる目途もたっていないため、いつの日かまた訪れられるようになることを祈るばかりです。
湯釜
- 住所
- 群馬県吾妻郡草津町草津白根国有林内白根山
- 交通
- JR吾妻線長野原草津口駅からJRバス関東草津温泉行きで25分、終点で西武観光バスほか白根火山方面行きに乗り換えて30分、白根火山下車、徒歩20分
- 料金
- 情報なし
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