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揖保川の流域エリアの地形

揖保川流域の地形は、東の加古川流域とは大きく異なります。加古川流域は、沿岸の土地が階段状に盛り上がった「河岸段丘(かがんだんきゅう)」がよく見られるのが特徴です。

これに対し、揖保川では中流域の山崎周辺で川幅の狭い地域をのぞくと、おおむね平坦です。川沿いは、長い年月をかけて上流から運ばれてきた土砂が大量に堆積し、凹凸の少ないなだらかな地形となっています。

中流の山崎盆地周辺。狭くなだらかな平野部を縫うようにして流れています。
国土地理院標準地図を元に作成

揖保川の流域エリア:たつの市南部

下流域のたつの市南部では、かつては揖保川が複雑に曲がりくねって流れていましたが、土砂の堆積によって自然に埋め立てられた場所が多くあります。現在も流路の跡や、洪水のとき流されてきた土砂が川の両岸に積もってできた自然堤防がいくつも見られます。

下流は低地が多く、土砂が堆積した場所は宅地となっている。
国土地理院標準地図を元に作成

揖保川と流域エリアの歴史と名産

加古川と同じく、揖保川も近世には水運に活用されました。船着場としてとくに栄えたのが網干湊(あぼしみなと)(現在の姫路市)で、内陸からは米、麦、炭、鉄製品などが運ばれ、逆に沿岸から内陸へ塩が輸送されました。

揖保川流域エリアの名物:龍野の醤油

河口に面する龍野では、16世紀末ごろから醤油の生産が広まり、地元の名産品となります。龍野は、瀬戸内海と揖保川を利用した水運によって、赤穂の塩、播州平野の農村地帯でつくられた大豆や小麦粉など、醤油の原料が入手しやすかったそうです。

揖保川流域エリアの名物:播磨のそうめん

播磨では、室町時代からそうめんがつくられていた記録があります。そうめんづくりが本格化したのは、江戸時代中期の安永年間(1770年代)に、龍野藩が冬場の農家の副業としてそうめんの生産を奨励してからです。さらに、文化年間(1804~1818年)ごろから「揖保乃糸」の名が定着しました。

「揖保乃糸」が名産となった背景

揖保川の下流域では、水運によって赤穂の塩や小麦が容易に得られ、川沿いの水車を小麦の製粉に利用できました。しかも、揖保川は鉄分が少ない水質なので麺の白さが保たれ、雨が少ない瀬戸内気候のため天日干しで麺を乾燥させるのにも都合がよかったそうです。まさに、そうめんの生産に適した環境がそろった理想的な立地といえます。

知られざるそうめんブランド

そうめんの製法は、三輪地方(現在の奈良県桜井市)から西播磨に伝わったといわれます。江戸時代後期には、兵庫津の周辺でも「灘目(なだめ)そうめん」の生産がさかんでしたが、明治期に入って製粉用の水車が減ると、しだいに衰退してしまいました。

揖保川流域エリアの名物:鮎釣り

揖保川のもう1つの名物といえるのが、鮎釣りです。鮎の稚魚は揖保川漁業協同組合によって飼育・放流されており、釣りや漁が許可されるのは5月~10月のみとされ、山崎町・新宮町などの中流域の一部では8月まで釣りや漁が禁止されています。

鮎釣りでは、ほかの鮎をおとりにしておびき出す「友釣り」という手法がよく用いられますが、一説によれば、揖保川はその発祥の地だともいわれています。

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