淡路島の神話「国生み神話」と「おのごろ島」
『古事記』によれば、伊邪那岐命と伊邪那美命の夫婦神は、最初に天（あめ）の浮橋から沼矛（ぬぼこ）で海をかき回し、矛の先からしたたり落ちた塩が固まって、「淤能碁呂（おのごろ）島」という島ができました。「おのごろ島」とは、「おのずから（みずから）固まってできた島」という意味です。
あくまでも神話ですが、古くからおのごろ島に該当する場所と伝わるのは、淡路島の南方に浮かぶ沼島です。島の名は、伊邪那岐命と伊邪那美命が持っていた沼矛に由来するとされます。
「おのごろ島」ほかの候補地
このほかに、瀬戸内海の家島、淡路島の東方にある友ヶ島群島の沖ノ島なども候補地とされてきました。
江戸時代の国学者である本居宣長（もとおりのりなが）は、著書の『古事記伝』で、淡路島の北部にある絵島がおのごろ島だと唱えています。
また、淡路島中部の洲本市にある先山（せんざん）、南あわじ市にある諭鶴羽山（ゆづるはさん）とする説もあり、おおむね淡路島かその近隣となるようです。兵庫県淡路市岩屋にある淡路SAの一角には、「日本発祥の地」の石碑があります。
淡路島の神話の「おのごろ島」は「淡路島」？
『古事記』では、伊邪那岐命と伊邪那美命はおのごろ島をつくったあと、蛭子神（ヒルコノカミ）や淡島という子を生みますが、いずれも身体が不完全で正式な神とはなりませんでした。淡島は、明石海峡に浮かぶ「粟粒のような」岩礁という説もあります。
続いて伊邪那岐命と伊邪那美命は、淡道之穂之狭別島（あわじのほのさわけのしま）と伊予之二名之島（いよのふたなのしま）という２つの島をつくったとされます。前者は淡路島、後者は四国だと解釈されることが多いようです。
この説に従うならば、おのごろ島と淡路島は別物ということになります。
西宮の祭神となった蛭子神
伊邪那岐命と伊邪那美命が生んだ最初の子である蛭子神は、骨がないぐにゃぐにゃの身体だったので、葦船（あしぶね）に乗せて海に流されてしまいました。この蛭子神がのちに海で成長した姿とされるのが、西宮神社に祀られている福の神の恵比須（えびす）です。
なぜ淡路島に神話が伝承された？
伊邪那岐命と伊邪那美命の伝承は、古代に淡路島の近海で漁業や製塩や海運に従事していた海洋民の信仰から生まれたと考えられています。それが天皇家に伝わる国造りの神話と融合したのではないかともみられているのです。
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