南海トラフと兵庫県の地震想定
震災後に発足した国の地震調査研究推進本部(地震本部)は、兵庫県の地震活動の特徴として、「南海トラフで発生する地震や日本海東縁部で発生した地震で被害を受ける可能性がある」と説明しました。
南海トラフとは、日本列島が位置する大陸のプレートの下に、フィリピン海プレートが南側から年間数センチの深さで沈み込んでいる場所です。この沈み込みに伴い、2つのプレートの境界にひずみが蓄積されていると考えられており、蓄積されたひずみを解放する大地震が100~200年の間隔で発生しています。
南海トラフ地震発生時の兵庫県の震度想定
地震本部は、兵庫県でマグニチュード8~9クラスの大地震が30年以内に起こる確率を70~80%と定めました。これを受けて政府は、瀬戸内海沿岸など兵庫県南部の24市町を「南海トラフ地震防災対策推進地域」に指定。また、淡路島の2市を「南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域」に指定しました。
国の検討結果を受けた兵庫県は独自の南海トラフ地震・津波被害を算出しています。県の資料によれば、洲本市と南あわじ市は最大震度7、神戸市、尼崎市など9市1町は最大震度6強、西宮市や芦屋市など10市2町は最大震度6弱と想定しています。
南海トラフ地震発生時の兵庫県の被害想定
地震が発生する季節や時刻をシミュレーションし、建物被害、人的被害、ライフライン被害などを想定しています。また、最大クラスの津波が発生した場合の日本海沿岸地域における津波浸水想定図も作成しています。
これらのデータを市町が地震・津波対策の基礎資料として共有化し、地震・津波対策を講じています。
もっとも大きな被害が想定される神戸市では、「地域防災計画(南海トラフ地震防災対策推進計画)」を策定し、地震から市民の生命、財産を保護する具体策を提示しています。
南海トラフ地震発生時における兵庫県の具体策
具体的な地震対策では建物耐震化、家具類の転倒防止策、初期消火などを盛り込み、建物や住宅の倒壊を最小限にするため、住宅の耐震化を促進する補助制度や、危険ブロック塀の撤去を促す支援制度を設けています。津波対策では防潮堤の門扉閉鎖、既存の防潮堤の強化などに取り組んでいます。
地震の備えとしては、物資や人員の確保、自衛隊や警察、消防署などの機関への応援要請、迅速な救助や医療活動を行なうための整備体制を整えています。
南海トラフ地震発生時の兵庫県の津波対策
埋立地の多い神戸市には津波の不安もあります。そこで市は「津波防災マップ」を掲載した冊子を全戸に配布しています。地域別の津波ハザードマップに避難対象エリアや避難先やそのルートが記されており、万が一の際に備えています。
さらに神戸市では、気象庁が発する津波警報注意報と市災害対策本部が発する避難指示、救援・救護情報を市民に迅速に伝達するため、複数の情報伝達を設けています。防災行政無線の整備を進め、津波・高潮避難対象地区への屋外スピーカーの増設を行なうと同時に、市の危機管理室が緊急速報メールを送信し、市内の避難指示を伝えます。
また、すでに実施しているものに津波情報ウェブサービス「ココクル」があります。自分が現在いる場所に最大どのくらいの高さで、また最短何分で津波が到達するのかをスマートフォンで確認できるサービスです。
神戸市は、今世紀前半にも発生する可能性が高い南海トラフ地震をイメージし、できることから確実に対策を講じているのです。
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