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大井川鐵道・井川線の魅力

蒸気機関車や大手私鉄の往年の名車が活躍することで注目される大井川本線に対し、井川線もまた、「トロッコ列車」とも呼ばれるミニサイズの車両が走り、日本で唯一のアプト式区間をもつなど、ユニークな個性が際立つ路線です。もともと同線は大井川上流の山間部に水力発電所やダムを建設するための資材を運搬する専用鉄道だったことから、一般の鉄道とは大きく規格が異なる急勾配や急カーブ、小さな断面のトンネルなどにより、険しく複雑な地形の山岳部を縫うようにつくられているのです。

大井川鐵道・井川線の歴史

1935(昭和10)年3月、千頭~大井川発電所(現在は廃止)間に、当時の大井川電力(株)が開通させた専用鉄道をルーツとする井川線は、1954(昭和29)年4月に堂平(どうだいら)駅(井川駅の1つ先の駅で、現在は休止駅だが事実上廃駅)まで延長され中部電力(株)の専用鉄道となったのち、1959(昭和34)年8月に大井川鐵道に引き継がれ今日に至ります。

その歴史の中で最大の出来事は、なんといっても1990(平成2)年10月2日の、アプトいちしろ駅(旧川根市代駅)~接岨峡温泉(せっそきょうおんせん)駅(旧川根長島駅)間の新線への切り替えです。大井川水系に建設が進んでいた多目的ダム、長島ダムの完成により水没することになった井川線の一部区間に代わる、新たなルートが開通したのです。

延長約4.8㎞のこの新線区間には、一般の鉄道としては日本で最も急な90‰の勾配を、補助電気機関車を連結して列車が行き来する日本唯一のアプト式区間(アプトいちしろ駅~長島ダム駅間1.5㎞)や、長島ダムのダム湖、接岨湖に突き出た半島の先端に、湖に浮かぶかのように設置された奥大井湖上駅とその前後を挟むレインボーブリッジ(東京に同名の橋があるが命名はこちらが先)があるほか、廃止された旧線の一部が車窓に望めるなど、見どころの多い区間となっています。

大井川鐵道・井川線の歴史
大井川鐵道

接岨湖上に架かる「レインボーブリッジ」を行く列車。

大井川鐵道・井川線の沿線にある集落

ところで、井川線の終着駅である井川駅と、その一つ手前の閑蔵(かんぞう)駅は、いずれも静岡市葵区にあります。静岡の人以外にはピンとこないかも知れませんが、大井川上流域の、南アルプスに連なる山あいにあった村々は、1969(昭和44)年1月からすべて静岡市の一区域となっているのです。とはいえ、井川駅や井川地区の集落は、今も「安倍郡井川村」だった半世紀以上前と変わらない、山里ならではの素朴で穏やかな佇まいを見せています。

大井川鐵道井川線路線図

大井川鐵道井川線路線図

尾盛駅から閑蔵駅へ向かって、大井川水系の関の沢川に架かる関の沢橋梁を渡ると、列車は静岡市葵区に入ります。関の沢橋梁は川底からの高さが70.8mあり、日本一高い鉄道橋として知られます。

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Part.1 地図で読み解く静岡の大地

・富士山が標高日本一、駿河湾が深海日本一になった理由
・南から来た、火山の贈り物、伊豆半島ジオパーク
・交通の難所「大崩海岸」は海底噴火によって作られた!
・「日本三大人工美林」数えられる天竜の杉林は川の氾濫に関係があった?
・磐田市にトンボの楽園があった!
・湖?川?海?浜名湖の正体を探れ!
・世界遺産「三保松原」は江戸時代に「島」から「半島」になった!

などなど静岡のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2 静岡を駆け抜ける鉄道網

・静岡県の鉄道の歴史は沼津市内の貨物線から始まった
・かつては「東海道本線」だった由緒正しき(?)御殿場線
・JRと私鉄が一体となって形成する伊豆半島東海岸の鉄道ルート
・意外なエピソードを秘めた東海道本線・静岡鉄道の並行区間
・「政令指定都市・静岡」の市内も走る山岳鉄道、大井川鐵道井川線
・軍事上の要請が背景にある天竜浜名湖鉄道(旧国鉄二俣線)のルート

などなど静岡ならではの鉄道事情を網羅。

Part.3 静岡で動いた歴史の瞬間

・静岡最古の古代人は愛鷹山付近にいた!
・日本考古学の聖地・登呂遺跡
・日本書紀に見る静岡とヤマトタケルの伝説
・源頼朝も流された流刑地伊豆
・下田が開港の舞台になったのはなぜか
・江戸城よりも大きかった駿府城天守台
・日本にたった一つしかない形の城・田中城
・家康の遺体は日光ではなく久能山にある?
・徳川慶喜と渋沢栄一の意外なつながり

などなど、激動の静岡の歴史に興味を惹きつける。

Part.4 静岡で育まれた産業や文化

・模型の首都!静岡が生まれたワケ
・バイクに楽器。浜松のものづくりは綿花の栽培から
・ボールは友達!サッカー王国しずおか
・富士山麓の湧水が育てた製紙業
・月ではなく富士山に帰ってしまう「かぐや姫」
・仏教界のスーパースター空海が静岡に残した伝説

…などなど静岡の発展の歩みをたどる。

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