東海道本線は東西を結ぶ大動脈に
1889(明治22)年7月、新橋駅(のちの汐留、現在は廃止)~名古屋駅~大阪駅~神戸駅を結ぶ官設鉄道が全通しました。1909(明治42)年には東海道本線と呼ばれるようになったこの路線は、日本で最も重要な鉄道と位置付けられ、1913(大正2)年8月1日に新橋駅~神戸駅間の全線、約600㎞の複線化が完了するなど、東西を結ぶ大動脈としての機能を高めていきました。
東海道本線のルートを変更
このように東海道本線の重要度が増すなか、国府津駅から沼津駅までの御殿場回りルートは、急勾配(最大25‰)が連続するうえ遠回りでもあることから、輸送確保の上で大きなボトルネックとなっていました。そこで、この問 題の抜本的な解決を図るべく、明治初期の構想にあった丹那盆地のトンネルを掘り、東海道本線のルートを変更することとなったのです。
東海道本線から御殿場線へ
1933(昭和8)年6月19日、15年にわたる難工事の末「丹那トンネル」が貫通。翌1934(昭和9)年12月1日、東海道本線は丹那トンネルを通る現在のルートに切り替わり、国府津駅~沼津駅間の御殿場回りルートは、「御殿場線」と線名をあらため再出発しました。
ローカル線に転落し列車の本数も減った御殿場線は、幹線の証しでもあった複線を維持する必要性が乏しくなり、1944(昭和19)年には全線が単線に戻されました。なお、このとき撤去されたレールや橋桁は、ほかの路線の建設や複線化を行うための資材として転用されています。
東海道本線だった歴史を今に伝える御殿場線
戦後になると小田急線直通列車の運転開始(1955年)、電化(1968年)、特急列車の復活(1991年)などの動きを経て、地域の生活路線、あるいは首都圏近郊の観光路線のイメージがすっかり板についた御殿場線ですが、線路に沿って続く空き地、載せるべき橋桁を失った橋脚や橋台、2つ並んで口を開けているのに片側が使われていないトンネルなど、「複線だった」名残があちこちに散在しています。
ほかにも、富士岡駅、岩波駅にスイッチバックの跡が残っていることや、下土狩駅がかつて「三島駅」を名乗り、修善寺までの駿豆(すんず)鉄道(現在の伊豆箱根鉄道駿豆線)が分岐していた史実などにも、御殿場線がかつて東西を結ぶ大動脈であったことの由緒が感じられます。
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・世界遺産「三保松原」は江戸時代に「島」から「半島」になった!
などなど静岡のダイナミックな自然のポイントを解説。
Part.2 静岡を駆け抜ける鉄道網
・静岡県の鉄道の歴史は沼津市内の貨物線から始まった
・かつては「東海道本線」だった由緒正しき(?)御殿場線
・JRと私鉄が一体となって形成する伊豆半島東海岸の鉄道ルート
・意外なエピソードを秘めた東海道本線・静岡鉄道の並行区間
・「政令指定都市・静岡」の市内も走る山岳鉄道、大井川鐵道井川線
・軍事上の要請が背景にある天竜浜名湖鉄道(旧国鉄二俣線)のルート
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Part.3 静岡で動いた歴史の瞬間
・静岡最古の古代人は愛鷹山付近にいた!
・日本考古学の聖地・登呂遺跡
・日本書紀に見る静岡とヤマトタケルの伝説
・源頼朝も流された流刑地伊豆
・下田が開港の舞台になったのはなぜか
・江戸城よりも大きかった駿府城天守台
・日本にたった一つしかない形の城・田中城
・家康の遺体は日光ではなく久能山にある?
・徳川慶喜と渋沢栄一の意外なつながり
などなど、激動の静岡の歴史に興味を惹きつける。
Part.4 静岡で育まれた産業や文化
・模型の首都!静岡が生まれたワケ
・バイクに楽器。浜松のものづくりは綿花の栽培から
・ボールは友達!サッカー王国しずおか
・富士山麓の湧水が育てた製紙業
・月ではなく富士山に帰ってしまう「かぐや姫」
・仏教界のスーパースター空海が静岡に残した伝説
…などなど静岡の発展の歩みをたどる。
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