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福島の日本酒造りは水の利と水害からの新田開発
酒蔵が多い会津盆地は、中央を流れる阿賀川(大川)や猪苗代湖など水の利に恵まれ、土も肥えていたことから、16世紀末に蒲生氏郷は92万石、上杉景勝は120万石の大名となったほどです。
いっぽうで阿賀川は洪水も多く、たびたび流路が変わっていました。とりわけ1536(天文5)年の大洪水「白髭の水」で流路は現在と近い形に変わりましたが、廃河川となった元の流路は約1500ヘクタールに及びました。
以後130年ほどかけて、蒲生氏郷の孫・忠郷、加藤嘉明(よしあきら)、保科正之ら歴代会津藩主によって、流路跡が次々と新田として開発されることになりました。阿賀川の西側の地域に「新田」という地名が南北に続くのは、このときの名残です。
福島で日本酒造りの多い地域と起源
福島県の酒造りの系譜を見ると、ひとつは地主や味噌・醤油業者が兼業的に余剰米を酒に加工したという流れで、喜多方、須賀川、郡山、会津坂下、田島などに多いです。
もうひとつは、領主の保護奨励を受けた商人によるもので、若松、白河、二本松などの城下町で多かったです。
なかでも会津では、保科正之が余剰米を使った酒造りを奨励したことが始まりという説もあります。実際に県内最古とされる蔵元・山口合名会社(会津若松市)の初代・山口儀平(ぎへい)は、保科の引き立てで山形から会津に入り、藩領内酒造取締役を長年勤めていました。
福島の日本酒造りの歴史
5代藩主・容頌(かたのぶ)の時代になると、家老・田中玄宰(はるなか)の改革により、先進地から酒造技術が導入され、質の向上につながっていきました。
福島の日本酒造り・明治時代
明治時代に入ると自由醸造が認められたことから、一時的に酒造業者が急増しましたが、 増税や免許に石数制限が設けられるなどしたため、1887(明治20)年には半数の504戸となりました。他方で、醸造石数は増加していきました。
福島の日本酒造り・大正時代
大正時代には、第一次世界大戦などの影響で小規模事業者は没落し、大規模業者が企業組織へ転換する傾向が見られるようになりました。
また、新潟や岩手などから杜氏(とうじ)を雇い入れることが一般的になり、品質が向上。品評会で会津の酒が入賞するようになり、全国で認められるようになりました。
福島の日本酒造り・昭和時代
昭和時代は戦時下の米の国家統制などにより、1943(昭和18)年には企業整備が行われ、225工場のうち118工場が転廃を余儀なくされました。
戦後、復活措置がとられ、転廃工場から再開する工場も出現し、1967(昭和42)年にはピークを迎え150工場となりました。工場数は減少し始めたものの、1975(昭和50)年には製成数量が全国5位になっています。
福島の日本酒が金賞受賞数日本一に
1990年代頃からは、福島県酒造協同組合と県の研究機関「福島県ハイテクプラザ」による好適米・独自酵母の開発、酒造りを学ぶ「清酒アカデミー」の開校などとともに、約30蔵元が参加する「高品質清酒研究会」(金取り会)などを通して、質の向上が図られました。
この結果、2005(平成17)年度に初めて全国新酒鑑評会で金賞受賞数日本一になり、2018(平成30)年度には金賞受賞数が史上初の7年連続日本一(通算9度目)となり、躍進を続けています。
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Part.1:地図で読み解く福島の大地
・阿武隈山地や奥羽山脈が境目!浜通り・中通り・会津の3地域
・いわきで発掘された首長竜化石フタバスズキリュウとは?
・福島市がぽっかり入る福島盆地はどうやってできた?
・福島発展の礎を築いた常磐炭田
・磐梯山の大噴火と裏磐梯・五色沼湖群の形成
・猪苗代湖畔からウニ化石!?劇的な会津の地形の成り立ち
・石川町が日本三大産地のひとつ ペグマタイトとはどんな岩石?
・大改修から100年が経過 暴れ川・阿武隈川の今と昔
などなど福島のダイナミックな自然のポイントを解説。
Part.2:福島を駆け抜ける鉄道網
・東北本線旧線の黒磯~白河間には明治時代の面影が残されている!?
・日本最大のC62形SL牽引「ゆうづる」が走った常磐線
・かつては東京と新潟を結ぶ架け橋、会津地方の大幹線・磐越西線
・東京・浅草から特急が直通しトロッコ列車も走る会津鉄道
・かつて硫黄輸送で活躍した猪苗代町の沼尻鉄道とは?
・只見川に架かる数々の鉄橋ほか 魅力いっぱい絶景鉄道・只見線
などなど福島ならではの鉄道事情を網羅。
Part.3:福島で動いた歴史の瞬間
・人間の歯や骨をペンダントに!?原始福島の不思議な弔い
・東北地方最古の前方後円墳!会津大塚山古墳が示す会津の力
・浜通りに古代製鉄遺跡を発見! なぜ大規模な製鉄が行われた?
・中世史総論(関東武士が進出し国盗り合戦!白河・伊達・蘆名・岩城氏の攻防)
・南北朝時代に南朝が拠点とした幻の寺院城郭・霊山寺とは?
・伊達氏のルーツは福島にあり!奥州制覇を果たす道のり
・相馬地方を約700年統治した古豪・相馬氏とはどんな一族?
・奥州きっての城下町・若松はどのようにして生まれた?
・会津若松城で籠城戦を続けた会津藩が開城に至るまで
などなど、激動の福島の歴史に興味を惹きつける。
Part.4:福島で育まれた産業や文化
・最澄と大論戦した僧・徳一が開祖!慧日寺から始まった会津の仏教文化
・猪苗代湖の水を郡山へ! 幹線延長52㎞の安積疏水事業
・県境には二ツ小屋隧道が残る 福島と米沢を結んだ万世大路
・東北唯一の中央競馬場が福島市につくられたわけ
・幕府直営の半田銀山 明治時代は五代友厚が経営
・感染症と闘い続けた細菌学者・野口英世の生涯
・日本酒の金賞受賞数日本一!福島の地酒はなぜすごい?
などなど福島の発展の歩みをたどる。
ほか、巻頭「空撮グラビア」、テーマ別地図、コラム「データでわかる全59市町村」(人口、所得、農業・漁業)、吉田初三郎が描いた福島県の鳥瞰図 など
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