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喜多方の煉瓦建造物が近代化産業遺産に認定
こうした煉瓦を腰壁(こしかべ)に使用した蔵は、市内に100棟以上。総レンガの蔵も40棟ほど現存します。蔵だけでなく、塀や煙突、トンネルなど、多様な構造物にレンガが使われています。
2007(平成19)年には、「三津谷の登り窯(のぼりがま)」をはじめとする市内14の建造物が、経産省の定め近代化産業遺産に認定されました。
喜多方煉瓦の代表格「三津谷の登り窯」とは
「三津谷の登り窯」は、この地の煉瓦生産を担った樋口窯業(ひぐちようぎょう)の窯。樋口窯業創業者の樋口市郎(ひぐちいちろう)は、新潟県亀田(かめだ)(現・新潟県新潟市江南(こうなん)区)の出身で、安田瓦(やすだかわら)の職人でした。
良質な赤土と燃料のアカマツがそろう三津谷に目をつけ、1890(明治23)年に市内有力者の出資を得て登り窯を建設。現存する10段の登り窯は、大正年間に2代目樋口喜一が増築したものです。
喜多方での煉瓦建築の始まり
のちに、樋口窯業は煉瓦を生産するようになります。理由は諸説ありますがはっきりしていません。
そこに現れたのが、喜多方市岩月町(いわつきまち)出身で、1900(明治33)年に喜多方初のレンガ師として開業した田中又一(たなかまたいち)です。彼は東京の清水組(現・清水建設)のお抱え煉瓦師の元で修業を積み、当時最先端のレンガ建築技術を習得していました。そして、樋口市郎とともに煉瓦建築を手がけることになります。
喜多方の煉瓦建築の発展
2人の初めての共作は、1902(明治35)年竣工の岩月尋常小学校。これが喜多方初の煉瓦建築で、その美しさは人々から「花嫁学校」と呼ばれるほどだったといいます。
その後、若喜(わかき)商店レンガ蔵、三津谷煉瓦蔵群などがつくられます。まず、樋口窯業への出資者や協力者に対する返礼として数棟の煉瓦蔵が建てられ、それを見た人々がまた樋口に煉瓦蔵の建設を依頼したため、この地域に煉瓦蔵が増えていったようです。
喜多方の煉瓦建築の構造と美しさ
構造は、木材の骨組みのあいだに煉瓦を積み上げる木骨煉瓦造。煉瓦の積み方はイギリス積みが採用されました。
軒蛇腹(のきじゃばら)(軒につけられた帯状の飾り)や優美なアーチをもつ洗練された建築は、田中又一の存在あってこそのものでしょう。
煉瓦の需要減少と「三津谷の登り窯」の現在
1923(大正12)年の関東大震災で煉瓦の耐震性の弱さが露呈したため、全国的に煉瓦の需要は減少していきました。樋口窯業も1970(昭和45)年に廃業。その後しばらく窯に火が入ることはありませんでしたが、近代化産業遺産認定をきっかけに、市民有志が登り窯の保存や焼成技術の伝承に取り組み始めます。
2013(平成25)年には煉瓦の試験焼成に成功。再び生産されるようになった煉瓦は、市内各所の修景(しゅうけい)用煉瓦として活用されています。
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