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霊山の山頂に円仁によって開かれた霊山寺
霊山の山頂には、かつては巨大な山岳寺院が存在しました。それが慈覚大師円仁(じかくだいしえんにん)によって開かれた霊山寺です。円仁は比叡山延暦寺で最澄に師事したのち、遣唐使として唐代の中国に渡り、本邦への密教移入に貢献した「入唐八家(にっとうはっけ)」のひとりに数えられています。帰国後には中尊寺(岩手県西磐井郡平泉町)や浅草寺(東京都台東区浅草)など数多くの寺の開基に携わり、859(貞観元)年に霊山寺が開山されました。
霊山寺の繁栄ぶりを明らかにした昭和の大規模発掘調査
霊山寺は南奥州における天台宗の拠点として栄え、「霊山寺縁起」によると最盛時には3600もの僧坊を擁していたといいます。しかし、後述する戦乱の影響で文献史料はあまり残されておらず、大規模な発掘調査が行われるまでは、その全容はわかっていませんでした。
1980(昭和55)年に発掘調査が実施された際には、50棟もの礎石群が発見されました。山頂付近には国司館(こくしかん)跡の礎石が当時のままの姿で残されていました。また、日枝神社観音堂の遺構も見つかっており、比叡山延暦寺との共通点が指摘されています。山内は寺屋敷、東寺屋敷、古霊山の3区画に区分されており、その規模の大きさは、さながら“北の比叡山”とも呼ぶべき大伽藍でした。
霊山は南北朝時代には軍事拠点“霊山城”として利用された
やがて南北朝の動乱期になると、1337(北:延元2、南:建武4)年1月8日、南朝方の鎮守府(ちんじゅふ)将軍・北畠顕家と陸奥太守(むつたいしゅ)・義良親王(のりよししんのう)は、国府の多賀城(宮城県多賀城市)を棄てて霊山の山頂付近に国司館を建設しました。天嶮の要害である霊山は軍事拠点として最適だったのでしょう。
義良親王とは後醍醐天皇の第7皇子で、のちの後村上天皇のことです。顕家は奥羽の南朝方勢力と連携し、義良親王を奉戴して上洛するまで霊山を拠点としました。この時期を指して「霊山城」とも呼ばれています。
北畠顕家の上洛後も霊山城は南朝方の拠点として機能していましたが、次第に南朝方が劣勢に立たされていくと、1347(北:正平2、南:貞和3)年に北朝方の奥州管領・吉良貞家によって攻め滅ぼされ、霊山寺の建物群も全焼してしまいました。
霊山とともに南朝の拠点となった宇津峰城
標高676.8mの宇津峰(うづみね)(郡山市・須賀川市)の山頂にあった宇津峰城も南朝方の拠点として用いられ、霊山が北朝方から総攻撃を受けた際にともに落城しました。
観応の擾乱(1350~1352年)の余波が奥羽まで及ぶと、一時的に南朝方が盛り返すも、北朝方が勢いを取り戻し、南朝方の北畠顕信(顕家の弟)は守永王(後醍醐天皇の孫)を奉じて宇津峰城に立て籠もりました。その後、北朝方の総攻撃で宇津峰城が陥落し、奥羽での南北朝期の動乱は終結するのでした。
霊山寺は廃寺・火災を乗り越えて復興
その後、廃寺となっていた霊山寺は、室町時代に伊達氏によって再建されました。ところが、この再建霊山寺も火災によって焼失してしまいました。
その後、寛永年間に寛永寺末寺として復興し、現在まで伝わっています。そして、1934(昭和9)年5月1日には「霊山」として国の史跡及び名勝に指定されたのです。
霊山ハイキングコース
霊山には登山道が整備されており、起伏に富んだコースを楽しめます。 約1500~3000万年前にマグマが噴出して冷え固まり、風雨で侵食されてできた奇岩の数々が見られます。
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