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福島県域に多い再葬墓遺跡

この埋葬方法は静岡以東の東日本で見られるもので、とりわけ北関東に集中しています。他県域では1~4カ所程度に留まっているのに対し、福島県域には16もの再葬墓遺跡が見つかっており、数の多さが目を引きます。その代表例としては牡丹平(ぼたんだいら)遺跡(須賀川市)が挙げられるでしょう。

おもな再葬墓遺跡の分布

おもな再葬墓遺跡の分布
『図説 福島県の歴史』(河出書房新社、1989年)を元に作成

再葬墓は、福島県と北関東を中心に分布しています。東北地方南部の弥生時代初期の遺跡は、ほとんどが再葬墓です。

福島の再葬墓遺跡・牡丹平遺跡で見つかった人骨を納めた壷型土器

牡丹平遺跡は阿武隈山地に位置する弥生時代前期の遺跡で、1977(昭和52)年の発掘調査では、人骨を納めた壷型土器が出土しました。この壷は口が小さく、遺体をそのまま入れることはできない形状でありました。しかしながら、人骨には加熱を受けた痕跡がないため、まず別の場所に埋葬されて白骨化させ、そのあとで壷に納められたものと考えられています。

東北地方では唯一といっていい、ほぼ全身の部位を残す成年人骨で、考古学的な価値は極めて高くなっています。

福島県にあるそのほかの再葬墓遺跡

同様の例として、会津地方では墓料(ぼりょう)遺跡(会津若松市)・宮崎遺跡(大沼郡金山町)・上野尻(かみのじり)遺跡(耶麻(やま)郡西会津町)、中通りでは根古屋(ねごや)遺跡(伊達市)・鳥内(とりうち)遺跡(石川郡石川町)・西方前(にしかたまえ)遺跡(田村郡三春(みはる)町)・滝ノ森(たきのもり)遺跡(白河市)などがあり、これらすべてで人骨が発見されているわけではありませんが、再葬墓遺跡と考えられています。

福島の再葬墓遺跡・根古屋遺跡ではほかに例を見ない再葬例も

このうち根古屋遺跡は東日本最大級の弥生時代再葬墓であり、25基の土坑(どこう)(穴)から合計124点もの壷型土器が見つかっています。その約3分の1に当たる39もの壷に人骨片がつまっていました。出土人骨の総量は42kgにも及び、100個体から200個体と推測されています。

いずれも900℃以上の高温で焼かれたあとがあり、火葬されたのちに再葬されたようです。多くの再葬墓では、白骨化させて土器に再葬するか、白骨化後に焼いてから再葬するケースがほとんどですが、この根古屋遺跡の場合、遺体をそのまま焼いたという点が異なっています。

弔った近親者の想いがつまった出土品が多数発見されている

また、根古屋遺跡からは、人間の歯や指の骨に穴を開けてつくられたペンダントが多数出土しました。材質の歯や骨には加熱のあとが認められないことから、火葬前に加工されたと推測され、近親者の死亡時にその歯や指の骨を身につけて弔ったのでしょう。

なお、再葬に用いられた壷型土器のなかには、人面を表したものもあります。土器の口縁部から頸部にかけて人の顔を模した装飾が施されていて、1カ所の再葬墓遺跡につき、ひとつの人面付土器が出土する例が多くなっています。人面付土器は鳥内遺跡や墓料遺跡、滝ノ森遺跡から出土しています。

このように古代の福島には、特徴的な墓制が根づいていたのです。

福島県域で流行した複式炉

複式炉(ふくしきろ)とは、縄文時代中期の後葉から福島県域で流行した炉の形式です。竪穴式住居の中央に土器を埋め(土器埋設部)、石組み部(石敷)、前庭(ぜんてい)(土間状の堀り込み)からなり、大きいものでは長さが3メートルにも達し、住居面積の約6分の1を占めていました(例:月崎遺跡)。煮沸や焼成、蒸し焼きなど、目的の異なる加熱調理を同時に行うことができたものと推測されています。
その典型である上原型複式炉は安達太良(あだたら)山麓の周縁に多く、この一帯で流行していたようです。

複式炉をともなうおもな遺跡の分布

複式炉をともなうおもな遺跡の分布
『図説 福島県の歴史』(河出書房新社、1989年)を元に作成

遺跡の出土品から推定されるこの頃の主食はクルミやドングリ、トチなど。

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Part.1:地図で読み解く福島の大地

・阿武隈山地や奥羽山脈が境目!浜通り・中通り・会津の3地域
・いわきで発掘された首長竜化石フタバスズキリュウとは?
・福島市がぽっかり入る福島盆地はどうやってできた?
・福島発展の礎を築いた常磐炭田
・磐梯山の大噴火と裏磐梯・五色沼湖群の形成
・猪苗代湖畔からウニ化石!?劇的な会津の地形の成り立ち
・石川町が日本三大産地のひとつ ペグマタイトとはどんな岩石?
・大改修から100年が経過 暴れ川・阿武隈川の今と昔

などなど福島のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2:福島を駆け抜ける鉄道網

・東北本線旧線の黒磯~白河間には明治時代の面影が残されている!?
・日本最大のC62形SL牽引「ゆうづる」が走った常磐線
・かつては東京と新潟を結ぶ架け橋、会津地方の大幹線・磐越西線
・東京・浅草から特急が直通しトロッコ列車も走る会津鉄道
・かつて硫黄輸送で活躍した猪苗代町の沼尻鉄道とは?
・只見川に架かる数々の鉄橋ほか 魅力いっぱい絶景鉄道・只見線

などなど福島ならではの鉄道事情を網羅。

Part.3:福島で動いた歴史の瞬間

・人間の歯や骨をペンダントに!?原始福島の不思議な弔い
・東北地方最古の前方後円墳!会津大塚山古墳が示す会津の力
・浜通りに古代製鉄遺跡を発見! なぜ大規模な製鉄が行われた?
・中世史総論(関東武士が進出し国盗り合戦!白河・伊達・蘆名・岩城氏の攻防)
・南北朝時代に南朝が拠点とした幻の寺院城郭・霊山寺とは?
・伊達氏のルーツは福島にあり!奥州制覇を果たす道のり
・相馬地方を約700年統治した古豪・相馬氏とはどんな一族?
・奥州きっての城下町・若松はどのようにして生まれた?
・会津若松城で籠城戦を続けた会津藩が開城に至るまで

などなど、激動の福島の歴史に興味を惹きつける。

Part.4:福島で育まれた産業や文化

・最澄と大論戦した僧・徳一が開祖!慧日寺から始まった会津の仏教文化
・猪苗代湖の水を郡山へ! 幹線延長52㎞の安積疏水事業
・県境には二ツ小屋隧道が残る 福島と米沢を結んだ万世大路
・東北唯一の中央競馬場が福島市につくられたわけ
・幕府直営の半田銀山 明治時代は五代友厚が経営
・感染症と闘い続けた細菌学者・野口英世の生涯
・日本酒の金賞受賞数日本一!福島の地酒はなぜすごい?

などなど福島の発展の歩みをたどる。

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