トップ >  北海道・東北 > 福島県 > 

会津大塚山古墳から見つかった特徴的な埋葬品

会津大塚山古墳の埋葬施設は2本の粘土槨(かく)(木棺を粘土で覆ったもの)で、合計380点もの副葬品が発見されています。

三角縁神獣鏡(さんかくえんしんじゅうきょう)、銅鏃(どうぞく)(青銅製の鏃)、三葉環頭大刀(さんようかんとうのたち)など、他の古墳からはあまり見つかっていない品々が出土しているところも、会津大塚山古墳の特徴といえるでしょう。

会津大塚山古墳で発見された貴重な考古資料「三角縁神獣鏡」

なかでも注目を集めたのが、三角縁神獣鏡でした。畿内(きない)のヤマト王権は、服属した豪族に対して前方後円墳の築造を許可するとともに鏡を贈っていました。会津大塚山古墳の三角縁神獣鏡もヤマト王権から贈られたもので、これはヤマトが自作した“国産”の鏡でした。

会津大塚山古墳から出土した国産の鏡が持つ意味とは

もともと鏡は、邪馬台国の時代(2~3世紀)に中国からもたらされました。中国の三国時代には、邪馬台国は魏に使節を派遣して「親魏倭王(しんぎわおう)」の金印と銅鏡100枚を贈られており、魏の後継王朝である西晋(せいしん)とも朝貢貿易をしていましたが、西晋の滅亡により交流が途絶えてしまいました。やむなくヤマト王権は、鏡を自作するようになったわけです。

なお、会津大塚山古墳の三角縁神獣鏡は、岡山県備前市の鶴山丸山古墳から出土したものと同じ鋳型でつくられたことが判明しています。

会津大塚山古墳の副葬品が裏付けるヤマト王権の勢力図

ヤマト王権が東北に勢力を伸ばしてきたのは阿倍比羅夫(あべのひらふ)の遠征の頃(7世紀)とするのがかつての通説でした。ところが、会津大塚山古墳が調査されたことでこの通説は覆され、ヤマト王権の東北伸長は4世紀末と考えられるようになりました。会津大塚山古墳の副葬品は、それほど歴史的に価値のあるものだったのです。

古墳時代前期には会津地方に古墳が多かったのですが、古墳時代後期になると、主要な古墳は中通り・浜通りで築造されるようになりました。そのことから、古代の福島県域における中心地が、会津から中通り・浜通りへと推移し、後者がよりヤマト王権と緊密になっていったことがわかります。

おもな古墳の分布

おもな古墳の分布
『福島県の歴史』(山川出版社、2015年)を元に作成

福島県域の古い時期の古墳は会津に多く、中通り・浜通り地方には少なくなっています。ところが、古墳時代後期に入るとそれが逆転し、中通り・浜通り地方に有力な古墳が増え、会津では減少します。大和朝廷との関係の変化がうかがえます。

『福島のトリセツ』好評発売中!

日本の各県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。福島の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載!

Part.1:地図で読み解く福島の大地

・阿武隈山地や奥羽山脈が境目!浜通り・中通り・会津の3地域
・いわきで発掘された首長竜化石フタバスズキリュウとは?
・福島市がぽっかり入る福島盆地はどうやってできた?
・福島発展の礎を築いた常磐炭田
・磐梯山の大噴火と裏磐梯・五色沼湖群の形成
・猪苗代湖畔からウニ化石!?劇的な会津の地形の成り立ち
・石川町が日本三大産地のひとつ ペグマタイトとはどんな岩石?
・大改修から100年が経過 暴れ川・阿武隈川の今と昔

などなど福島のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2:福島を駆け抜ける鉄道網

・東北本線旧線の黒磯~白河間には明治時代の面影が残されている!?
・日本最大のC62形SL牽引「ゆうづる」が走った常磐線
・かつては東京と新潟を結ぶ架け橋、会津地方の大幹線・磐越西線
・東京・浅草から特急が直通しトロッコ列車も走る会津鉄道
・かつて硫黄輸送で活躍した猪苗代町の沼尻鉄道とは?
・只見川に架かる数々の鉄橋ほか 魅力いっぱい絶景鉄道・只見線

などなど福島ならではの鉄道事情を網羅。

Part.3:福島で動いた歴史の瞬間

・人間の歯や骨をペンダントに!?原始福島の不思議な弔い
・東北地方最古の前方後円墳!会津大塚山古墳が示す会津の力
・浜通りに古代製鉄遺跡を発見! なぜ大規模な製鉄が行われた?
・中世史総論(関東武士が進出し国盗り合戦!白河・伊達・蘆名・岩城氏の攻防)
・南北朝時代に南朝が拠点とした幻の寺院城郭・霊山寺とは?
・伊達氏のルーツは福島にあり!奥州制覇を果たす道のり
・相馬地方を約700年統治した古豪・相馬氏とはどんな一族?
・奥州きっての城下町・若松はどのようにして生まれた?
・会津若松城で籠城戦を続けた会津藩が開城に至るまで

などなど、激動の福島の歴史に興味を惹きつける。

Part.4:福島で育まれた産業や文化

・最澄と大論戦した僧・徳一が開祖!慧日寺から始まった会津の仏教文化
・猪苗代湖の水を郡山へ! 幹線延長52㎞の安積疏水事業
・県境には二ツ小屋隧道が残る 福島と米沢を結んだ万世大路
・東北唯一の中央競馬場が福島市につくられたわけ
・幕府直営の半田銀山 明治時代は五代友厚が経営
・感染症と闘い続けた細菌学者・野口英世の生涯
・日本酒の金賞受賞数日本一!福島の地酒はなぜすごい?

などなど福島の発展の歩みをたどる。

ほか、巻頭「空撮グラビア」、テーマ別地図、コラム「データでわかる全59市町村」(人口、所得、農業・漁業)、吉田初三郎が描いた福島県の鳥瞰図 など

『福島のトリセツ』を購入するならこちら

リンク先での売上の一部が当サイトに還元される場合があります。
1 2

記事をシェア

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!

エリア

トップ > カルチャー >  北海道・東北 > 福島県 >

この記事に関連するタグ