日中線は朝、夕、夜のわずか3往復のみ!「日中は走りま線」と揶揄された
日中線の線名の由来は、熱塩の北方、約4㎞にある日中温泉にちなんだものですが、日中への延伸がされないどころか、熱塩温泉の湯治客にもほとんど利用されなかったといいます。乗客は開業以来少なく、1961(昭和36)年10月のダイヤ改正から列車は朝、夕、夜のわずか3往復のみで、このダイヤが廃止まで続きました。
昼間は列車が走らないことから「日中は走りま線」と揶揄されたほどで、乗客の大半は、通学利用の高校生でした。晩年は無人駅ばかりとなり、最終列車では車掌が各駅の電気を消して回るというのんびりとした光景も見られました。
日中線も賑わった昭和40年代のSLブーム
熱塩には蒸気機関車の向きを変える転車台もありましたが、後年はあまり利用されることはなく、タンク機関車C11・12形によるバック運転が大半でした。沿線の鉱山で産出する銀や銅、農産物などを運ぶ貨物列車も、貨車と客車を連結させた混合列車で運転されていましたが、1972(昭和47)年に廃止されています。
とはいえ、昭和40年代は、折からのSLブームもあって多くのファンで賑わいました。とりわけC11形は会津線と並んで会津地方を代表する蒸気機関車として注目されました。晩年はDE10形ディーゼル機関車に代わりましたが、旧型の客車が走る風情あるローカル線に変わりありませんでした。
日中線廃止後の姿と「日中線記念館」
日中線廃止後、大半の線路跡は道路となりました。旧熱塩駅は荒廃していましたが「日中線記念館」として整備され、モダンな洋風駅舎も保存。内部には資料も展示してあり、木製の改札口、ホーム、駅名標なども往時のままに公開されています。
「日中線記念館」では客車が外観も昔のままに展示されている
広い構内の片隅にはキ100形ラッセル車、オハフ61形客車が保存され、屋根も設けられています。オハフ61形は、晩年の日中線の列車に連結していた客車で、戦後製ですが、その素性は戦前の木造客車の車体を鋼体化したもの。車内はニス塗りで、座席の背ずりにはクッションもなく簡素。台車も明治時代の木造客車からの流用でした。釣り合い梁式と呼ばれるアメリカで普及したスタンダードな台車は、上下方向の揺れが大きく、お世辞にも乗り心地がよいとはいえない古めかしいものです。
そんな客車が、本来の「ぶどう色」に塗られて外観も昔のままに展示されています。日中線時代の走りをしばし想像するのもいいものです。
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・南北朝時代に南朝が拠点とした幻の寺院城郭・霊山寺とは?
・伊達氏のルーツは福島にあり!奥州制覇を果たす道のり
・相馬地方を約700年統治した古豪・相馬氏とはどんな一族?
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Part.4:福島で育まれた産業や文化
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・県境には二ツ小屋隧道が残る 福島と米沢を結んだ万世大路
・東北唯一の中央競馬場が福島市につくられたわけ
・幕府直営の半田銀山 明治時代は五代友厚が経営
・感染症と闘い続けた細菌学者・野口英世の生涯
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