鹿島臨海工業地帯の計画と開発
1959(昭和34)年、「後進県からの脱却」を政策目標に掲げた岩上二郎(いわかみにろう)が茨城県知事に当選。工業開発に向けて条例や組織を整え、翌年、鹿島開発の試案を発表します。工業を興し、農業を育て、所得増大を図る「農工両全」を理念に開発へ乗り出します。
県は1961(昭和36)年、現在の鹿嶋市と神栖市の約2万ヘクタールを開発地域とするマスタープランを策定。10万トン級の船舶が入港できる港湾を建設し、コンビナートを配置する工業地域のほか、インフラや住宅地も造成する壮大な計画でした。
鹿島臨海工業地帯の開発前準備①:国からの支援獲得
1963(昭和38)年、国が前年に策定した「全国総合開発計画」に基づく拠点地域の指定を受けようと、全国44地域が陳情合戦を展開。茨城県も国や財界に積極的にはたらきかけ、鹿島は国の手厚い支援措置が受けられる工業整備特別地域に指定されました。
鹿島臨海工業地帯の開発前準備②:土地の買収はポジティブアピールで
開発の成否を握る土地の買収は、対象地の地主から全所有地を提供してもらい、4割は県が買い上げ、6割は代替地と交換する独自の「6・4方式(鹿島方式)」を採用。用地取得が停滞すると「貧困からの解放」をアピールし、地元の中高生から標語を募集するなど、開発の機運を高めました。
鹿島臨海工業地帯の開発の中核は港建設
開発の中核は砂丘をY字に掘り込む画期的な港建設。大量の砂や波と格闘しながら、新しいシステムや技術を開発し、起工から6年後の1969(昭和44)年に開港しました。現在は岸壁の総延長17kmと国内最大規模で、国際物流拠点としても機能。2019(令和元)年の取扱貨物量は9500万トンを超えました。
鹿島臨海工業地帯と鹿島の発展
交通の不便さから「陸の孤島」と呼ばれた鹿島では、港工事と並行して道路整備も進行。1970(昭和45)年には国鉄(現・JR)鹿島線や鹿島臨海鉄道など鉄路も開通し、1973(昭和48)年には息栖(いきす)大橋が常陸利根川に架設されるなど、利便性が格段に向上しました。
1969(昭和44)年の住友金属(現・日本製鉄)の操業を皮切りに、各企業が次々と進出。県の産業構造は激変し、現在13兆円を超える県内総生産のうち約3割が製造業によるものです。2017(平成29)年に12兆円超の県の製造品出荷額等のうち神栖市が約1.5兆円で1位、6位の鹿嶋市と合わせて約17%を占め、県の経済発展にも寄与しています。
鹿島は農業人口も生産額も激減し「農工両全」は遠のきますが、鹿島臨海工業地帯は約3000ヘクタールの用地に約160企業、約2万人が働く重要な産業拠点となりました。近年は工場萌えの絶景としても注目されています。
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・東の名峰・筑波山はもともと地下の巨大マグマの塊だった!?
・国内で2番目に大きい湖、霞ヶ浦はどのようにしてできた?
・壁面の岩に海底火山の証!名瀑・袋田の滝が誕生するまで
・平磯海岸の恐竜時代の地層から、アンモナイトや国内初のサメ化石!
・県南部で続々と化石発見! 茨城に生きたナウマンゾウ
・南北に約95m広がる大炭田、常磐炭田を生んだ地層と産業史
…などなど茨城のダイナミックな自然のポイントを解説
【見どころ】Part.2 茨城を駆け抜ける鉄道網・交通網
・特急「はつかり」「ひたち」が走る大幹線・常磐線
・第二常磐線構想で生まれたつくばエクスプレス
・奥久慈清流ラインの異名をもつ魅力あふれる水郡線
・めずらしい非電化通勤路線、関東鉄道常総線・竜ヶ崎線
・鹿島参宮鉄道に始まった、鹿島鉄道鉾田線の在りし日
・水戸~石岡を結ぶ計画も……幻の水戸電気鉄道とは?
・阿見線に加え谷田部線? 常南電気鉄道による幻の計画
…などなど茨城ならではの鉄道事情を網羅
【見どころ】Part.3 茨城で動いた歴史の瞬間
・水に恵まれた茨城に人が定住 権力が生まれる
・地方王権の誕生を示す県内最大の古墳・舟塚山古墳
・石岡に置かれた常陸国府とそれを取り巻く交通路の痕跡
・常陸で成長した武家の二大勢力 常陸平氏と佐竹氏
・源頼朝が佐竹氏・平氏討伐! 鎌倉御家人たちが入国
・長い不遇の時代を経て佐竹氏が常陸の覇者に返り咲く
・水戸で育った尊王攘夷思想 桜田門外の変や天狗党の乱に発展
…などなど、激動の茨城の歴史に興味を惹きつける
【見どころ】Part.4 茨城で育まれた産業や文化
・水戸藩に飲料水を運んだ地下水路・笠原水道
・東洋一の航空基地 霞ヶ浦海軍航空隊が置かれた街・阿見町
・2000万人超が来場した科学博、つくば万博の熱狂と跡地の変身
・鉱山開発と日立製作所の歴史
・原子力とともに歩んだ東海村の半世紀
・陸の孤島だった鹿島が臨海工業地帯になるまで
・野菜産出額日本一の街が茨城に!? 鉾田市で農業が盛んな理由とは
…などなど茨城の発展の歩みをたどる。
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