目次
徳川斉昭は幕府側でありながら尊皇攘夷の姿勢を強めていった
水戸学の中核をなすものとして、尊皇攘夷(そんのうじょうい)思想があります。弘道館の基本方針を述べた書『弘道館記』(藤田東湖が起草)には、すでに「尊皇攘夷」の言葉が用いられており、「朝廷と幕府が対立したら、たとえ幕府に背くことになっても朝廷に弓矢を向けてはならない」というのが徳川斉昭の主張でした。
このため水戸藩は、徳川御三家という立場にありながら、尊皇攘夷の姿勢を強めていきます。そして尊皇攘夷の思想は、異国船の来航や幕藩体制の動揺といった内憂外患の情勢において、実践的な政治理論として水戸藩外にも広く伝わり、支持を広げていくのでした。
徳川斉昭は「安政の大獄」によって政治生命を絶たれる
幕政に参画するようになった徳川斉昭は、大老の井伊直弼と対立します。将軍継嗣問題では斉昭ら一橋派は慶喜(斉昭の七男)を推し、井伊直弼ら南紀派は徳川慶福(よしとみ)(のちの家茂(いえもち))を推しました。
また、一橋派が攘夷派であるのに対し南紀派は開国派で、直弼は孝明天皇の勅許(ちょっきょ)を待つことなく独断で安政五カ国条約(日米、日蘭、日露、日英、日仏)を締結してしまいます。
こうした情勢を鑑み、徳川斉昭は朝廷に接近。すると、孝明天皇から水戸藩に「戊午(ぼご)の密勅」(幕政改革の勅書)が下されます。井伊直弼は前例のない朝廷による政治介入に警戒心を強め、密勅に関与した公家や藩士を弾圧。8名を死刑にし、100名以上が投獄されます。この「安政の大獄」によって、徳川斉昭は永蟄居を命じられ、政治生命を絶たれました。
徳川斉昭を支えた藩士が起こした「桜田門外の変」と「天狗党の乱」
不服に思った水戸藩士ら17名は、水戸藩を脱藩して浪人となり、1860(安政7)年3月3日に江戸城桜田門外(東京都千代田区霞が関)で井伊直弼を暗殺します。これが有名な「桜田門外の変」です。
その後まもなく徳川斉昭が病死すると、斉昭を支えた尊攘派「天狗党」が活動を激化させていき、1864(元治元)年3月、藤田小四郎(東湖の四男)は武田耕雲斎(こううんさい)を首領に迎え入れて筑波山で挙兵。軍用金調達の名目の下、商家から金品を強奪し、大子村(久慈郡大子町)から上洛を目指して進軍を開始します。
しかし、天狗党が頼みの綱とした一橋慶喜は、反対に天狗党討伐のための軍を出します。このため天狗党は、越前国新保(しんぼ)宿(福井県敦賀市)で幕府軍に降伏するのでした。この一連の天狗党の乱で、水戸藩は多くの人材を失ってしまったのです。
『茨城のトリセツ』好評発売中!
地形、交通、歴史、産業…あらゆる角度から茨城県を分析!
日本の各県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。茨城の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載!
【見どころ】 Part.1 地図で読み解く茨城の大地
・地形・地質総論 茨城県域の地質って?
・東の名峰・筑波山はもともと地下の巨大マグマの塊だった!?
・国内で2番目に大きい湖、霞ヶ浦はどのようにしてできた?
・壁面の岩に海底火山の証!名瀑・袋田の滝が誕生するまで
・平磯海岸の恐竜時代の地層から、アンモナイトや国内初のサメ化石!
・県南部で続々と化石発見! 茨城に生きたナウマンゾウ
・南北に約95m広がる大炭田、常磐炭田を生んだ地層と産業史
…などなど茨城のダイナミックな自然のポイントを解説
【見どころ】Part.2 茨城を駆け抜ける鉄道網・交通網
・特急「はつかり」「ひたち」が走る大幹線・常磐線
・第二常磐線構想で生まれたつくばエクスプレス
・奥久慈清流ラインの異名をもつ魅力あふれる水郡線
・めずらしい非電化通勤路線、関東鉄道常総線・竜ヶ崎線
・鹿島参宮鉄道に始まった、鹿島鉄道鉾田線の在りし日
・水戸~石岡を結ぶ計画も……幻の水戸電気鉄道とは?
・阿見線に加え谷田部線? 常南電気鉄道による幻の計画
…などなど茨城ならではの鉄道事情を網羅
【見どころ】Part.3 茨城で動いた歴史の瞬間
・水に恵まれた茨城に人が定住 権力が生まれる
・地方王権の誕生を示す県内最大の古墳・舟塚山古墳
・石岡に置かれた常陸国府とそれを取り巻く交通路の痕跡
・常陸で成長した武家の二大勢力 常陸平氏と佐竹氏
・源頼朝が佐竹氏・平氏討伐! 鎌倉御家人たちが入国
・長い不遇の時代を経て佐竹氏が常陸の覇者に返り咲く
・水戸で育った尊王攘夷思想 桜田門外の変や天狗党の乱に発展
…などなど、激動の茨城の歴史に興味を惹きつける
【見どころ】Part.4 茨城で育まれた産業や文化
・水戸藩に飲料水を運んだ地下水路・笠原水道
・東洋一の航空基地 霞ヶ浦海軍航空隊が置かれた街・阿見町
・2000万人超が来場した科学博、つくば万博の熱狂と跡地の変身
・鉱山開発と日立製作所の歴史
・原子力とともに歩んだ東海村の半世紀
・陸の孤島だった鹿島が臨海工業地帯になるまで
・野菜産出額日本一の街が茨城に!? 鉾田市で農業が盛んな理由とは
…などなど茨城の発展の歩みをたどる。
『茨城のトリセツ』を購入するならこちら
※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!